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評価 

(3点/5点満点)
池上彰さんが2019年11月にとある中学校で「働く」ことについて授業をされた内容をベースに編集。
そういう意味で、働くことの意味を考えてもらう本となっています。
合わせて、コロナで働き方がどのように変わるだろうかという視点も盛り込まれています。
池上さんが子どもの時からどんな夢を持ち、どんな道を歩んできたのかは、テレビでもあまり紹介されておらず面白かったです。(P.180~193)
私の場合は、小学校6年生の時に出合った1冊の本が人生を決めました。地方で働く新聞記者のドキュメンタリーの『続 地方記者』という本を、たまたま家の近くの本屋で見つけ、自分の小遣いで買ったのです。この本を読んで「面白いな」と思いました。「よし、将来、地方で働く新聞記者になりたい」と思ったのが小学校6年生の時でした。
中学では天文気象部に入りました。私は、自分が天気予報を出したい。あるいは、台風が来た時に台風に対しての注意を呼びかける。そんな仕事をしたい、と思って気象庁の仕事に憧れたのです。(しかし)気象大学校の入試は数学と物理の比率が高いという、バリバリの理科系であることがわかったのです。数学も物理もこの成績ではとても気象庁は無理だ、となって気象庁の夢を断念せざるをませんでした。
あさま山荘事件をテレビで見ていて私は、これからは新聞よりはテレビの時代かもしれないなと思うようになりました。NHKに入社すると必ず地方勤務になり、地方記者から始まることを思い出しました。NHKを受けて地方記者から始めるという手もあるな、と考えたわけです。
ほかの人はみんな都会に行きたがるわけです。札幌だとか、仙台だとか、名古屋とか大阪とか福岡とか、そういうところに行きたいという希望が多い中で、「小さな町の放送局に行きたい」なんて希望をする者はほかにいないのでないかと考えたのです。「君の希望はかなったよ」と言われ、島根県の松江放送局に赴任することに決まりました。
今度は「山陽側の通信部に行きたい」という希望を出しました。通信部というのは、県庁所在地から離れた山の中だったり、海辺だったり、そういう小さなところに住み込んで24時間365日、その地域で何か起きたらカメラを持って取材に行くという仕事です。通信部に行きたいという人は、なかなかいないので、「君の希望はかなったよ」と言われ、広島県の呉通信部に赴任が決まりました。
今度は東京の報道局社会部に行くことになりました。そして、よりによって警視庁捜査一課担当です。殺人、強盗、放火、誘拐の専門記者になったのです。
そのあとは気象庁の担当です。気象庁の予報官にはなれなかったけど、NHKの記者として気象庁から中継をしている。ああ、自分の中学生の頃の夢がある意味でかなったんだなと、こう思ったのです。
NKKを辞めたあと、いくつかの新聞にコラムの連載をするようになりました。新聞記者にはなれなかったけど、新聞にコラムを連載している、と思ったのです。
ずっと夢を持っていると、ふと気がつくと似たような仕事をできていることがある、ということです。
池上さんご自身の働き方を振り返りながら、将来どんな働き方をすればいいのか、悩み多き若者の皆さんに向けてのメッセージです。
ただ若者だけでなく、コロナの状況も踏まえて「どんな働き方をすればいいだろうか」という観点で、多くのビジネスパーソンが読めると思います。
【my pick-up】
◎日本人はなぜ働きすぎるのか
ドイツ人の働き方を見ると、勤務時間中は休憩を取ることなく、猛烈に集中して仕事をします。残業をすると、「仕事の能力が低い」と思われてしまうからです。日本ですと、残業をしていると「熱心に働いているな」と評価されがちですが、ドイツでは、「どうしてそんなに時間をかけるのか。仕事が遅いんだな」と思われてしまう。こんな国民意識の違いがあります。決められた時間で生産性を上げているドイツを、日本は参考にすべきではないでしょうか。