ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

ロシア語翻訳家の三浦みどりさんが亡くなりました

2012-12-15 | 日本文化情報センター
 ロシア語通訳で翻訳家の三浦みどりさんが12月13日に亡くなりました。
 三浦さんはベラルーシのドキュメンタリー作家アレクシエーヴィチを日本に紹介し、 『アフガン帰還兵の証言』(日本経済新聞社)『ボタン穴から見た戦争』『戦争は女の顔をしていない』(群像社)を翻訳しました。アレクシエーヴィチ来日の際には通訳をつとめています。

 チェチェン紛争にも早くから関心を寄せて少数民族への共感を示し、プリスターフキン『コーカサスの金色の雲』(群像社)やポリトコフスカヤ『チェチェン やめられない戦争』(NHK出版)の翻訳を出しました。

 また、石井桃子著『ノンちゃん雲に乗る』をロシア語に翻訳、ロシアで出版したほか、新美南吉の「手袋を買いに」も露訳し、日本の優れた児童文学をロシア語圏に紹介しました。
 チロ基金は三浦みどりさんのおかげで、このロシア語版「ノンちゃん雲に乗る」をベラルーシの子どもたちに紹介することができたのです。
 詳しくはHP「ベラルーシの部屋」内「ノンちゃんをベラルーシの子どもたちの手に」運動についてご覧ください。

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/books/non.html


 三浦さんから最後にメールをいただいたのは去年の10月末。ちょうど「自分と子どもを放射能から守るには」の日本語訳が出版され、世界文化社の招きで著者のバベンコさんと出版記念講演会のため来日した後でした。
 三浦さんが講演会の動画をネット上でご覧になったというメールがその後届きました。そのときの私のつたない通訳を

「立派な通訳振り、友好運動からはいるとなかなか プロの通訳というドライな割り切りというか厳しい通訳に育たないことがおおいのに、 辰巳さん立派でしたね。 聴く人を思いやるわかりやすい日本語は事情を良く知っている人であるだけでなくやはり、日本語をたくさん書いたり人に伝えようという活動を重ねていらっしゃる そのおかげですね。 あらためて敬意を表します。」

 とほめてくださっていました。私は「三浦さんにほめられるなんて信じられない。」と思いましたが、この言葉が大変励みになりました。
 またそのときのメールはこのような言葉で終わっていました。

「当方、体調を大きく崩してまだ静養中ですがすこしずつ光がみえてきています。 がんばります」

 三浦さんが体調を崩されていることは知っていたのですが、まさか64歳の若さで亡くなられるとは思っていませんでした。
 まだやり残したお仕事もたくさんあったでしょう・・・

 いただいた著書の『無手勝流ロシア語通訳-ジグザグ道をまっしぐら』(ユーラシア・ブックレット)をこれからも読み返し、私などまだまだ足元にも及びませんが、三浦さんが通訳として伝えようとされていたことを受け止めて進んでいきたいと思っています。

 心より三浦さんのご冥福をお祈り申し上げます。


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 追記です。12月18日より日本文化情報センター内で三浦みどりさんの追悼展を行っています。
 日本文化情報センター所有の三浦さんの翻訳作品を中心に展示しています。(画像は展示のようすです。)
 当館貸し出しコーナーにはスベトラーナ・アレクシエーヴィチの作品が全作そろっているので、そのうち三浦さんが翻訳した作品も展示しました。
 ロシア語原作本と日本語訳本の両方を展示しています。
 日本語訳のほうは全て三浦さんご自身から寄贈していただきました。
 せっかくなので、まとめて「スベトラーナ・アレクシエーヴィチと三浦みどりコーナー」をセンター内に作りましょうか? と提案したことがあります。そのとき三浦さんからは「アレクシエーヴィチのコーナーを作るなんてナンセンスです!」と叱られたので、この提案は消えてしまいました。
 亡くなってからこのコーナーがこのような形で実現することになり、複雑な心境です。
 

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