評価 (3点/5点満点)
会社からは「いらない」と言われ、国からは「働き続けてくれ」と言われる。この板挟みのような状況で働き続けるのが、今の中高年の労働者です。
この本では、中高年が抱える4つの問題、「働かない」「帰らない」「話さない」「変われない」に沿って、中高年問題を解剖してきます。
「働かない」
「働かない」問題の核心は「モチベーションがない」ことではなく、「モチベーションのエンジンが組織内出世に偏ってきた」ことによる「代替性のなさ」のほうにある。
「帰らない」
「職場」と「家庭」に分離されて、それが男性/女性という性別に偏り続けていること、そして職場と家庭「以外」の第3の場所が欠落していることが、「帰らない」男性問題の根底にはある。
「話さない」
交流からも対話からも遠ざかり、話したとしても自己開示しないという「量と質」の面でのコミュニケーションの希薄化は、自己を明確化し、セルフ・アウェアネスを向上させる機会を奪う。
「変われない」
中高年の組織内でのパフォーマンスを左右するのは「会社への愛着」や「出世できる見込み」といった組織に対する思いではなく、「変化適応力」である。
本書を読むと、働く中高年の様々な問題が、多くの社会的環境によって作られていることが分かります。
特に、「働かないおじさん」問題がなぜ繰り返されるのかという問題の背景には、「変えられない人材マネジメント」の現実が大きく横たわっているのですね。
【my pick-up】
◎企業はどうすればいいかー対話型ジョブ・マッチング機能の構築
マッチングのシステム全体が最終的に目指すところは、「動き続ける」ということを社内の「当たり前」に、「動かない」ということを従業員の「選択」にすることです。
「長くて平等な出世レース」から降りることができず、そのプライドから人に「自己開示をしなくなり」、結果的に「自らの興味を閉じてしまう」というスパイラルが変化適応力を下げます。
◎仕事の向き合い方を変えることは転職への備えになる
「目の前の仕事」に対して、工夫などの作業の面、関係する人の面、やりがいといった認知の面から、自ら領域を広げていくことは、中高年にこそ必要です。
◎私たちはどう転職すればよいか
転職後には、転職者自身が「即戦力」になりたいと思うほど周囲からのサポートを受けていない。そうした気負いを解除し、転職後には積極的な学習棄却(アンラーニング)によってそれまでの仕事習慣を変えていくことが必要になります。