音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■イタリア協奏曲 アナリーゼ講座 (全 2回) のお知らせ■

2014-10-29 23:21:34 | ■私のアナリーゼ講座■

■イタリア協奏曲 アナリーゼ講座 (全 2回) のお知らせ■
  ~第 1楽章の正体は、華麗で豪奢な管弦楽協奏曲~

              2014.10.29 中村洋子

 

 


★イタリア協奏曲 全 3楽章を 、2回にわたり、
初版譜を基にして、アナリーゼいたします。


 Bach  ( 1685~1750 )の作品で、生前出版された曲は、
あまり多くありませんが、その一つが 、
Italienisches Konzert ( Concerto nach Italienischen Gusto
イタリア趣味に基づく
コンチェルト ) イタリア協奏曲 」 です。

★「 Zweiten Teil der Klavierübung クラヴィア練習曲第 2巻 」 
全 27 pages の、前半 ( 1 ~ 13 page ) が、
「イタリア協奏曲」です。

後半は、「 Overture nach Französischer Art フランス風序曲 」
です。

★ Bach の自筆譜は、失われていますが、Bach は生前、
この出版譜を手元に置き、訂正も、加えていますので、
この初版譜は、 ≪ Bach公認 ≫ と見ていいでしょう。

★「 平均律クラヴィーア曲集第 1巻 」 ( 1722 )、
「 Inventionen und Sinfonien インヴェンションとシンフォニア 」
  ( 1723 ) の、上声は、ともに 「 ソプラノ記号 」 で、
記譜されています。

しかし、このイタリア協奏曲の上声は、私たちに馴染み深い
≪ ト音記号 ≫ で一貫して、 記されています。
下声は、≪  アルト記号  ≫ と ≪ バス記号 ≫ が、交互に現れます。
その意味を読み解きますと、イタリア協奏曲の骨格が、
明確に、浮かび上がってきます。

 

 

★一見、明快単純に見えます第 1楽章の和声は、実は大変に複雑で、
平均律 1巻ではあまり見られない、Bachの典型的な後期の和声です。
この和声を、正確に理解いたしませんと、 tutti( 総奏 )と 、
solo が交互にまじわる、単なる華やかな曲として
演奏されてしまいます。

事実、そのような浅薄な演奏も、多く聴かれます。

Bach の対位法と和声とが、固く手を結びあった究極の曲が、
このイタリア協奏曲なのです。
Bach が若き日に学び尽くしたAntonio Vivaldi

(1678~1741)、Alessandro Marcello (1669~1747) の
「 Concerto 」 や、Bach 自身の「 Brandenburg Concerto
ブランデンブルグ協奏曲 」
についても、2回の講座で、
触れていきたいと思います。

Bach の広大無辺な世界は、狭い 「 古楽 」 の世界には、
入り切りません。

ピアノで、それをどう演奏していくかを、やさしく、
ご説明いたします。

また、偉大な pianist  Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー
( 1886 ~ 1960 ) の Fingering から、
彼が、何をこの曲から汲み取り、
構築していったか、
についても詳しくお話します。

 

 

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■第 2回   Bach  イタリア協奏曲 アナリーゼ講座

●第 2楽章 美しい旋律に、非和声音が精緻な装飾を施している
                               


★ 「 イタリア協奏曲第 第 2楽章 」 では、
Bachが珍しく記したテンポ記号
≪ Andante ≫ のもつ深い意味を、
解き明かします。

★蜘蛛の糸のように、精妙に織り込まれた、第 2楽章 の右手旋律は、
たくさんの ≪ 非和声音 ≫ を、含んでいます。
この右手旋律を、装飾音記号で書き換えることすら可能です。
そうしますと、旋律の骨組みがむき出しに現れてきます。

★この、主に ≪ 和声音 ≫ から成る 「 骨組み 」 が、どのように
≪ 非和声音 ≫ で装飾されているか・・・、
それを理解いたしませんと、
右手が絶えず、美しい旋律を細やかに弾いているだけの

「 退屈な演奏 」 になってしまいます。

★Bach は、Alessandro Marcello のオーボエ協奏曲を、
独奏鍵盤作品に
編曲しています。
( Concerto d-Moll BWV 974, nach dem Concerto d-Moll für Oboe,
Streicher und Basso continuo von Alessandro Marcello )

マルチェロの原曲を、どんなに美しく Bach が装飾し、編曲したかを
勉強いたしますと、第 2楽章 が一気に、分かりやすくなります。

★ピアノで Bach を演奏することの楽しみ、満ち溢れる喜びを、
きっと、実感できることでしょう。
Marcelloを、Bach 編曲で弾く楽しみについても、お話いたします。

 

 

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●第 3楽章 「イタリア協奏曲」 のスケールを、ピアノでどう弾くべきか

「 第 3楽章 」 は、生命力と喜びに満ち溢れた楽章です。
Edwin Fischer エドウィン・フィッシャーは、
3楽章の 3、4小節ソプラノの、
モティーフについて、
「 Bach の Choralvorspiel コラールプレリュード

" In dir ist Freude あなたの中に喜びはあり " BWV 615
の主題から
来ている 」  と、注釈しています。

★第 3楽章の1、2小節上声、それに続く下声の scale についても、
Fischer は 「 the scales full of fire、first in the treble 、
then in the bass 火のような音階、最初はトレブル、次いで、バスで 」
としています。

この意味は、どういうことでしょうか。

★上記1、2小節の音階と、3、4小節の In dir ist Freude の
モティーフから
成る主題を
「 as if  Bach's high trumpets were rejoicing at the theme 」
とも、 Edwin Fischerは、書いています。
つまり、歓喜の歌をトランペットが、高らかに鳴り響かせるように、
弾きなさい、と指示しています。

講座では、これらのことを、分かりやすく、ご説明します。

★このスケールをピアノで、どのように弾くべきか・・・、
真珠のネックレスのように、ただ美しく
、粒を揃えて弾くべきではない、
ということは、
Bach の作曲意図からして、自明の理です。

★Bach は、イタリア協奏曲作曲の20年前(1713~14頃)に、
イタリアのVivaldi ヴィヴァルディなどの Concerto を、
鍵盤独奏用に編曲しています。

これが、イタリア協奏曲の源泉です。
鍵盤楽器で、どのような楽器を想像しながら弾くべきか、
ということも、自ずと分かってきます。

 

 

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■第 1回  Bach  イタリア協奏曲 アナリーゼ講座
   日時 : 2015年 2月 25日(水) 10:00 ~ 12:30
■第 2回  Bach  イタリア協奏曲 アナリーゼ講座
   日時 : 2015年 3月25日(水) 10:00 ~ 12:30
■会 場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」

■ 参加ご予約・お問い合わせは・・・  
 〒460-0003 名古屋市中区錦3-15-15 カワイ名古屋
            Tel 052-962-3939 Fax 052-972-6427

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■ 講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura

  東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

   2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

   07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
         無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
         Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
    CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

   08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
       CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

   08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

   09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
             10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

   10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
       「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

   11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

   12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

   13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
           「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

         スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

 

 ★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/ 
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
販売中

 ★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
   Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
  disk Union クラシック館で、購入できます。

 

 

※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

 


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