第2回WBCの序盤戦の大一番、韓国戦に、日本が7回コールド勝ちをした。
14対2。実に12点差をつけた。まさに圧倒的勝利である 。
この大勝を、歴史的勝利、と言う人もいた。
その先陣を切ったのは、やはりイチローである。
一人の選手が打つと、こうまでもチーム全体の空気が変わるのか…。
前回の中国戦では、勝つには勝ったが、5安打しか打てず、ランナーが出ても拙攻を重ね、不満がいっぱい残る試合をした日本。それもこれも、イチローの大ブレーキがチーム全体に悪影響を与えていたのだ。日本中の人たちが、イチローの調子が一刻も早く回復するように、と祈っていた。
昨日の韓国戦。そのイチローが初回先頭打者としてライト前にヒットを放たなければ、その後どうなっていたかわからない。今さらながら、イチローの存在の大きさに、プロ野球ファンのみならず、野球に関心の薄い人も、思い知らされたに違いない。
イチロー、中島、青木といきなりの3連打に、僕は早くもテンションが上がった。実はその前夜、僕は送別会をしてもらった帰りに、近くの韓国人ママのいるスナックへ、一人でふらりと入ってワイワイ騒ぎ、帰宅は深夜。おかげで土曜日は朝からひどい二日酔い状態で、胸がむかつくわ下痢はするわで、起きているのもままならぬ状態。ほとんど1日中ゲロゲロいいながら寝転んで過ごし、この野球もテレビの前にごろんと寝たままで見ていた僕である。対韓国戦を控えた前日に、韓国人のママのいる酒場で遊ぶなどとは極めて不適切であり、てきめんにそのバチが当たったような体調不良ぶりであった。とほほ。
それはまあいいのですが…。
初回、イチローからの3連打で日本はあっという間に1点を先制。相手の投手は、北京五輪で日本打線が完璧に抑えられた金広鉉である。若いサウスポーで、いつもヘラヘラ笑っているようなしまりのない顔をしているが、北京ではこの投手が全く打てなかった。村田などもきりきり舞いさせられていた。
さて、日本はいきなり1点を取ってなおも無死1・2塁。
ここや、ここやでぇ~。一気に行け行け~い!
と手に汗握っていたら、4番の村田、5番の小笠原が連続三振に討ち取られ、たちまち二死となった。一転して悪い予感が走った。
なんじゃ、こら~。ここで追加点を取らなければ、金投手に立ち直られて、また北京五輪の二の舞になる。なんとかしてくれ~と祈るようにテレビを見ていると、この日6番に入った内川が、三塁線を痛烈に抜いて2点を追加した。これは、本当にうれしかった。値千金、とはまさにこのことである。
3点リードでピッチャー松坂。
しかし、相変わらず立ち上がりの悪い松坂である。
一死後、2番打者にヒットを打たれ、3番打者にも痛打を浴びる。
しかし、これは打ったランナーが二塁を欲張りタッチアウト。
なんとか二死にこぎつける。
しかし、次の4番打者に、超特大ホームランを打たれて2点を返された。
な~んや、そら。また負けるんちゃうか。
しかし、松坂は立ち上がりは悪いが、大リーグのシーズン中でも、不思議なことに、松坂が投げると味方打線が爆発する。松坂が点を取られても、それ以上に味方が点を取ってくれるので、彼は打たれはしても、なかなか敗戦投手にならないのだ。そのジンクスは、ここでも生きていた。
2回の表の日本の攻撃は、これはもう、溜飲を下げたというか、スカッとしたというか、しびれたというか、思い知ったかぁ!というか、あの北京五輪での星野ジャパンのみじめな敗戦の屈辱を、久方ぶりにぬぐい去ることができた。
韓国野球よ。日本の野球は、本気を出せばこんなものなんだよ。あはは。
北京五輪では星野ジャパンにGG佐藤という選手がいた。
韓国戦でのお粗末な守備で、一躍有名(?)になり、打撃もさっぱり振るわず、北京五輪での「日本のふがいない選手ナンバーワン」に挙げられた選手だ。それに負けず劣らずダメだったのが村田である。再三のチャンスに打席に立ちながら、三振と凡打を繰り返し、日本ファンにため息をつかせた。村田に一本ヒットが出ていたら勝てていた試合がいくつかあった。ほんまにもう…どこがホームラン王やねん、早よぅ、引っ込め…とGG佐藤以上にもどかしい思いをした選手である。しかしそのダメ男だった村田が、中国戦に続き、昨日も大きな仕事をしたのであるから、野球というものはわからないものだ。
2回表は先頭の城島がヒット。次の岩村がカウント2-3から微妙な球を選んでフォアボール。このフォアボールが大きかった。なんだか最後の球がストライクのような気がしたが、韓国のキャッチャーが球をはじいたので、審判もボールの判定をしたかのような印象を受けた。とりあえず、ラッキー。
無死1・2塁で再びイチローが登場した。
「ここはセーフティバントしかないなぁ」と僕は声を上げる。
マリナーズでは巧みなセーフティバントを何度も見せているイチローだ。
そのとおり、三塁側にちょこんと転がし、オールセーフで無死満塁。
「よっしゃぁ。さすが、さすが!」と寝転びながら拍手を送る僕。
しかし解説の古田が「まさか、ここでセーフティバントをやってくるとは…」
と言っていたのは、いささか理解しがたい言葉であった。
イチローが、ここでセーフティーバントをしなかったら、いつするねん!
