僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

110番はしたけれど

2009年08月27日 | 日常のいろいろなこと

めったに遭わない場面に出くわし、めったにない奇妙な経験をした。

昨晩のことである。
夕食を終えて、僕は妻と外へ歩きに出た。

家から藤井寺駅方面に向かい、駅周辺のジャスコやその他の店で買い物をしたりしてまた戻る…という1時間余りのウォーキングは、とても健康によく、これを続けているおかげで、僕も糖尿病の数値が下がったのではないかと思っているほどである。

…といっても2日に一度モミィが「お泊り」に来るので、その日は歩けない。だからモミィのいない日に、食後のウォーキングを続けている。

その、歩いている途中のことだ。

僕たちは、パープルホール(市民会館)の横の、川沿いの狭い道にさしかかった。人間2人がやっとすれ違えるほどの狭い道だ。

ホールの横を小さな川が流れている。
川の横に、その狭い道があるのだ。
道の川側には、転落防止用の金網が張られている。

「ん…? なんや、あれは…?」と、僕は前方を、目を凝らして見た。

暗くてはっきりしないが、金網に人が押し付けられていた。
どうも2人の男がもみ合っているようなのだ。
しかし、中学生か高校生がプロレスごっこでもしてふざけているのだろう、と思いながら、僕と妻はそこへ近づいて行った。

確かに…
2人は遊び半分で、もみ合っているように見えた。

なにせ狭い道だから、身体をのけぞらせるようにして、その2人がいる場所を通り過ぎた。

その瞬間…
「すみませ~ん」と、若い男が僕に声をかけた。

両手で相手の男を首のあたりをギュッとつかみながら、
「警察を呼んでもらっていいですか!」
そう言ったのである。

2人は大声で怒鳴りあっているわけではない。
相手の男は、もう老人と言っていいほどの年齢である。
いったい何が起こっているのか、僕にはわからなかった。

「警察…?」
僕は振り向いて、問い返した。
ややこしいことにかかわるのは嫌だ。
妻は先に歩いて行っている。

この2人はいったい何なんだ…?
ほんまに、犯罪者と被害者なのか…?

「警察を呼ぶの…? ほんまに…?」
と、僕は半信半疑で、また尋ねた。

「はい、お願いします」
まだ20歳前のように見える若い男は、
「こいつ、うちの家に侵入して来たんですわ。泥棒ですわ」

妻の方を見た。立ち止まってこちらを見ている。
う~ん。しゃぁないなぁ~。
僕は携帯を出して、110番に電話した。

横では、年寄りのほうが
「すみません、もうやりませんから」と若い男に謝っている。

「はい、110番の緊急通報ですが…」
警察が、電話に出た。
「あのぉ~、今、パープルホールの横ですが…」
と僕が言うと、
「パープルホールて、どこですか…?」
と、聞き返してきた。頼りない奴やなぁ。

