電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ドヴォルザークの交響詩「水の精」を聴く

2010年05月01日 06時22分00秒 | -オーケストラ
ドヴォルザークは、9曲の交響曲を完成した後に、4曲の交響詩を集中して書き上げます。作品107から作品110まで、「水の精」「真昼の魔女」「金の紡ぎ車」「野ばと」です。いずれもチェコの詩人で民俗学者であるエルベンの詩に触発されて作ったのだそうで、「本当は怖いグリム童話」みたいに、幻想的ですがちょっと怖いお話が題材となっています。その第1曲「水の精」。アメリカから帰国した翌年の1896年に作曲されているそうで、作曲者は55歳。CD に添付のリーフレットによれば、ストーリーはこんなふう。

月光に照らされた湖上のポプラの木に座り、恐るべき力を持つ水中の支配者ヴォドニーク(水の精)が、翌日の自分の結婚式にはく赤い靴を縫っています。
そこへ、呪われた金曜の夜に洗濯にいくのはやめるように引き止める母親の言うことをきかずに、森の娘がやって来ます。娘はヴォドニークに捕まり、湖底に連れ去られて彼の妻となります。やがて二人の子供をもうけますが、湖底の生活は幸福ではありません。里帰りを望む妻に、ヴォドニークは子供を置いていくことを条件に、一日だけの帰郷を許します。
母親が娘を引き止めるもので、妻が帰らないことを怒った水の精ヴォドニークは、激しい嵐を起こして母娘を威嚇し、最後には子供を二つに引き裂いて小屋の入り口に投げつけます!

いやはや、なんともすごいストーリーです。ドラマティックではありますが、ドヴォルザークはなんだってまたこういう物語を音楽にしようとしたのでしょうか。
ブラームスの死後間もないころ、交響曲にはついに戻らなかった晩年のドヴォルザークは、いったい何を考えていたのか。たいへん興味深いところです。

演奏は、ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、1977年2月~3月初めにかけて、プラハの芸術家の家で収録されたスプラフォンのアナログ録音です。当時、指揮者ノイマンは57歳、働き盛りです。このCDは、ノイマン没後10周年を記念して発売された2枚組で、型番は DENON COCQ-84041~2。
フルートやピッコロが印象的に活躍し、管楽器のセクションの動きが華やかです。アナログ録音最盛期のもので、録音はたいへん自然です。この頃はまだ DENON のデジタル録音はまだよちよち歩きで、ヨーロッパ録音で様々なホールでのオーケストラ録音のノウハウを吸収していた時期でしょう。一世を風靡した B&K マイクによるワンポイント・ステレオ録音は、これらの経験をもとに生まれたものと思われます。

写真は、我が家で水の精が生息するのであればここしかない、小さな井戸の春景色です。

【追記】
本日、5月1日は、そういえばドヴォルザークの命日でした。だいぶ前に流行った某作曲家占いによれば、当方の性格がもっともよくあてはまる作曲家はドヴォルザークなのだそうで。ありがたい限りです(^o^)/
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