電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高嶋ちさ子『ヴァイオリニストの音楽案内~クラシック名曲50選』を読む

2007年04月04日 06時41分05秒 | クラシック音楽
PHP新書で、高嶋ちさ子『ヴァイオリニストの音楽案内~クラシック名曲50選』を読みました。クラシック音楽の案内書はたくさんありますが、この本は、現役の演奏家が書いた、たいそう個性的な本です。なんといっても、ベートーヴェンの交響曲第5番の解説につけた題名が「しつこい男だね」、ヴィヴァルディの「四季」では「弾いていたのはコギャルたち?」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が「じつはノミの心臓の持ち主」といった具合で、全編が音楽家どうしの爆笑内輪ネタのノリで書かれています。「音楽評論家からはけっして聞くことができない名言、迷言が満載」という表カバー見返しの内容紹介は、ウソではありません。たとえば、パガニーニの24のカプリースの解説は、タイトルこそ「悪魔と契約した男」とフツーですが、

女性関係も派手で、離婚の際、莫大な慰謝料をふんだくられ(中略)、それ以降、お金にはかなり執着心が出てきたようで、お金に汚いヴァイオリニストというイメージもついてしまったようです(ちなみに私も母にそう呼ばれています。パガニーニと一緒なんて、誇らしい!)。

といった具合。

でも、曲目の解説の内容はたいへんわかりやすく、納得できます。たとえば「部活のちょっとしたご褒美に」と題したドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」の解説では、

ハイドン、モーツァルトが終わり、次のベートーヴェンに行く前に、ちょっとしたご褒美でチャレンジする曲、それがこの《アメリカ》です。若い学生にはたまらないノリノリのかっこいい曲で、最初聴いた時は、「これクラシックなの?ありえな~い」と思ったぐらいポップです。

といった調子。「アメリカ」がポップ?なるほど、そう言われてみれば、思わず引き込まれる旋律は、そんな要素があるかもしれません。推薦されているCDも、ブラームスのヴァイオリン協奏曲がオイストラフ(Vn)+セル盤だったり、二重協奏曲がオイストラフ(Vn)・ロストロポーヴィチ(Vc)+セル盤だったりして、興味深い選択です。

高嶋ちさ子さん、妻はテレビでおなじみだそうですが、残念ながらテレビをほとんど見ない私には、著者の世代は不詳です。でも、7歳当時の発表会の写真をみると、黄色いヘアピンと膝小僧がのぞく赤いチェックのショート・ワンピースを着ています。このオーソドックスで可愛らしいスタイルが流行したのは70年代だと記憶していますので、たぶん60年代末頃の生まれかと推理しました。さらに、81頁には決め手となる記述を発見。

「私も今年でロッシーニが音楽界から身を引いた年になります。」

本書が書かれた年が2005年ですので、ここから逆算すると、1968年生まれと推定できます。ワトソン君、やったね (^o^)/

残念ながら、まだ高嶋さんの実演に接したことがありませんが、機会があれば、愉快なトークと演奏を楽しみたいものです。写真は先月の送別会の会場にて。
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4 コメント

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高嶋ちさ子 ()
2007-04-04 20:18:39
面白そうですね。いかにも高嶋ちさ子らしいと思います。と言ってもたまにテレビで見かける程度ですが。
まあ、かなり早口でおしゃべりが好きで、とても愉快です。お茶目な感じもあって、まあ、声が音楽家らしくないという人がいましたが、その点を除けば大変楽しいキャラクターですね。
弦楽の10名余かな、女性ばかりの合奏団を組織して・・・しかし、チェロはいなかったかも・・・活動している映像をテレビで見たことがあります。
丘 さん、 (narkejp)
2007-04-05 06:17:12
コメントありがとうございます。
>声が音楽家らしくない
家内もそんな感想でした。ふだんほとんどテレビを見ませんので、どんなキャラクターなのか、興味津々といったところです。しかし、ヴァイオリニストもキャラクターを云々される時代なのですね。恐るべし、テレビ時代(^o^)/
テレビッ子 (balaine)
2007-04-06 11:11:06
私はnarkejpさんと違って「テレビっ子」なので、かなり詳しいです。(^^;;;
高嶋ちさ子さんは、現在産休中です。昨年11月までは活動されていたようで、12月の山形での演奏会(めざましクラシック)はキャンセルされていました。
俳優の高島忠夫は叔父にあたり、高嶋政宏、政伸はいとこです。
子供の頃から凄く男勝りで、男の子と喧嘩してばかりいてあんな声になっちゃたとテレビで説明していたように記憶しています。
Mostly Classicの最新刊「5月号」は、高嶋ちさ子率いる「女子バイオリン十二楽坊」(?)が表紙を飾っております。
芸能界での活動も目立つので批判する向きもあるようですが、愛器ストラドの音色は素晴らしく、男勝りで「悪魔」とあだ名された性格も、大学の先輩に当たる飯森範親さんによると「と~っても女らしい人ですよ」と言う事でした。
balaine さん、 (narkejp)
2007-04-07 11:00:53
コメントありがとうございます。魔女を通り越して「悪魔」ですから、相当に気の強い女の子だったのでしょうね。本書のいたるところに、兄貴のいたずらに困った話が顔を出しますので、兄妹の仲が良かったのでしょう。
飯森さんの後輩にあたるのですか。それでは、いつかどこかで、飯森+高嶋コンビの爆笑トークと名演を聴けるかもしれないですね。楽しみにして機会を待ちましょう。

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