電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第4番《街の歌》」を聴く

2010年03月29日 06時14分01秒 | -室内楽
引越もようやく終わり、ホッとひといきの週末に、自宅のPCオーディオで、ずっとシリーズで聴いている(*1,*2,*3)ベートーヴェンの「ピアノ三重奏曲」から、「第4番Op.11《街の歌》」を聴きました。

この曲にはじめて接したのは、学生時代の NHK-FM 放送だったでしょうか。その後、ずいぶんブランクがあり、最近スーク・トリオの演奏で親しむようになりました。Op.1の三曲とはまた気分が異なり、本来はクラリネットとチェロ、ピアノの三重奏だそうな。クラリネットの代わりにヨゼフ・スークがヴァイオリンを奏しますが、なんとも豪華な「代わり」であるだけでなく、音楽としても若いベートーヴェンの姿が想像できる佳曲だと思います。当方、とくにこの、チェロがゆったりと歌い始まる第2楽章が好きで、よく聴いております。

第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ、4分の4拍子、変ロ長調、ソナタ形式。半音が印象的なユニゾンによる始まりから、ヴァイオリンが主題をメロディックに展開していきます。晴朗な気分の中でピアノが活躍し、やがて第2主題がチェロで奏されます。何度か繰り返しを行いながら、力強くコーダへ。
第2楽章:アダージョ、4分の3拍子、変ホ長調。ソナタ形式。いいですねえ、このゆったりしたチェロの出だし。チェリストも気分良く演奏できるのでは。できればナマで聴いてみたいものです。続いてヴァイオリンが旋律を奏し、チェロがそっと寄り添うと、こんどはピアノが同じ旋律を。ちょいとマイナーな気分に転じますが、すぐにもとのゆったりした気分にもどります。ワタシ的には実に幸福な五分間です(^o^)/
第3楽章:アレグレット、4分の4拍子、変ロ長調。《街の歌》というのはこの楽章の主題だそうです。CDに添付の解説によれば、作曲当時ウィーンで流行していたJ.ワイグル作曲のオペラ「船乗り仲間の恋人」の旋律を用いて、「九つの変奏と結尾」を構成した、とのこと。そう言われれば、なんとなくオペラのアリア風です。

1797年に作曲され、翌年に出版されたもので、ベートーヴェンが27歳のときの作品だそうです。ベートーヴェンの若い時代にかなりの紙幅を割いている青木やよひさんの『ベートーヴェンの生涯』によれば、ボンからウィーンへ出てきて五年、社交界に颯爽とデビューしながら他方では対位法などを地道に学習するなどの努力を重ね、前年の1796年にはベルリン旅行でプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルムII世に認められ、二曲のチェロソナタを献呈するなどしており、

波乱にみちたベートーヴェンの人生にとって、これは短い凪の時期であった。

とのことです。

そんな時期の、颯爽とした若い実力ある音楽家の自信に満ちた作品。とりわけ、モーツァルトの同ジャンルの作品と比較しても、チェロ・パートの充実が感じられるように思います。



1983年12月に、プラハの芸術家の家で収録されています。DENON のPCM/デジタル録音、CDの型番は COCO-70918 です。

■スーク・トリオ:ヨゼフ・スーク(Vn)、ヨゼフ・フッフロ(Vc)、ヨゼフ・ハーラ(Pf)
I=9'04" II=5'11" III=7'31" total=21'46"

(*1):ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」
(*2):ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第2番」を聴く~「電網郊外散歩道」
(*3):ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第3番」を聴く~「電網郊外散歩道」
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