音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■バルトーク校訂の素晴らしい モーツァルト・ピアノソナタ  KV310■

2011-01-23 23:10:29 | ■私のアナリーゼ講座■

  ■バルトーク校訂の素晴らしい モーツァルト・ピアノソナタ  KV310■
                          2011.1.23    中村洋子

 


★昨日、モーツァルトを勉強するため、

私が考える最良、最短の方法を、

書きましたが、その追加です。


「 エドウィン・フィッシャーの校訂版 」 とともに、

バルトークが校訂しました

「 モーツァルト・ピアノソナタ全集 」 も、

是非、フィッシャー版とともに、学んでください。


★両方を見比べますと、主張していることが、驚くほど似てます。

フィッシャーは、それを  「 フィンガリング 」 により、表現しますが、

バルトークは、 「 ぺダリング 」 で、示唆しています。


★「 バルトーク校訂のモーツァルト 」 に対し、

そのぺダルを踏んでいる長さや、タイミングを見て、

拒否反応を、示された方が、いらっしゃいました。

“ 時代遅れで、使いにくい版なのでは・・・、

もっと新しく、弾き易い、いい楽譜があるのでは・・・ ”

と、思われたのでしょう。


★フィッシャーの大変に弾き難い  「 指使い 」 は、

実際には、 ≪ その指で弾きなさい ≫

という指示ではないのと、同様に、

バルトークのペダル指示は、

≪ そのようにペダルを踏みなさい ≫

という意味では、ない のです。


★そこを理解しませんと、この二人の崇高な校訂版が、

使いにくい、価値の低いものと、誤解されてしまいます。

バッハやモーツァルトの、真の校訂版は、

バッハやモーツァルトに、近い能力の、

大音楽家にしか、出来ないでしょう。


★安易に出版された 「 弾き易い 」 校訂譜が、

たくさんはびこり、本物のフィッシャー版などが、

隅に追いやられているのは、悲しいことです。

 

★例えて言えば、このフィッシャー版やバルトーク版は、

最高級の、スポーツカーのようなもので、

ドライバーに対し、非常に高い操縦能力と知性を、

求めているのと、同じです。

逆に、この版が、ピアニストを選ぶのかもしれません。

 


★バルトーク版の KV 310 は、

28小節目 から 30小節目  1拍目までの  「 バス音 」  に、

小さく、 「 テヌート 」  が付されています。

このテヌートにより、このソナタの重要な、

「 2度のモティーフ 」  が、浮かび上がってきます。


★また、39小節目の 3拍目から 4拍目の間に、

バルトーク版は、上声、下声ともに、

ごく小さな縦線を、わざわざ書き込んでいます。

3拍目でフレーズが終わり、 4拍目から新しく始まる、

ということを、この縦線で、示しているのです。

その結果、 39小節目の 4拍目から、

40小節目の 1拍目にかけ、

同じ  「 2度のモティーフ 」  が、浮かび上がります。


★大作曲家バルトークによる、

モーツァルトという場を借りた、創作物としての、

英知に溢れる、校訂版です。


★バッハの平均律 1巻 10番前奏曲 3小節目の、

1拍目「 Dis 、E 」、 2拍目 「 Fis、E 」  「 G、Fis 」 に、

バッハ自身が、 「 スラー 」  を書き込んでいます。

このスラーが、何を意味するのか?

もし、スラーがなければ、

どのように意味が、変わってくるのか。


★モーツァルトは、彼の天才で、

このスラーを、どのように自分のものとして、

吸収したか・・・。

これを、25日のアナリーゼ講座で、お話いたします。

 

 

              ( 蝋梅、紅梅、お地蔵さま、狛犬?  )

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