電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『ワーキングプア~解決への道』を読む

2010年03月08日 05時57分40秒 | -ノンフィクション
ポプラ文庫で、NHKスペシャル取材班編『ワーキングプア~解決への道』を読みました。前回の記事『ワーキングプア~日本を蝕む病』(*1)の続きです。



本書の構成は、次のとおり。

I "非正規大国"~韓国
II "ワーキングプア先進国"~アメリカ
III 貧困の連鎖を防げ~イギリス
IV 模索する現場~日本
V 解決へ~つながり始めた人々
VI 今、この国がなすべきこと


前著では、「働いても働いても、もう生きていけない」という現実を、リアルに描いていましたが、今回は「解決への道」を探るものです。

韓国の章は、記憶に残るIMF危機を、非正規雇用を拡大し人件費を大幅に圧縮することで見掛け上乗り切った経緯とその後を描きます。
米国の章では、インドへのアウトソーシングで職を失ったIT技術者の姿と医療保険制度の問題点を描きながら、ノースカロライナ州における取組などに、ワーキングプア対策のセーフティネットづくりのヒントを示します。
英国の章では、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切る政策の試みを探ります。
世界のワーキングプアの現状と対策ルポを通じ、日本の現状に警鐘を鳴らしながら、では日本ではどうなのか、その例として、釧路市の取組を紹介しています。

前書及び本書を読み、夢中で生きてきた近年の社会変化の大きさを、あらためて痛感させられました。

そういえば、誰かにこんな話を聞いたことがあります。母親が病気になり、生活保護を受けていた母子家庭で、働きながら定時制高校に通いはじめた息子が、手にしたバイト代6万円から2万円を残し、生活保護基準を上回る分として回収されていたのだそうです。働けば自分も母親もその分だけ豊かになれるのではなく、いくら働いても二万円にしかならないのであれば、少ししか働かない方が楽です。もし事実だとしたら、将来ある若者に、働かない方が楽だと教えてしまう制度になってはいないのか。伝聞ですので、あるいは当方の勘違いなのかもしれませんが、たぶん学校の教育では解決できない、生きる姿勢の根本に関わる問題のように思います。

もしかしたら、自分もその境遇にあったかもしれない若い時代の危機を思うと、息子たちの世代が、未来に希望を託せる社会であってほしいと痛切に願わずにはおれません。

(*1):『ワーキングプア~日本を蝕む病』を読む~「電網郊外散歩道」
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