音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■バッハの「インヴェンション2番」は、「二声」の曲にあらず■

2010-02-07 19:54:08 | ■私のアナリーゼ講座■
■バッハの「インヴェンション2番」は、「二声」の曲にあらず■
                   10.2.7   中村洋子


★風が強く、とても、寒い日曜日でした。

新潟県十日町市では、積雪が 3メートル近くにもなっているそうです。

本日 2月 7日は、旧暦では「 12月 24日 」と、クリスマスイヴです。

寒くて、当然ですね。

「 旧正月 」は、“ 春の始まり ” ということが、実感できます。


★ 2月 18日の、第 2回目「 平均律クラヴィーア・アナリーゼ講座 」

の準備で、

同じ、ハ短調である「 インヴェンション&シンフォニア 2番 」の、

「 バッハ直筆譜 」を、勉強しています。


★あらためて、インヴェンションの奥深さに、のめり込みました。

同時に、バッハが、ハ短調の「 インヴェンション&シンフォニア 」、

「 平均律の前奏曲&フーガ 」の 計 4曲を、

大きな構想の下で、

作曲していたことも、実感できました。


★バッハの「 直筆譜 」によりますと、

インヴェンション 2番(全 27小節)の下声は、

曲頭から、 22小節目 2拍目まで、

「 バス記号 」(ヘ音記号)ではなく、

「 アルト記号 」で、書かれています。

このような例は、インヴェンションでは、 「 8番 ヘ長調 」 のみです。


★この下声の「 アルト記号 」の部分を、

「 アルトまたはテノール声部 」 と、とらえますと、

22小節目後半から、最後までの「 バス記号 」 部分、

( ほぼコーダに一致 ) の、力強い音色とは、

自ずと、音色が異なってきます。


★この 「 二声のインヴェンション 」 を、

≪ 二声の曲 ≫ と、とらえずに、

「 ソプラノ声部 」、「 アルトまたはテノール声部 」、「 バス声部 」 による、

≪ 三声の曲 ≫、あるいは、

アルトとテノール声部を、分割して、

≪ 四声 ≫ の曲として、演奏してみてください。


★“ソプラノ“、“アルト”・・・というのは、

人間の声をなぞって、そのように称しているのですから、

当然、その音色も、人声すなわち、

バッハの声楽作品や、コラールなどから、

想像することが、できるのです。


★下声が、テノール声部を「 歌っている 」 ときにも、

休止している「 バス声部 」 が、“ 存在している ” ことを、

想像して、あたかも 「 指揮者 」 のような気持ちで、

“ いま、どのパートの人が歌っているか ”、

“ テノールからアルト声部へと、どのようにつなぐか ” などと、

考えながら、弾きますと、

実に、活き活きと、知らぬ間に、

色彩豊かな、演奏となります。


★そうなりますと、「 校訂版 」 に頼ることなく、

フレージング、アーティキュレーション、音色、ディナミークを、

“ 借り物 ” ではない、

「 ご自分の解釈 」 で、創造することができます。


★そのためには、ピアノ作品だけを聴いたり、

弾いたりしているだけでは、足りません。

今後のブログで、バッハの 「 マタイ受難曲 」 の、

「 声楽作品 」 を、例として、

第1回「 平均律アナリーゼ講座 」 で、お話しました

「 アウフタクトとは何か 」 についても、お伝えします。


★その声楽作品を聴いたり、ピアノで伴奏部分を弾きながら、

ご自分で歌ってみるという、一見、ピアノの練習とは、

かけ離れているように、思われることが、

バッハの 「 鍵盤作品 」 を、深く理解し、

その結果として、弾きやすくする

「 最短距離 」 であると、思えてなりません。


★ 2月 18日の第 2回 「 平均律アナリーゼ講座 」 でも、

引き続き、バッハの 「 アウフタクト 」 について、

ピアノで、実際に音を出しながら、

ご実感できるように、ご説明する、予定です。


                         (石畳と雪)
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