電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

チャイコフスキー「弦楽セレナード」を聞く

2006年06月13日 21時48分39秒 | -オーケストラ
チャイコフスキーの弦楽セレナード、ハ長調、作品48を、小規模な室内オーケストラではなく、大オーケストラの弦楽セクション総動員で演奏したらどうなるか。その実例がこれです。カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。

第1楽章、アンダンテ・マ・ノン・トロッポ~アレグロ・モデラート。ゆるやかなテンポで、荘重な序奏が演奏されます。この出だしの弦楽の音が、実に豪華で華麗で濃厚に響きます。あぁ、カラヤンだなぁ、と感じます。
第2楽章、ワルツ、モデラート、テンポ・ディ・ヴァルス。華やかな夜会を優しく彩るワルツの音楽です。大オーケストラの弦楽セクションが、軽やかさを精一杯演じて見せてくれます。
第3楽章、エレジー、ラルゲット・エレジアコ。いかにも映画の名場面に使われそうな、甘美で切ない音楽です。でも、テンポ自体はそうゆっくりではありません。
第4楽章、ロシアの主題による終曲、アンダンテ~アレグロ・コン・スピリート。ゆるやかな序奏のあとで、舞曲風の活発な音楽に転換します。最後に、第一楽章の最初にある印象的な序奏が回想され、全曲が閉じられます。

録音は、1966年の10月と12月といいますから、カラヤンとベルリンフィルの黄金時代と言って良いでしょう。ジョージ・セルがベルリンフィルを振った後でクリーヴランドに戻り、ベルリンフィルのような豊麗な音は出せるか、と聞いたそうです。そうしたら、豊麗な音を出せる奏者をみな落とし、16分音符を正確に演奏できる奏者を入団させてきたのはボスじゃないか、と笑われたそうな。逆に、クリーヴランド管のヨーロッパ楽旅に際し、セルの楽器を振ったカラヤンがその高機能性に驚嘆し、後でベルリンフィルに執拗に細かいパッセージを繰り返し練習させたとか。相手にあり、自分にはないものの発見を通じて、逆に自分自身の持つ美点を理解した、ということなのでしょう。端的に言うと、精妙なリズムのセル、豊麗なレガートのカラヤン。

■カラヤン指揮ベルリン・フィル、(ドイツ・グラモフォン、POCG-9693)
I=8'43" II=3'56" III=8'43" IV=7'17" total=28'39"

参考までに、フィリップ・アントルモン指揮のナクソス盤の演奏データを示します。こちらもたいへんに素敵な演奏です。
■アントルモン指揮ウィーン室内管弦楽団、(ナクソス、8.550404)
I=9'29" II=3'50" III=9'07" IV=7'46" total=30'10"
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