この場面は、これしかないやろ~。
古田も試合に夢中になって、本業の解説がボケてきとるんと違うか…?
2番中島は押し出し四球で1点追加。続く青木が併殺崩れでまた1点。
この回2点目が入った。
一死1・3塁で登場した4番の村田が、ここで試合を決める3ラン本塁打を打ち込んだ。北京で手玉に取られた金広鉉への、強烈な報復弾であった。
よっしゃ、村田。これぞ男の中の男や。ええぞ~村田ぁ!
北京ではさんざん村田をののしっていたのに、僕もまあゲンキンなもんだ。
「村田って何者ですか?」と直後に長男からメールが来た。
「横浜の4番打者。セ・リーグの本塁打王です」と返事する。
セの本塁打王かどうか、はっきりは知らないけれど。
さあ、この回だけで5点目。合計8点だ。
さすがの金も、ノックアウトされて、ヘラヘラ顔が消え、降板。
試合は、おおかた、ここで決まった。
2回を終えて8対2となり、その後も日本は攻撃を緩めることなく、さらに小刻みに6点を取って、14対2で7回コールド勝ちという快挙を遂げた。
14点も取るなんて…信じられない展開であった。
あぁぁ~、気分がいい。
日韓戦というと、サッカーでも野球でも、異常に燃える。
そして、常にドラマのような接戦を演じ、勝つにしても簡単にはいかない。
それが、毎回のように得点して、7回まで実に韓国に12点差をつけてコールド勝ちするとは…、およそ考えられない結末となった。韓国戦で、これだけ安心して見ていられる試合なんて、これまで一度もなかったはずだ。
これでWBCの2次ラウンド進出一番乗りを決めた。
韓国は、きょう、中国と敗者復活戦を行い、たぶんこれには勝つだろうから、明日、再び日本と、A組の1位決勝戦を行う。
そうだ。昨日の試合だけではないのである。
日本対韓国は、明日9日に、また行われるのだ。
う~ん。この勢いをそのまま持ち込んでほしい。
もしも負けたりすると、せっかくの昨日の大勝がかすんでしまう。
ところで…
このWBCは、日本にとって当面の敵は韓国であるが、2連覇を狙うためにはアメリカという巨大な壁を突き破らなければならない。野球は自分たちの国のもの、他国に優勝はさせない、というアメリカのプライドは高い。前回、優勝できなかったことで、今年はなりふりかまわず向かってくるだろう。
気になることがひとつある。
審判の判定である。
韓国戦でも主審はアメリカ人であったが、日本の締めくくりに出てきた岩田投手の投球動作を「ボーク」と判定していた。古田も言っていたが、主審がまだプレーをかけていないので、岩田が一度プレートをはずしたところ、ボークを取られたのだという。こういう摩訶不思議な判定が、これからアメリカにわたると随所に見られるに違いない。前回のWBCでも、日本対アメリカ戦で、日本のタッチアップに対して、アメリカの審判は明らかに誤審をしていた。誤審というより、わざとである。
前回アメリカは、日本戦のみならず、メキシコ戦でも目に余る審判のアメリカびいきがあり、メキシコはそれに涙を飲んだ。怒ったメキシコは、決勝トーナメント進出の可能性がなくなってからのアメリカとの再戦で、死に物狂いでぶつかり、世界中が驚くまさかの勝利を収めた。そのおかげで、決勝トーナメント進出が絶望視されていた日本が、回り回って出場権を獲得し、最終的には準決勝で韓国を破り、決勝では、アメリカに勝ったキューバと対戦して、WBCの初代チャンピオンになったのである。奇跡の優勝、と言っていい。
これからアメリカでの試合は、審判に要注意である。特に前回優勝の日本はマークされている。日本におめおめ連覇させるわけにはいかないと思っている。あまり判定にこだわると、前回の星野監督のように「審判のせいにするな。おまえの采配が悪かったから負けたのだ」などと言われるかもしれないけれど、それでも、審判の判定が試合を決めることにもなるのだから、大きな問題だ。
星野といえば、昨日、彼が試合を観戦しているところがテレビに映っていた。
もう日本代表の野球など、二度と見に来ないかと思ったら、そんなこともないのだな~。日本がなんと14点もとって、宿敵にコールド勝ちをしたシーンを目の当たりにして星野はどう思ったのか…?
「イチローや松坂、城島らがいるのだから、強いのは当たり前じゃ」
たぶん、そう思っているんだろうな~。ふてくされながら…。
ではまた、明日、再び日韓戦を楽しみに。
本日はこのへんで