■ Invention最後の15番を、Bachが描いたであろう「四声体」で分析する■
2014.10.26 中村洋子
★11月25日に、 KAWAI 表参道で開催します
「平均律アナリーゼ講座第2巻20番」のため、
Bach Clavier Übung クラヴィーアユーブンク第3巻のDuettoを、
勉強中です。
この4曲のDuettoの第1曲目と、平均律2巻20番 Prélude のどちらにも、
全音階と半音階が、組合わせられて出現するところがあります。
★Sviatoslav Richterスヴャトスラフ・リヒテル(1915-1997)の、
素晴らしいDuettoを、CDで聴いていますが、
このCD(PHCPー10571)は、
1991年、ドイツでの演奏会ライブレコーディングです。
★このような曲が、リサイタルプログラムに載ることは、
幸せな時代であったと、いえるかもしれません。
現在では、ほとんど演奏されないでしょう。
★それを弾けないピアニストが悪いのか、
それを求めない聴衆が悪いのか・・・。
★ Richter リヒテルの立派な演奏とは裏腹に、
毎度のことですが、CD添付の日本語解説の素人ぶりには、
悲しい思いで一杯です。
それを読まれた方が、誤った認識を持たれるからです。
Duettoについて、『この4曲は、その「デュエット」という名称からも
理解されるように、2声部で書かれており、その内容は、
有名な《2声 インヴェンション》を思わせるが、ここでは、
さらにそれを上回る円熟したポリフォニックな技巧が
駆使されている』と、書かれています。
★この解説には、二重の意味で誤りがあります。
一つは、“作曲家は年齢とともに技法が進化し、
より価値の高い作曲になる”という思い込みです。
もう一つは、“ Inventionは教育用の作品”という認識です。
★Bach、 Mozart、 Beethovenなど、どんな大作曲家でも、
その年代ごとに、特有の様式があるものですが、
どの時代の作品が優れているとか、若いから未熟である、
ということは、ほぼないのです。
★特に、Bach については、ごく若い頃から晩年に至るまで、
その質の高さは、ほぼ完全に一貫して同じ水準を保っています。
様式の差が見られるだけです。
★ Inventionにつきましては、当ブログで何度も何度も、
言及しています。
平均律クラヴィーア曲集第1巻の、エッセンスを抽出した、
恐ろしいまでの凝縮度と、簡潔さ。
その中にBach のすべてが含まれているともいえるほどの、
集中度です。
さらに、平均律第1巻から第2巻へと、橋渡しをする
扇の要の役割を果たしている曲集です。
★日本の音楽文筆業の浅薄な解説は、日本語という
離れ小島のような、隔離された言語で書かれているため、
批判されることがないだけなのです。
★10月29日の KAWAI名古屋「Inventionアナリーゼ講座」は、
いよいよ、最終の15番です。
9月から、 KAWAI 金沢で新たに Inventionアナリーゼ講座を、
始め、私は再び Inventionを1番から勉強しております。
★その結果、私はいま、 Invention1番と15番、そして、
平均律第2巻20番の神々しくも、恐ろしいまでに凝縮された
二声のPrelude、の計3曲を、同時に勉強する機会を、
与えられました。
★これは、Bach 先生の深い深い配慮である、
とまで思いたくなるほど、
嬉しさを感じています。
★この三曲を、同時に学ぶことにより、
今回の Invention15番から、いままで見えなかった相貌が、
見えてきたのです。
「Inventionen und Sinfonien 」全30曲の、
全体像が点描ながらも、見えてきた、
ともいえるかもしれません。
★ KAWAI 名古屋での Invention15番講座では、
今回は特に、金沢で始めた試みを披露いたします。
つまり、Bach が二声 の Inventionを作曲した際、
頭の中では、どのような四声体を描いていたか、
そして、最終的に、最も重要な骨格であるところの
「二声」をそこから抽出し、現在の曲として完成させたかを、
辿る試みです。
★「二声 」を「四声」に“戻し”、それをピアノで音に出し、
皆さまに体験していただきます。
それにより、二声 の Inventionが、
その背後に、豊かな四声体の音楽を背負っていること、
どう演奏したらよいのかが、
明確に、認識できると思います。
★同様に、「三声」の Sinfonia を 「四声体」から見る試み。
つまり、「三声」とみえても、必ず、
「soprano、 tenor 、 alto、 bass の四声」
のうちの、ある声部を、担っています。
それがどこに当たるかを、深く考え、
解明することにより、一見華やかで、
全30曲のカデンツァのようにみえるこの曲が、
底知れぬ深さと、豊饒さの世界を体現しているということが、
お分かりになると、思います。
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■中村洋子 バッハ インヴェンション・アナリーゼ講座■
第15回 インヴェンション&シンフォニア 第15番 h-Moll
~15番は、Inventionen & Sinfonien 全 30曲の Coda ~
■日時 : 2014年 10月 29 日(水) 10:00 ~ 12:30
■会場 : カワイ名古屋2F コンサートサロン「ブーレ」
■参加ご予約・お問い合わせは・・・
〒460-0003 名古屋市中区錦3-15-15 カワイ名古屋
Tel 052-962-3939 Fax 052-972-642
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■今後のスケジュール
・イタリア協奏曲 第1楽章
2015年 2/25(水)10:00~12:30
・イタリア協奏曲 第2・3楽章
2015年 3/25(水)10:00~12:30
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★ Inventio 15曲と、 Sinfonia 15曲の 計 30曲は、
Inventio Nr.1 を Thema 主題とする 29の変奏曲と、
考えられます。
この 30曲から成る 「 Inventionen & Sinfonien 」 は、1723年と、
序文に記されています。
「平均律クラヴィーア曲集 第 1巻」 は、1722年。
つまり、平均律第 1巻のほうが、一年前なのです。
★相次いで成立した 「 人類の宝 」 ともいうべき、
二つの曲集は、お互いが、深く、関連付けられています。
★Sinfonia 15番の Thema 主題は、
Inventio 15番を土台にして、生まれ、
両者は一心同体であり、
「 Inventionen & Sinfonien 」 全 30曲の、
Coda コーダ、あるいは Kadenz カデンツ と、
見ることができます。
★逆に、この15番の高みから、
1年前の平均律 第1巻全体を、眺めることもできるのです。
平均律 第1巻の最終曲24番が、
平均律 第2巻を 予兆しているのと、同じような関係です。
つまり、この三つの曲集が、縦横無尽に絡み合っているのです。
講座では、この大きな流れをお話するとともに、
15番の素晴らしい和声についても、
詳しく解説いたします。
★また、 Invention & Sinfonia15番の記譜について、
ヨーロッパの有名なUrtext 原典版が、
どうして各々異なっているか、それをどのように
取捨選択すべきか、具体的にお話いたします。
★さらに、15番の repeated notes 同音連奏と、
Bach と同時代のScarlatti スカルラッティ(1685-1757 ) の repeated notes がどう違うのかも、ご説明いたします。
これが、≪ Bach をどう弾くべきか ≫、
という問いへの、回答になります。
★汲めども尽きない 15番の二曲から、exercise を抽出し、etude とすることも出来ます。
Bach が、この作品により、息子やお弟子さんたちを、
いかに深く豊かな音楽世界へといざなったか、
目に浮かぶようです。
ご一緒に、探求いたしましょう。
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■ 講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年: CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 & CDは、
「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で
販売中
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 第 1 ~ 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
disk Union クラシック館で、購入できます。
※copyright © Yoko Nakamura
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