2007/3/30(金)
★1843年6月15日、ノルウェーのベルゲンに生まれたグリーグは、
1907年9月4日、ベルゲンで64歳の生涯を閉じます。
ことしは、ちょうど没後100年です。
ブラームスが、1833年生まれ1897年没ですから、ちょうど10年違いです。
★グリーグは、シューマンゆかりのライプチッヒ音楽院に入学しています。
ブラームスと1855年に、ライプチッヒで初めて会い、1888年と1896年にも再開しています。
この96年は、病気のブラームスへのお見舞いでもありました。
★グリーグのピアノ独奏曲としては「叙情組曲」が有名ですが、
皆様にお薦めしたいのは、「組曲 ホルベアの時代より」
Op40 Fra Holbergs Tid/Suite i gammel Stil.です。
楽譜は、ヘンレ版の Aus Holbergs Zeit Suite im Alten Stil がいいと思います。
この曲は、1884年に劇作家ホルベア(1684~1754)の生誕200年記念祭のためにつくられました。
★ホルベア男爵は、ベルゲン生まれ、主にコペンハーゲンで活躍し、
「デンマーク文学の父」あるいは「北のモリエール」として尊敬されました。
祝賀用のカンタータ(男性合唱曲)とピアノ組曲の2曲が依頼されました。
激しい雪が降るしきる中、広場でホルベアの銅像が除幕され、
グリーグの指揮で、カンタータが初演されました。
グリーグは、レインコートに傘まで差し、合唱団員の口には、雪や霰が舞い込んだそうです。
しかし、熱演の甲斐あり、大成功だったそうです。
その後、室内で「ホルベアの時代から」が、グリーグのピアノで初演されました。
★「ホルベアの時代」は、さらに弦楽合奏曲にも編曲されました。
いまでは、弦楽合奏が演奏される機会が多いのですが、
ピアノ独奏用も演奏しやすく、親しみやすい曲ですので、
コンサートや発表会、レッスンに是非、お薦めしたいと思います。
★しつこいようですが、発表会用に、甘ったるいムードミュージックや、
流行している通俗曲、映画音楽を、生徒さんに、何ヶ月も練習させるより、
大作曲家の書いた親しみやすい曲に取り組みことが、
生徒さんにとって、どれだけ栄養になることでしょうか。
もし、生徒さんが小さいお子さんでしたら、
その生徒さんの音楽人生を、一生左右することになるかもしれません。
名曲を聴き、弾くことは、なにもプロになるためではなく、
いい聴衆を育てる意味でもとても大切です。
★ホルベアが200年前の人であったため、この曲のスタイルもバロック組曲の様式をとっています。
ラベルが、組曲「クープランの墓」の各曲に、バロック時代の踊りの題名をつけたのと同じです。
この曲は、「前奏曲」「サラバンド」「ガヴォット」「エアー」「リゴードン」の全5曲です。
どれも素敵ですが、第4曲の「エアー」は、特に弦楽合奏では有名です。
★また、ピアノと弦楽合奏の編曲を、見比べる楽しみもあります。
特にこの「エアー」では、何ヶ所か違いがあり、ピアノを弾くうえで、とても参考のなります。
2小節目のメロディーの「レ ド シ ド」の刺繍音「シ」が、
ピアノ版では「シ」♭であるのに対し、弦楽版では、「シ」ナチュラルです。
ピアノで、ナチュラルにしますと、どこか鋭すぎ、
グリーグの意図した「アンダンテ レリジオーソ」、
さらに「カンタービレ」という曲想には、そぐわないかも知れません。
「レリジオーソ」即ち、宗教的な感じは、「シ」♭のほうがいいと思います。
★弦楽版は、最初の「レ」音にアクセントがつけてあり、
その後に、ディミヌエンドを付し、「シ」ナチュラルの鋭さを、ぼかしています。
ピアノと弦楽の特質を、よくわきまえた書法でしょう。
ピアノ版も、41小節目の上記メロディー再現のところでは、
「シ」ナチュラルとし、感情の高まりを、表現しています。
スコアを見ますと、この素晴らしい旋律を、チェロで朗々と歌わせています。
ピアノを弾くうえで、チェロの音色を思い浮かべるといいですね。
★さらに、21小節目から、ピアノ版では、メロディーが7小節間ずっと、右手上声で奏されますが、
弦楽版では、チェロのソロと第一ヴァイオリンが、交互に掛け合いをしています。
ここも、ピアノを弾く際、頭にこのイメージを描きますと、色彩豊かな演奏になる、と思います。
古風なフレアドレスの裾を、典雅に揺らして踊るような、どこかメランコリックな曲です。
★お薦めしたいCDは、NAXOS「グリーグピアノ曲全集 第4集」、
アイナル・ステーン=ノックレベルグのピアノ演奏です。
このCDは、以前たまたま、手に入れましたが、ノックレベルグの演奏が素晴らしかったので、
グリーグのこの全集を愛聴しています。
先ごろ、ノックレベルグが、グリーグの全ピアノ作品について書いた本が
日本でも翻訳されました。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲
