電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

池井戸潤『ロスジェネの逆襲』を読む

2015年10月10日 06時04分33秒 | 読書
文春文庫で、池井戸潤著『ロスジェネの逆襲』を読みました。いわゆる「半沢直樹」シリーズ第三作で、出向先である東京セントラル証券での活躍を描きます。本書には、ちゃんと人物相関図が掲載され、なるほどとわかりやすくなっています。

物語の始まりは、新興IT企業の雄である「電脳雑伎集団」から、ライバル企業「東京スパイラル」を買収したいと、アドバイザー契約の申し入れが来る場面からです。ここで、東京セントラル証券の生え抜き社員で、「電脳雑伎集団」の担当者ある森山雅弘の懐疑的な見解を無視して、銀行からの出向組である諸田祥一と三木重行らが買収スキームを検討しますが、電脳雑伎集団の平山社長は、東京セントラル証券を見限り、親会社である東京中央銀行の証券営業部に乗り換えてしまいます。

東京中央銀行の伊佐山泰二部長と野崎三雄次長のコンビの作戦は、東京スパイラルの経営方針をめぐって社長と対立した二人の役員から、30%の株式を時間外取引で獲得するだけでなく、救済者の仮面をかぶった刺客を送り込むことでした。刺客となったのは、PC周辺機器販売大手のフォックスで、創業社長の郷田行成は、経営上の判断ミスから、メインバンクである東京中央銀行の意向を受け入れざるをえませんでした。

ところが、東京スパイラルの瀬名洋介社長と東京セントラル証券の森山雅弘が高校の同級生で親友であったことから、事態は東京セントラル証券が東京スパイラルの側に立って、敵対的買収に対抗する構図に変わってしまいます。こうなると「倍返し」の舞台は、すっかりおぜん立てが整った感じです(^o^)/

このあとのストーリーは、例によって銀行側の悪役の悪事ではなくて、新興IT企業が時代を見誤らず生きのびる難しさを背景にしつつ、企業の粉飾を暴き出すものになっていきます。親会社vs子会社、生え抜き組vs出向組、バブル世代vsロスジェネ世代などの対立を織り交ぜながら、思わずドキドキの物語。たしかに多くの人々の話題にのぼる面白さがあります。なかなかおもしろく読みました。



ところで、日本初のウェブ検索ポータルサイトがアメリカの通販子会社に注目するという展開は、なにかモデルでもあったのでしょうか。まさか、GoogleとAmazonの創業期を日本国内を舞台に想定したのではないでしょうし(^o^;)>poripori


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