電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

恩田陸『夜のピクニック』を読む

2006年10月20日 20時53分13秒 | 読書
東京駅で山積みになっていた、恩田陸著『夜のピクニック』をようやく読みました。
高校生活最後の歩行祭、学校を出発し少々の仮眠を取っただけで往復80kmを歩き通し学校に戻る、ただそれだけの行事の一部始終が淡々と語られます。往路はクラスごとの集団歩行。その中で伏線として語られるのが、少年と少女の生い立ちです。異母兄妹が同じ高校の同じクラスになり、互いに意識しながら反発のために口もきいたことがない状況にあり、しかし二人の不自然さに級友は気づいている。この歩行祭の復路、自由歩行をきっかけに、せめて自然に話ができるようになりたい、という願いがかなうまでの、ゆったりした和解の物語です。もっとも、これが物語と言ってよいのかどうか。
作者のことはよく知りませんが、たぶん比較的若い人なのだろうと思います。「ウォーターボーイズ」「スゥイング・ガールズ」などと共通するものを感じます。殺人もラブシーンも大金も権力も登場しない。肩をいからせた事大主義からはだいぶ離れた価値観だから、そんなふうに感じるのでしょうか。
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