電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームス「交響曲第2番」を聴く

2009年01月11日 08時35分03秒 | -オーケストラ
先日、ふと気づいてしまった「交響曲第2番」軽視説。そういえば、ベートーヴェンの第2番も、ブラームスの第2番も、まだ記事にしていなかったことに気づきました。うかつなことでした。実は大好きなブラームスの「田園」交響曲、このところ、通勤の音楽でくりかえし聴いております。積んでいるのは、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による演奏と、先にMP3からオーディオCDに焼いた、ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団による演奏です。

第1楽章、アレグレット・ノン・トロッポ。低弦の上にホルンの音が響き、木管が答える田舎風の伸びやかな旋律が、やがて喜ばしい気分をもたらします。でも、ベートーヴェンの「田園」のような、開放的な喜びではなくて、チェロが奏する第2主題のように、どこか懐かしさや一抹の哀愁を感じさせるのが、やっぱりブラームス。それに、変奏が情緒的というよりも論理的な印象です。感情のストレートな発露を抑制し、ソナタ形式の鎧の中に整理することを好んだブラームスらしい音楽と言ってよいのでしょう。
第2楽章、アダージョ・ノン・トロッポ。やけに物寂しく孤独な始まりですが、やがて憧れるような、優しい旋律が高弦によって歌われます。
第3楽章、アレグレット・グラツィオーソ。1877年のウィーンにおける初演時には、聴衆の気質に合ったのか、繰り返して演奏されたというエピソードがあるとのこと。チェロのピツィカートに乗って奏される、出だしのオーボエの音からして、思わず聞き惚れる田舎風の魅力的な旋律です。もう一つの主題も、少し急いた感じではありますが、面白い。全体に、晦渋さのあるブラームスの音楽の中では、親しみやすく、いたわり合うような優しく美しい音楽といえるでしょう。
第4楽章、アレグロ・コン・スピリト。ソナタ形式。活力にあふれた音楽です。始まりは、おやおや、こんな調子で後まで続くのかな?と心配させますが、すぐに全管弦楽が旋律をお出迎え。以後、力感あふれる音楽となり、金管部隊も大活躍、最後は大いに盛り上がって盛大に終わります。実際の演奏なら、やんやの大喝采となるところでしょう。

楽器編成は、Fl:2, Ob:2, Cl:2, Fg:2, Hrn:4, Tp:2, Tb:3, Tuba, Timp, Str(5部) となっているそうで、ブラームスの交響曲としては、チューバの存在がやや珍しいかも。

1877年の6月から10月までの4ヶ月間に、一気に書き上げられたらしいこの交響曲は、第1交響曲のストレスや緊張感を一気に解き放つような伸びやかさがあります。ブラームス44歳、避暑を兼ねて滞在した、イタリア及び旧ユーゴ(今のスロヴェニア)国境に近い南オーストリアのケルンテン地方、ヴェルター湖(Worther see)畔にあるペルチャッハ(*)という村で書き上げられたそうで、ヴァイオリン協奏曲やヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」などもここで作曲されたのだとか。名曲の揺り籠のような村、ということになります。

演奏は、レギュラープライスで購入したジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団(CBS-SONY 00DC203-206)と、ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。セルは速い、という通念がありますが、ヤンソンスに比べてそれほど速くなく、むしろヤンソンスのほうが所要時間は短いほどです。セルは、第3楽章などはむしろあまりテンポを急かさず、響きがすっきりとしていながらも、なお憧れや懐かしさを感じさせる演奏を展開しています。ヤンソンスのほうは、表情が柔らかい、響きに奥行きが感じられるタイプの演奏。第4楽章などはけっこう速いテンポに感じられるほどで、2004年のライブ録音を元にした、320kbps と贅沢な MP3 形式のファイルは音質も良好で、聴衆の反応が良いのもよくわかります。

参考までに録音データを示します。ヤンソンスのほうは、UbuntuLinux 上の Real Player で再生して、タイム表示から引き算して求めたもので、ほぼ実演奏時間に近いものと思います。

■ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
I=15'35" II=9'07" III=5'40" IV=9'19" total=39'41"
■マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
I=15'11" II=9'06" III=5'05" IV=9'00" total=38'22"

写真は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管による同曲のLPレコードとCDによる全集、添付のリーフレットは、LPのジャケットを模したデザインとなっています。右中段、文庫本の下にあるのが、ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管による自作CDです。自宅のステレオ装置で聴いても、これはこれでなかなかいい音です。

(*):Pörtschach(ペルチャッハ)の案内(ドイツ語)
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