音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■平均律1巻17番でChopinとBartók が同じFingering.平均律2巻 10番の大宇宙■

2013-12-07 23:08:25 | ■私のアナリーゼ講座■

■平均律1巻17番でChopinとBartók が同じFingering.平均律2巻 10番の大宇宙■

              2013.12.7   中村洋子

 


★師走の時の流れは、せわしないです。

12月 9日は、カワイ横浜 「 みなとみらい 」 で、

平均律クラヴィーア曲集第 1巻 17番 As-Dur  のアナリーゼ講座、

12月 12日は、カワイ表参道 「 パウゼ 」 で、

平均律クラヴィーア曲集第 2巻 10番 e-Moll の、

アナリーゼ講座です。



★その準備と勉強で、忙しい毎日です。

カワイ横浜 「 みなとみらい 」 の 第 1巻 17番では、

Chopin  が、自分の楽譜にどのような書き込みをしているか、

詳細に勉強していますが、

今回 17番は、 Fingering が、 Fuga に 3か所あるだけです。


Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) が、校訂した

17番の Fingering と、 Chopin のそれとを比較していましたとき、

Chopin のかなり独創的な 3か所の Fingering が、

Bartók の校訂版に書かれた Fingering と、

完全に一致しているのを、
発見しました。

思わず、大声を上げそうになったほど、興奮しました。


★Bartók は、 Chopin の Fingering を知らなかっと思います。

天才同士の、時空を超えた交感でしょう。

 


★表参道での平均律第 2巻の 10番 e-Moll 。

いつもながら、Bach の大宇宙に圧倒されています。

私の大きな疑問は、以前にも書きましたが、

Bach が平均律 第 1巻 24曲で、あれだけ完璧な世界を、

創り上げながら、

なぜ、もう一度、第 2巻 24曲を作曲したのか、

第 2巻で、何に再挑戦したのか、です。


★1巻では、モティーフを煉瓦のように積み上げ、

強大なピラミッドを、構築しました。

それは、 「 調性 」 を追及するためのものでした。

「 調性 」 は、音階から規定されます。

Bach は、平均律クラヴィーア曲集 第 2巻で、再度、

24全調の Prelude & Fuga を、作曲することにより、

あたかも、ビッグバンのように、

調性の領域を、これ以上はない、それ以上のものはできない、

最大級の広大さへと、拡大したのです。


第 2巻は、個性的な prelude に目を奪われ勝ちですが、

やはり、Bach の意図は、渾身の力を込めて、

「 調性とは何か 」 という命題を、新たに、

≪ fuga から解いていった ≫ のだと、思います。


★Bartók Béla  バルトーク (1881~1945) と Chopin とが、

お互いに Bach を通して、知らず知らずに、交感し合っていたように、

Bach の fuga への扉は、Bach の音楽を愛し、努力する人には、

開かれているのです。




平均律 第 2巻 の fuga を理解するには、

既成の型に嵌った fuga の知識は、ほとんど役に立たないでしょう。

fuga の基本的な構造である 「 Exposition 提示部 」 と、

「 Episode 嬉遊部 」 を、どう配置するか、

それを小さな常識で裁いてみても、

ネズミが、象を撫ぜるようなものでしょう。


★乏しい分析力や知識で、 Bach はこうである、

かくあるべきと、裁断したり、

海外の立派な校訂版を、継ぎ接ぎして、

あたかも、自分の校訂のように装ったり、

考古学のように、Bach 時代はこうだったという衒学的知識で、

無味乾燥な干からびた演奏を強いたり、その裏返しに、

Bach が大好きで、ピアノでBach 弾く人を嘲笑したりする、

そういう人たちには、Bach の音楽は、降りてこないでしょう。


★しかし、そうはいっても、 fuga は難しいから、

近寄りたくない、避けて通りたい、

というのは、間違っていると思います。


純真な子供のように、Bach の音楽は美しい、素晴らしいと、

心から感じ、慕う人に対しては、

Bach 先生は、生前も、これまでも、いま現在も、胸襟を開き、

諸手を挙げて、受け入れてくれます。


★そのような観点から、アナリーゼ講座では、

≪ Bach をどう弾いたらよいか ≫ についても、お話しします。




 
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■第 17回 平均律 第 1巻 17番 変イ長調
 Chopin が見た 「 平均律クラヴィーア曲集 」 ・アナリーゼ講座
  ~ヘンデル 「 CHACONNE 」 と Bach をつなぐもの~
日  時 : 2013年 12月 9日 (月) 午前 10 時 00分 ~12 時 30分
会  場 :  カワイミュージックスクール「みなとみらい」        
    横浜市西区みなとみらい4-7-1 M.M.MID.SQUARE 3F
    ( みなとみらい駅『出口1番』出て目の前の高層ビル3F )
予 約:Tel. 045-261-7323 横浜事務所

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■平均律クラヴィーア曲集・第 2巻 アナリーゼ講座
第 8回  第 10番 e-Moll BWV879 Prelude & Fuga
   ~ Invention、Partita から平均律 2巻 10番 への遠大な流れ ~
日  時 :  2013年 12月 12日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分
会  場 :  カワイ表参道  2F コンサートサロン・パウゼ
予  約 :  Tel. 03-3409-1958
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■ 講師 :   作曲家  中村 洋子  Yoko Nakamura

 東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。

2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。

07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
        無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
        Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
     CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
                         ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。

08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
    CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。

08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
                  Analysis  インヴェンション・アナリーゼ講座 」
                    全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。

09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

        「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
           W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
           初演される。

10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
                  Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
                全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。

10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

     「 Regenbogen-Cellotrios  虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
             ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
      Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。

11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
                         チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
    チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
      Musikverlag Hauke Hack  Dortmund 社から出版。

13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
                  無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
                        Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。

         「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
    ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。

       スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
    自作品が演奏される。

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★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」

Wolfgang  Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、

 全国の主要CDショップや amazon でも、ご注文できます。

 


※copyright © Yoko Nakamura    
             All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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1 コメント

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Unknown (ak)
2013-12-11 22:47:48
中村先生
いつも拝読させていただいております。チェロ組曲4番・5番・6番のCD、amazonnを通じて購入し、早速拝聴、感動いたしました。それで、是非1番から3番や、そのほかの中村先生の曲を聞きたいと思います。
そこでお願いがございます。地方におりますと、なかなか入手が難しく、新作以外の先生のCDも、amazonnやHMVを通じてネットで購入できるよう、お取りはからいいただくことはできませんでしょうか? 是非ご一考ください。どうぞよろしくお願いいたします。
今後も、わかりやすく目からウロコのアナリーゼを楽しみにいたしております。失礼いたしました。
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