音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 「 平均律第 1巻 2番ハ短調 」を、どう暗譜するか ■

2010-02-16 23:57:20 | ■私のアナリーゼ講座■
■ 「 平均律第 1巻 2番ハ短調 」を、どう暗譜するか ■
                     10.2.16 中村洋子


★明後日18日に開催の「 第 2回平均律アナリーゼ講座 」 で、

「 第1巻 2番ハ短調 」 の暗譜の仕方について、お話いたします。


★「 第 12回インヴェンション講座 」 で、ご紹介しました

「 暗譜の方法 そのⅠ 」 を復習し、さらに、具体的に

それを「 2番 ハ短調 前奏曲とフーガ 」 で、どのように、

応用し、実践するか、ご説明いたします。


★私は、高校時代、平均律第 1巻の曲を学ぶ際、

第1回目のレッスンの前に、その曲を暗譜し、それから、

先生のもとに、うかがいました。


★ほぼ 1週間に、 1回のレッスンでしたので、

7日間でどうやって、正確に覚え込むか、

その方法を自分で考え、実践しました。

その結果、いまでも、なんとか、平均律第 1巻は、憶えております。

若かったからだけでなく、その方法が妥当だったからでしょう。


★「 暗譜の方法 」というのは、実は、「 正しい練習の方法 」である、

と、いえそうです。

漠然と、全曲を楽譜を見ずに弾けるのは、

「 暗譜 」 とは、いえません。

それですと、弾くたびに違うところで間違えたり、

忘れたり、してしまいがちです。

何年それをしても、手の内に、入りません。


★暗譜=記憶 ですが、いまつくづく、よかったと思いますのは、

ピアノがなくても、電車のなかでも、お風呂のなかでも、

バッハの音楽を、頭のなかで再現し、楽しんだり、

感動したりすることが、出来ることです。

私の作曲家としての土台は、ここにあります。

この喜びを、皆さまに是非、お伝えしたい、と思います。


★「 平均律第 1巻 2番 」 の前奏曲は、いろいろな解説書で、

「 トッカータ風 」 と、書かれています。

孫引きが多く、その根拠ははっきりとしません。


★確かに、そう思えなくもないのですが、本当にそうでしょうか?

「 トッカータ風 」 とすることで、「 力強い 」、「 活気ある 」、

「 元気はつらつ 」 などの性格づけがなされることが、

多いのですが、そのイメージに、

引きずられないほうが、よいと思います。


★私の方法で、この 「 2番前奏曲 」 を、勉強いたしますと、

大きく、浮かび上がってくる曲想は、

バッハの ≪ 受難曲 ≫ の一節、といっても過言ではない、ものなのです。

この前奏曲が、1番の前奏曲と対を成す曲であると同時に、

1巻の最後「 24番 ロ短調 」 とも、対応していることが、分かってきます。

あの「 ロ短調ミサ 」 の 「 ロ短調 」なのです。


★私自信、正直に申し上げますと、これまで、

「 トッカータ 」という言葉に、惑わされ、暗示を掛けられていました。

今回、自分の暗譜の方法を使って、新たに、2番前奏曲を、

勉強し直しましたところ、

≪ 受難曲 ≫のような、曲想であったことを、改めて発見しました。


★さらに、前回のブログと同様、

バッハの自筆譜と、一部の原典版との相違点を、新たに発見しました。

33小節第 1拍目 上声 「 ソ ド シ ド」 の 「 シ 」に、

≪ バッハの自筆譜 ≫ は、「 ナチュラル記号 」を、付けていません。

しかし、「 ヘンレ版 」 や 「 ヴィーン原典版 」 では、

ナチュラル記号が、付けられています。

「 べーレンライター版 」では、

小さい活字のナチュラルが、付けられています。


★これは、

① 1小節前の、32小節第 1拍目上声の

「 ソ ド シ ド 」 の 「 シ 」 に、

≪ バッハの自筆譜 ≫では、「 ナチュラル記号 」が付いている、

② 32、33小節の他の「シ」でも、

すべて、「 ナチュラル記号 」が付いている・・・ことから

“ バッハが、書き忘れたのであろう ”と、

“ 親切な校訂者 ” が、勝手に、ナチュラル記号を付けてしまった、

と推測されます。


★この曲を、きちんとアナリーゼしますと、

この ≪ シ ≫ が、≪ シ♭ ≫ でしか、ありえないこと、

さらに、そこにこそ、

バッハの天才が、発揮されている、ということを、

講座で、お話いたします。


★前回、第 1回講座のアンケートで、ご質問がありました

≪バルトークの校訂した 「 平均律 」の曲順は、

なぜ、 1番から順番に並べられていないのか? ≫、についても、

講座で、触れる予定です。

「 大作曲家 」バルトークだからこそ、読み取れる バッハ像が、

この校訂版から、浮かび上がってくるのです。



                      (マンサクの初花)
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