「市民会館ですがな。その東側の細い道で、若い人が泥棒を捕まえたと言って、いまここでもみ合ってますねん。すぐに来てください」

「あなたが被害に遭われているのですか?」
「違います。私は通りがかりの者です。横に当事者の2人がいます」
「え~っと、被害者のお名前と住所を言ってください」

僕は、「逃がさんぞ」と相手の両腕をつかんで奮闘している若い男に、
「名前と住所は? あんたの名前と家の住所を教えてんか」と言った。

「あっ、えっと、○○何丁目何番何号 名前は○○です。ゼイゼイ」
と、息を切らせながら言う。

僕がそのとおりのことを警察に告げると、やや間があって、
「え~っと、その住所に○○さんという家は見当たりませんが」
と、警察が言った。

僕はまた2人の方に呼びかける。
「あのなぁ、兄ちゃん、その住所にあんたの名前はないらしいで」
と、僕もだんだん声が大きくなってきた。

「そ、そんなこと、ゼイゼイ、ありませんわ、ゼイゼイ」

「そんなこと、ない、言うてはりまっせ」
と、僕はまた警察にオウム返しに答える。

「ふ~ん、最近引っ越して来はったんですかねぇ」と警察。

「兄ちゃん、最近引っ越して来たんか? えぇ? どうやねん」

「3年前、ですわ。ゼイゼイ。こら、逃がさんぞ。ゼイゼイ」

「3年前やと、言うてはりまっせ」と僕。

「そうですか…はぁ…」と警察。

「あのね、とにかく早く来てちょうだい。ずっともみ合っているから」

「わかりました」と、警察の言葉を聞いて、電話を切ろうとすると、

「あの~、あなたの名前と住所を教えてくれますか?」
と警察が言うので、さっさと答えて
「早く来てや」ともう1回念を押して、僕は電話を切った。

2人の動きは、ちょっと落ち着いてきた様子であった。
若いのが、爺さんの両手をガチっと握っていた。
爺さんは「すんません。もうしませんから。かんにんして」
と、ぺこぺこと頭を下げ続けていた。

僕はもう早く現場から離れたかった。
「警察はすぐ来るからね」
「はい、すんません、ゼイゼイ」
と若いのが僕に言うと、爺さんも観念したかのように見えた。

「ほんなら、行こか…」
僕は妻を促して、2人から離れ、再び駅の方向へ歩いた。
あとは警察がちゃんと始末をつけてくれるやろ。

すると歩き出して2、3分も経たないうちに、警察官が一人、単車で走ってきた。僕はその警察官のほうに近づき、声をかけた。
「今の○○さんの件で、来はったんですか…?」
「そうです。あなたは…?」
「通報した者です。2人と離れて、ウォーキングに戻ったところです」
「あ、そうですか」警官は、若くて、イケメンであった。

僕は妻とともにUターンし、そのイケメンについて現場に戻った。

現場には、誰もいなかった。
イケメン警官は、
「先に警官が来たのです」
「あ、もう泥棒は逮捕されたんですか」
「いや、逃げたらしいです」

「ゲェっ、逃げた?」

なんでや…?
あのわずかの間に、あの若い男は爺さんに逃げられた…?

「そんなアホな。若い男は力が強いし、相手は年寄りやったのに」
「何歳くらいでした?」
「そうやねぇ、もう70歳近かったように見えたけどなぁ」
「そうですか。それでもね、捕まるのが嫌で逃げる犯人はたくさんいますからね。この川に飛び込んで逃げたかも知れないし…」
とイケメン警察官は推測をめぐらす。

こんな浅い川なんかに飛び込んだら、よけい逃げられへんがな。
だいたい、足も遅そうやし、逃げても若い男にすぐ捕まるはずや。

「ところで…」と僕はイケメンに質問した。
「その若い男はどこへ行ったん?」

「あ、泥棒に遭った被害者ですね。今、別の警察官たちが、その人の家で事情を聴いています」
イケメン警察官はそう説明し、
「また、その泥棒らしき者をみかけたら通報願います、よろしく」
と敬礼したので、僕たちはまた現場を離れ、藤井寺方向に歩き始めた。

…不思議な話だ。
警察が来るまでのわずかの時間に、なぜ爺さんが逃げたのだ。
若い男は、なぜそれを取り逃がしたのだ。…どうも、解せない。

若い男は、泥棒の爺さんをわざと逃がしたのではないか…?
しかし、だったら、なぜ、僕に警察への通報を頼んだのだろう。
疑問だらけである。

もし若い男も追いつかないスピードで走って逃げたとしたら、あの爺さんは驚くべき「俊足」だと言わなければならない。

…しかし、いくら考えても、あの年齢でそんな早く走れるか…?。

この一件を、帰宅してから yukari さんにメールで知らせたら、

~ 爺さんの着ぐるみを着たボルトやったんちがいますか? ~

との返事が返ってきた。

な~るほど。そういうことだったんだ。
先日、世界陸上短距離で驚異的記録を出したジャマイカのボルト…
ボルトが爺さんに化けていた…???

あのボルトなら、誰が追いかけても捕まらないであろう。

僕はそれ以上悩むことなく、安心して眠りにつくことができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (10)
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