音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■いつでもバッハ、どこでもバッハ 、「 平均律第 1巻 2番 」の講座を終えて■

2010-02-18 21:07:53 | ■私のアナリーゼ講座■
■いつでもバッハ、どこでもバッハ 、「 平均律第 1巻 2番 」の講座を終えて■


                   10.2.18 中村洋子

★東京は、未明から雪が降り続きました。

本日は、「 平均律第 1巻 2番ハ短調 」 のアナリーゼ講座の当日。

遠方より、お出でになる方もたくさんいらっしゃり、

交通機関の乱れに対しても、さまざまな智恵を絞って、

驚くほど、たくさんの方に、ご出席いただきました。


★本日は、前奏曲とフーガを、どのように 「 暗譜 」するか、

というお話を、いたしました。

「 暗譜 」 とは、≪ 正確に記憶する ≫ということですが、

①理論的に、頭の中に定着させること、

②指が記憶して、動くこと、

③心の動き方、つまり、どのように表情をつけるか、その手順。

以上、三つことを、いかなる時にでも、間違いなくできる・・・

ということを、指します。

以下で、その一部をご紹介します・・・


★この前奏曲は、4分の 4拍子、1小節に 16分音符が 16個あります。

頭の中での定着と、心の動き方の、二点については、

1小節を 4分音符 4つに要約し、

まずは、頭の中で、和声の知識を、動員しながら、

憶えることです。


★その要約を、何度も弾くことにより、

バッハが、どのように、心を動かしながら作曲していたか、

それを追体験し、自分の表現法を創造します。


★指の記憶の一例としては、第 1小節目では、右手の部分を、

各拍の頭の音「 ド ド ド ド 」 を、左手で弾き、

それ以外の 「 ミ レ ミ 」「 ミ レ ミ 」

「 ミ レ ミ 」 「 ミ レ ミ 」 を、右手で弾きます。


★この右手を、さまざまな指使いで、練習することは、

大変に有効な 「 トリルの訓練 」 と、なります。

こうしますと、右手だけで全部を弾くより、おそらく、

上手く、正確に弾くことができると、思います。


★それを、自分の理想の弾き方として、記憶し、

右手だけで、その理想に近づくよう、練習する。

それをしますと、右手の部分が、実は 1声ではなく、

2声または 3声であることに、気付きます。

2声というのは、強拍の部分を 1声とし、

「 ミ レ ミ 」 の、内声の部分を、 2声とすることです。

より詳しく考えますと、1拍目と 3拍目のドが、ソプラノ、

2拍目と 4拍目のドが、第一アルト、「ミレミ」の 16分音符が、

第二アルトの、 3声になります。


★左手の部分も同様に、練習します。

ですから、この 1小節は、右手が 3声、左手も 3声、

計 6声として、記憶し、練習すべきです。


★「 フーガ 」 につきましては、

「 インヴェンション講座 」 で、お伝えしました、

「 暗譜の方法 そのⅠ 」 による、 30通りの手順を踏めば、

1週間で、きちんと効率的に「暗譜」できる方法を、お話しました。



★これは、決して機械的な手順、方法ではなく、

それを、実践することにより、

バッハの音楽の本質を、探求するという営みに、ほかなりません。

ですから、無味乾燥な、指の訓練のためだけの、芸術性に乏しい

「練習曲」は、全く、必要ありません。


★バッハの音楽に、ピアノに向かっているときだけ、あるいは、

CDや演奏会で、聴くときだけ向かいあうのは、

もったいない話です。


★「 完璧な暗譜 」 が出来ていますと、

≪ いつでもバッハ、どこでもバッハ ≫ が、可能となります。


★しかし、最も重要なことですが、この2番の前奏曲は、

解説書に書かれている「指の練習曲」では、全くないことは、

上記の要約による 「 暗譜法 」 を勉強すれば、

如実に、分かることです。

2番の前奏曲と深い関連をもつ、「 1巻 24番フーガ 」 、さらに

「 マタイ受難曲 」からの、引用も例にとり、

詳しく、ご説明いたしました。


★この 「 暗譜 」 を、マスターしますと、

「 ♯ 」や 「 ♭ 」が、たくさん付いた調号が、怖くなくなります。

次回の、「 第 3回平均律アナリーゼ講座」の「 第 3番 嬰ハ長調 」は

7つの「♯」を、調号にもっていますが、それをストレスとすることなく、

バッハの美しい音楽に向かい合うことが、可能となります。

次回の講座でも、「暗譜」について、「 第 3番 嬰ハ長調 」 を対象に、

さらに、深めて分かりやすくお話いたします。


                         (雪と瓦)
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