
amazonへのリンクはこちら
評価 (3点/5点満点)
この本のテーマは「日頃の私生活で自然と行っているクリエイティブな発想や行動を、なぜ仕事では行わないのか?」というものです。
クリエイティブな発想法とは、斬新なものの見方や新しい企画を生み出す思考法を意味します。そうした発想力をいかに誘発することができるかについて考えてみたのが本書のもくろみです。
多くの人間は、仕事では論理を重要視して、本能や勘などというものを働かせてはいけないというふうに考えてしまうようです。しかし、勘というものは、多くの場合、過去の経験に裏づけされて自然と取捨選択をした結果であり、それほど非科学的なものではありません。
そこで唯一必要なのは、問題意識(=興味)。問題意識さえあれば、脳の中で特定の情報に印(レ点)をつける行為はスムーズにできるはずです。
著者は早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成さん。右脳を実際に使ってユニークな発想をする方法について書いた『スパークする思考』(2008年)を時代に合わせて事例等アップデートした1冊。また、2018年に出版された『右脳思考』の具体的な方法・ノウハウを紹介したものとも言えます。
本書の巻末には、一橋大学ビジネススクール教授・楠木建さんの解説が掲載されています。
・内田さんの本がよくある情報整理術の本と決定的に違うのは、「情報」(information)そのものではなく、むしろ人間の「注意」(attention)を相手にしているところだ。
・脳内でレ点を打つというのは、すなわち情報を注意に変換するということだ。
・この本の内容を1行で整理すると、「20ぐらいの引き出しを頭の中に持ちましょう。以上」。
・本当に大切な情報であれば、5個ぐらいレ点がついてとっくにインプットされているわけで、すぐにアウトプットの生産ラインを動かすべきだ。
・内田さんの言う20の引き出しというのは、ようするに「情報遮断装置」である。引き出しに引っ掛からないものは無視する。
【my pick-up】
◎脳にレ点を打つ方法
読んでいる本や雑誌がおもしろければ、まずは該当箇所に線を引く。とにかく手を動かすことと、視覚に訴えることである。その後は、なにもしないし、忘れてよい。そういうことを行ったという行為そのものが、頭の中のインデクシング(インデックスすなわち見出しあるいは索引をつけること=レ点を打つ)につながるわけだ。
◎しゃべる、書く、歩き回る
ポイントは喜怒哀楽の感情を重視すること。好き嫌いも個性であり、差別化には重要な要素だ。普通は、ビジネスに好き嫌いは持ち込まないように教えられるかもしれないが、これは顧客対応の話ではない。企画には、大いに好き嫌いや怒り、喜びといった感情をぶつけるべきだと私は思っている。ただ、大事なのは嫌いとか怒りといったマイナス面での感情ではない。むしろ重要なのは、喜びや、ワクワクする感覚だ。心から自分がおもしろいと思える企画を発想できたら、これに勝る喜びはないであろうし、そういうときのほうが、文字どおり、いい企画に発展する可能性は高いものなのだ。
◎公私混同のススメ
私が強く主張したいことは、多彩にしてクリエイティブなあなた本来の姿、生き方、ノウハウをなぜ仕事にも活かさないのかということだ。普段のやり方、オフタイムの常識を仕事にそのまま持ち込もうではないかと強調したい。つまり、公私混同だ。それが差別化された斬新なアイデアを生むためには最も重要なことなのだ。公私混同をして楽しむ。プライベートなオフタイムの方法論を仕事にも持ち込んで、他に抜きんでる人材になる。こんなにハッピーなことはないと思う。
◎作業を仕事と勘違いしていませんか
仕事と作業は違う。仕事は目的を成し遂げることをいい、作業とはその仕事を成し遂げるために必要な手段のことである。エクセルは使えるが新しいことが提案できない人間と、エクセルは使えないが新しいことが提案できる人間のどちらを経営者が引き上げるだろうか。作業ができる人間と仕事ができる人間とは違うということだ。