音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ イタリア協奏曲へと至る、 Bach 20年の道のり ■

2012-07-02 16:28:55 | ■私のアナリーゼ講座■

■ イタリア協奏曲へと至る、 Bach 20年の道のり ■
                         2012.7.2  中村洋子

 


★7月に、なりました。

6月は、東京、横浜、名古屋、金沢で、アナリーゼ講座があり、

あわただしい 1ヶ月でした。

四ヶ所で、すべて異なる曲でしたが、それだからこそ、

見えてくることが、たくさんあり、実り多い月でした。


★6月 27日は名古屋、翌日は金沢と、連日でした。

わざわざ、両方の会場までお出で下さった方もいらっしゃり、

とても、嬉しく思っております。


★名古屋では、 Inventio & Sinfonia

インヴェンション & シンフォニア Nr.8 と、イタリア協奏曲との

関連を、お話いたしました。

 


Johann Sebastian Bach  バッハ  (1685~1750) が、

Antonio Vivaldi (1678~1741)、 Allessandro Marcello(1669~1747)、

Benedetto Marcello (1686~1739)、Giuseppe Torelli (1658~1709)などの、

イタリア作曲家の協奏曲を、鍵盤楽器作品へと、編曲したのは、

1713年夏~翌年夏のころで、Bach 28~29歳。

Court Organist in Weimar ヴァイマールの宮廷オルガニストの、時期です。


ちょうどその 10年後に、「 Inventionen und Sinfonien 」 の、

全 30曲が、完成します。

Bach は、38歳です。


★この Nr. 8 の F-Dur インヴェンションには、

「 Concerto nach Italienischen Gusto イタリア協奏曲 」 が、

どんなに、色濃く投影されているか、

そのオーケストラの tutti  と、独奏の solo のエッセンスが、

Invention Nr. 8 に、凝縮されている ということを、

理解していただくため、実際に、インヴェンションを協奏曲に、

私が編曲して、戻す作業を、皆さまにお聴かせいたしました。


★そして、Bach が 50歳の 1735年、満を持して、出版しましたのが、

「 Concerto nach Italienischen Gusto イタリア協奏曲 」、

≪ Zweyter Theil der Clavier Übung bestehend in einem Concerto nach

Italiaenischen Gusto, und einer Overture nach Französischer Art,

vor ein Clavicÿmbel mit zweÿen Manualen. ≫

≪ クラヴィーアユーブンク 第 2巻 

イタリア趣味のコンチェルト と フランス風序曲 ≫ なのです。

 

 


★ほぼ 20年にわたる Bach の探究の成果が、このイタリア協奏曲です。

・1713~14年 イタリアの超一流協奏曲を編曲することによる、徹底研究

・1723年   それまでの研究成果が結晶した、 Inventionen und Sinfonien

・1735年 イタリア協奏曲

以上の流れを、俯瞰して学びませんと、 

イタリア協奏曲だけを、何年弾きましても、

その本質に、迫ることはできないでしょう。


★この時期の重要な曲は、1734~35年にかけて完成、初演された

≪ Weinachts  Oratorium  BWV 248  クリスマスオラトリオ ≫

が、あります。

音楽史上、これほど生命力に溢れ、力強く、喜びに満ちた曲は、

ないでしょう。


★Leipzig 時代、50代の Bach の、この喜びの表現は、

イタリア協奏曲と、相通じるものがあると、

私は、思います。


★ 「 Invention インヴェンション Nr. 8 F-Dur 」 の次には、

イエスの受難を象徴するような、恐ろしく奥深い、

「 f - Moll  Inventio & Sinfonia Nr. 9 」  が、控えています。


★この 9番は、「 Wohltemperirte Clavier 第 1巻 (1722年完成)」 の、

「 24番 h - Moll 」 と、 「 Messe in  h - Moll ロ短調ミサ 」  BWV232 に、

一本の線で、結ばれている のは、言うまでもありません。


人間の最も、深い 「 喜び 」 と 「 悲しみ 」  が、

この Nr. 8 と Nr. 9 で、表現されています。

 Nr. 8 と Nr. 9 が、 Inventionen und Sinfonien の、

「 頂点 」 となる曲です。


★ Inventio & Sinfonia という、極小の規模の曲に、

Bach の、巨大な音楽と、 Bach の音楽の歴史とが、

凝縮されているのです。

 

 


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