音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■≪インヴェンション・アナリーゼ講座≫全15回が終了しました■

2009-12-04 22:53:40 | ■私のアナリーゼ講座■
■≪インヴェンション・アナリーゼ講座≫全15回が終了しました■
                  09.12.4   中村洋子


★昨年6月から、カワイ表参道で続けていました、

バッハの≪インヴェンション・アナリーゼ講座≫が、

本日、終了しました。

インヴェンションとシンフォニア全30曲を、1年半かけて、

皆さまと、じっくり学びました。


★本日の朝も、電車の不通という困った事態が起きました。

にもかかわらず、汗をふきふき、駆けつけてくださった方や、

“最終回ですから、なんとしてでも聴きたい”という熱心な方、

“当ブログの愛読者です”と、お声を掛けてくださった方など、

いつもにもまして、たくさんの方々が、ご出席されました。

このような皆さまに支えられて、全15回を完走できました。

お礼申し上げますとともに、大変、感動しております。


★きょうは、インヴェンションとシンフォニアの15番を、

詳しく見ると同時に、インヴェンション全曲の、

曲の関連性についても、お話しました。

インヴェンション1番を、全曲の「前奏曲」と見るならば、

シンフォニア15番は、「コーダ(結尾部)」と位置づけられます。

インヴェンション15番の、テーマを基に、

シンフォニア15番のテーマが、紡ぎだされています。

インヴェンション15番とシンフォニア15番は、

一つの楽曲と、みなすことも可能です。


★インヴェンション15番は、「2声」ですが、

3回の主題の提示があり、あたかも、

「3声のフーガ」の、第一提示部のようです。

シンフォニア15番は、「3声」ですが、曲の開始の6小節間は、

2声部しか現れず、休止している3声部目の全休符を、

バッハは、あえて、手稿譜に記譜していません。

2回提示されるテーマの関係は、同度(正確には1オクターブ)で、

フーガの主題と応答の関係である「5度」では、ありません。

まるで、インヴェンション1番のようです。


★最後の15番で、「2声のインヴェンション」を、

「3声楽曲」のように、

「3声のシンフォニア」を、「2声楽曲」のように、

とても、ユーモアに満ちた作曲をしたバッハ。

その作曲技法の凄さに、感服しました。


★お弟子さんや、息子たちのびっくりした顔を、

にこやかに、満足気に見守るバッハの横顔が、

目に浮かぶようで、

彼の暖かい家庭の団欒が、彷彿とされます。


★また、本日は、バッハと、

ドメニコ・スカルラッティとの関係について、

少し、お話いたしました。

バッハ、ヘンデル、スカルラッティの3人とも、

同じ、「1685年生まれ」です。

伝えられるところによりますと、20代の初めの、1708年、

ヘンデルとスカルラッティは、コンテストに参加し、

ヘンデルがオルガンで、スカルラッティは、

チェンバロで、優勝したそうです。

二人は、お互いを、認め合った間柄でした。


★ヘンデルを、尊敬していたバッハですから、

スカルラッティについても、若い頃から、その作品を注視し、

研究していたことは、想像に難くありません。


★本日は、さらに、バッハが息子のフリーデマンの教育用に、

「平均律クラヴィーア曲集」1巻の、前半12の「前奏曲」を、

難しい箇所を省略して、インヴェンションやシンフォニアと、

同時に並行して、教えていた、ということもお話しました。


★このバッハの教育方法を、是非、皆さまがバッハに親しむ際や、

生徒さんに教える際に、お使いいただきたいと、思います。

ただし、楽譜は、編曲されたり、簡易版ではなく、

必ず、原典版(Urtext)を、ご使用ください。


★この方法は、作曲者本人であるバッハが、

自ら、採用していたのですから、

自信を持って、皆さまにお薦めできます。


★来年から、始まります「平均律クラヴィーア曲集」講座では、

いつも、≪インヴェンションとの関係≫を、念頭に置き、

だれもが親しめる「平均律クラヴィーア曲集」を、

目指して、講座を進めたいと思います。


                          (野草の花)
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