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評価 


(4点/5点満点)
著者が提唱する「識学」とは、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるか、その方法を明らかにした学問です。
錯覚の例としては、「雰囲気がよくなるから成果が出るのではなく、成果が出るから結果的に雰囲気がよくなる」。
この本は、そんな識学のメソッドをもとに、若手リーダーに向けてマネジメントのノウハウを伝えるものです。
まず、若手リーダーに知ってもらいたいことは、「プレーヤーとして優秀だった人であればあるほど、リーダーとして失敗するリスクを抱えている」ということ。
ほとんどの仕事において、プレーヤーとしての能力は、30代をピークに、年をとるごとに落ちていく。手足となるような現場の人材は、若ければ若いほうがいい。出生しないと逆にツラくなってくる現実にも目を向けるべき。
リーダーがフォーカスすべきなのは、「ルール」「位置」「利益」「結果」「成長」の「5つのポイント」だけ。他のことを考えないようにすることを、本書では「仮面をかぶる」と表現する。
リーダーの仮面をかぶって仕事を進めて、人から嫌われたとしても、それはあなたの人格が否定されたわけではない。いちいち落ち込む必要などない。
「ルール」:場の空気ではなく、言語化されたルールをつくる
「位置」 :対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする
「利益」 :人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす
「結果」 :プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る
「成長」 :目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ
マネジメントにおいて、「いい人」といった人間的魅力は不要だとする。一見無機質に思えるが、成果を出すための仕組みを正しく構築する上で納得できる内容。
スピードを速くするために、部下に最初から正解を教えたり、手取り足取り教えたりしてしまう考え方はNGです。
【my pick-up】
◎識学の考え方の中に「人間関係」という概念はない
上司は上司の役割をし、部下は部下の役割をする。ルールに則って規則正しく動く。ただ、それだけです。そこに余計な感情は発生しません。だから、精神的に疲れることはないのです。感情で動いている組織では、リーダーが部下に好かれようとします。逆に部下もリーダーに好かれようとします。すると、「人間関係」の問題が出てくるので、疲れてしまうのです。
◎黙々とやり続けて結果を出せば、時間差で部下たちは気づく
チームが成長するかどうか。それは、リーダーが感情的に寄り添うことをやめられるかどうかが鍵を握っているのです。
◎1on1は「位置」を間違えたダメな方法
部下に寄り添うことが、マネジャーとして求められている役割だと勘違いしていたのです。自分が部下だったときのことを思い出してください。寄り添うことなんて、求めていなかったはずです。できなかったときの言い訳を聞いてほしいから、「話を聞いてくれるリーダーが求められてしまう」のです。つまり、寄り添うリーダーが、成長の止まっている状態を正当化してしまいます。
◎「日報による管理」に切り替える
日報による管理では、数値による管理をします。「頑張ります!」などのプロセスを書く欄を設けずに、数値化した事実だけを書かせるようにしましょう。ここで大事なのは、「日報は、日記ではない」と伝えることです。特に若い人は、日報と日記の区別がついていないことが多いです。部下が日報に「感想」を書いてきたときは、日記ではないことを伝えて指導しましょう。
◎「360度評価」はいらない
部下が上司を評価する「360度評価」という試みがあります。もちろん私は、このやり方には反対です。「評価」とは本来、「目標を達成できているかどうかを判断する行為」です。目標を決める権限がない人が、責任ある立場の人間を「評価」すつことは矛盾してします。評価は「責任」がある人にしかできません。部下からの評価は、すべて「無責任な感想」です。