★1843年6月15日、ノルウェーのベルゲンに生まれたグリーグは、
1907年9月4日、ベルゲンで64歳の生涯を閉じます。
ことしは、ちょうど没後100年です。
ブラームスが、1833年生まれ1897年没ですから、ちょうど10年違いです。
★グリーグは、シューマンゆかりのライプチッヒ音楽院に入学しています。
ブラームスと1855年に、ライプチッヒで初めて会い、1888年と1896年にも再開しています。
この96年は、病気のブラームスへのお見舞いでもありました。
★グリーグのピアノ独奏曲としては「叙情組曲」が有名ですが、
皆様にお薦めしたいのは、「組曲 ホルベアの時代より」
Op40 Fra Holbergs Tid/Suite i gammel Stil.です。
楽譜は、ヘンレ版の Aus Holbergs Zeit Suite im Alten Stil がいいと思います。
この曲は、1884年に劇作家ホルベア(1684~1754)の生誕200年記念祭のためにつくられました。
★ホルベア男爵は、ベルゲン生まれ、主にコペンハーゲンで活躍し、
「デンマーク文学の父」あるいは「北のモリエール」として尊敬されました。
祝賀用のカンタータ(男性合唱曲)とピアノ組曲の2曲が依頼されました。
激しい雪が降るしきる中、広場でホルベアの銅像が除幕され、
グリーグの指揮で、カンタータが初演されました。
グリーグは、レインコートに傘まで差し、合唱団員の口には、雪や霰が舞い込んだそうです。
しかし、熱演の甲斐あり、大成功だったそうです。
その後、室内で「ホルベアの時代から」が、グリーグのピアノで初演されました。
★「ホルベアの時代」は、さらに弦楽合奏曲にも編曲されました。
いまでは、弦楽合奏が演奏される機会が多いのですが、
ピアノ独奏用も演奏しやすく、親しみやすい曲ですので、
コンサートや発表会、レッスンに是非、お薦めしたいと思います。
★しつこいようですが、発表会用に、甘ったるいムードミュージックや、
流行している通俗曲、映画音楽を、生徒さんに、何ヶ月も練習させるより、
大作曲家の書いた親しみやすい曲に取り組みことが、
生徒さんにとって、どれだけ栄養になることでしょうか。
もし、生徒さんが小さいお子さんでしたら、
その生徒さんの音楽人生を、一生左右することになるかもしれません。
名曲を聴き、弾くことは、なにもプロになるためではなく、
いい聴衆を育てる意味でもとても大切です。
★ホルベアが200年前の人であったため、この曲のスタイルもバロック組曲の様式をとっています。
ラベルが、組曲「クープランの墓」の各曲に、バロック時代の踊りの題名をつけたのと同じです。
この曲は、「前奏曲」「サラバンド」「ガヴォット」「エアー」「リゴードン」の全5曲です。
どれも素敵ですが、第4曲の「エアー」は、特に弦楽合奏では有名です。
★また、ピアノと弦楽合奏の編曲を、見比べる楽しみもあります。
特にこの「エアー」では、何ヶ所か違いがあり、ピアノを弾くうえで、とても参考のなります。
2小節目のメロディーの「レ ド シ ド」の刺繍音「シ」が、
ピアノ版では「シ」♭であるのに対し、弦楽版では、「シ」ナチュラルです。
ピアノで、ナチュラルにしますと、どこか鋭すぎ、
グリーグの意図した「アンダンテ レリジオーソ」、
さらに「カンタービレ」という曲想には、そぐわないかも知れません。
「レリジオーソ」即ち、宗教的な感じは、「シ」♭のほうがいいと思います。
★弦楽版は、最初の「レ」音にアクセントがつけてあり、
その後に、ディミヌエンドを付し、「シ」ナチュラルの鋭さを、ぼかしています。
ピアノと弦楽の特質を、よくわきまえた書法でしょう。
ピアノ版も、41小節目の上記メロディー再現のところでは、
「シ」ナチュラルとし、感情の高まりを、表現しています。
スコアを見ますと、この素晴らしい旋律を、チェロで朗々と歌わせています。
ピアノを弾くうえで、チェロの音色を思い浮かべるといいですね。
★さらに、21小節目から、ピアノ版では、メロディーが7小節間ずっと、右手上声で奏されますが、
弦楽版では、チェロのソロと第一ヴァイオリンが、交互に掛け合いをしています。
ここも、ピアノを弾く際、頭にこのイメージを描きますと、色彩豊かな演奏になる、と思います。
古風なフレアドレスの裾を、典雅に揺らして踊るような、どこかメランコリックな曲です。
★お薦めしたいCDは、NAXOS「グリーグピアノ曲全集 第4集」、
アイナル・ステーン=ノックレベルグのピアノ演奏です。
このCDは、以前たまたま、手に入れましたが、ノックレベルグの演奏が素晴らしかったので、
グリーグのこの全集を愛聴しています。
先ごろ、ノックレベルグが、グリーグの全ピアノ作品について書いた本が
日本でも翻訳されました。
▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