■ Mozartモーツァルト「 きらきら星変奏曲 」の、自筆譜実物を見る■
2011.11.21 中村洋子
★明後日23日開催の、横浜みなとみらいでの
「 第 11回 インヴェンションアナリーゼ講座 」 の資料作りも、一段落。
本日は、「 第一生命 110周年記念国際モーツァルテウム財団コレクション 」 の
「 モーツァルトの顔 」 という展覧会に、行ってきました。
Wolfgang Amadeus Mozart モーツァルト(1756~1791) 。
★この展覧会で、私が見たかったものは・・・
・Zwölf Variationen über "Ah, vous dirai-je, Maman" KV265
( 12の変奏曲 ああ、お母さん、あなたに申し上げましょう )
通称 「 きらきら星変奏曲 」 の 、最初のページの自筆譜。
・Klavier Sonate KV331 の第3楽章 、
通称 「 トルコ行進曲 」 の最後のページの自筆譜
・ランゲの 「 モーツァルトの肖像画 」 。
★ランゲは、モーツァルトの妻の姉アロイジアの夫で、
この油彩画は、1789年、つまり、モーツァルトの死去する2年前に、
描かれています。
★これらは、日本で初公開でした。
あまり、期待せずにでかけましたが、
ランゲの肖像画は、大変に美しく、
それを見ますと、モーツァルトが頭の中で、
音楽を組み立て、構想している瞬間の、
顔の表情が、手に取るように、読みとれるような気がしました。
★ 「 きらきら星変奏曲 」 の自筆譜を詳細に見て、
分かりましたのは、次のようなことです。
通常の現行譜では、おおむね 5段目から現れる 「 37小節目 」 が、
実は、3段目の冒頭から始められていた・・・、ということです。
★それにより、
37小節目の2拍目 e3
38小節目の2拍目 d3
39小節目の2拍目 c3 の
「 e - d - c 、ミ - レ - ド 」 が、浮かび上がるように、
目に、飛び込んできます。
これは、テーマ ( ド ソ ソ ラ ラ ソ ファ ファ ミ ミ レ レ ド ) の、
最後の重要な、 ≪ ミ レ ド ≫ です。
「 ああ!、 バッハと同じだ 」 と、感動しました。
自筆譜の訴えかけるメッセージは、強烈です。
Mozart が Bach を勉強していた証拠が、
こういうところで、分かるのです。
★会場では、モーツァルトの生涯を、20分ほどにまとめた、
ビジュアル&サウンド アーキテクチャー「 モーツァルトの素顔 」
という、ビデオを放映していました。
★まるで、宝塚の男役スターのようなナレーションが、
「 Wolfgang Amadeus Mozart モーツァルト 」 本人かのように、
一人称で、生涯を語っていました。
またまた、 「 サリエリ陰謀説 」 を、訳ありげに仄めかしていました。
エンターテインメント映画に、いつまでも、
振り回されるのは、どんなものでしょう?
★Antonio Salieri アントニオ・サリエリ (1750~1825) は、
実は、天才 Franz Schubert(1797~1828)
シューベルトを、陰になり、日向になり、育て上げた人です。
シューベルトが今日あるのも、このサリエリのお陰である、ともいえます。
才能に満ち満ち、しかし、それゆえ偏狭と取られがちの天才を、
≪ 真の天才である ≫ と見抜き、それゆえ暖かく庇護し、
慈しみ、育てた感服すべき人です。
まことに、度量の広い人物です。
このような敬服すべき偉大な人が、 “ 嫉妬 ” のあまり、
天才 Amadeus を、毒殺するのでしょうか。
★サリエリの音楽をまず、聴いてください。
通俗娯楽映画が吹聴する、胡散臭い、
俗説に惑わされることなかれ!!!
そんな俗説は、一笑に付されることでしょう。
まず、原典に当たってください。
★映画では、モーツァルトの妻に宛てた手紙に基づき、
さも、モーツァルトが下品な人物であるかのように、描いていますが、
皆さんが、親しい友人や恋人に書いた “ 携帯メール ” が、
そのまま暴露され、本として刊行されたと想像してみてください。
赤面しない人は、いないでしょうね。
★その轍を、踏まなかったのが、
ブラームス Johannes Brahms (1833~1897)です。
晩年には、クララ・シューマンと交わした手紙も、数多く、
廃棄しています。
モーツァルトのように、誤解されるのが、たまらなかったのでしょう。
※copyright © Yoko Nakamura
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