評価 (3点/5点満点)
データサイエンスと呼ばれる技術の結集をもとに築かれたマシンインテリジェンス(機械知能、MI)を利用すれば、これまで覆い隠されていて不明瞭だったいくつもの規則性、変則性、関連性が見えてきます。
未来で成功する新たな組織は「マセマティカル・コーポレーション(MI活用組織)」。過去が分析論とビッグデータの時代ならば、未来はマセマティカル・コーポレーションの巨大な知性(ビッグマインド)の時代です。ビッグマインドは人工知能の数理に基づく知性と、人間の想像力豊かな知性とを組み合わせることで生まれるもので、それは組織の業績をさらに飛躍させます。
マシンと連携して仕事を進めるために必要な思考能力の伸ばし方、大量の新たなデータが秘めている可能性に対する固定観念を打ち破る方法、次のレベルに到達するための新たな技術を用いた組織強化方法、さらにどんな難題であろうと卓越した結果をもたらすためのかつてはありえないと思われていた戦略の立て方、この本ではこうしたスキルを身につける方法を紹介します。
<人間の頭脳がマシンより勝っている能力とは>
想像、創造、演繹的推論、帰納的推論、問題解決手法の構築
<データサイエンティストに求められる能力とは>
統計モデル構築、機械学習、専門領域の知識、チームワーク、コミュニケーション、問題解決、推論、創造力、好奇心、柔軟性、曖昧さへの耐性
<マシンインテリジェンス時代のリーダーシップを向上させる7つのメッセージ>
複雑さは重荷ではなく恩恵である、マシンは直感より信頼できる、マシンモデルはメンタルモデルより優れている、解決策に理屈はいらない、与えることで価値を創造する、経験なしで飛躍する、完璧なスタートはそうでないものに勝てない
マセマティカル・コーポレーションは、マシンとリーダーが協力して互いの最高のものを引き出す組織です。本書によって、マセマティカル・コーポレーションを率いるためのリーダーの能力を、より迅速に身につけられると思います。
【my pick-up】
◎「訳者あとがき」より抜粋
本書の著者ジョシュ・サリバンとアンジェラ・ズタヴァーンは、世界屈指のコンサルティング会社ブーズ・アレン・ハミルトンにおいて500人以上を擁するデータサイエンティスト集団を育て上げ、そのリーダーとして活躍しているデータサイエンティストである。ふたりが目指しているのは、ブーズ・アレン・ハミルトンも含めたあらゆる組織を、人工知能やコンピュータサイエンスといったさまざまな分野からなる「マシンインテリジェンス」を活用して飛躍する「マセマティカル・コーポレーション」に進化させることである。
本書はふたりの著者が、マセマティカル・コーポレーションを築くために必要なものは何かを考え抜いてきた記録であり、その思考に基づいた実践の結果が数多くの事例として紹介されている。
まずは、マシンインテリジェンスに人間が操られるのではなく、人間がマシンインテリジェンスの能力をフルに活かすマセマティカル・コーポレーションの、リーダーに求められる能力は何かを探っている。また、リーダーは次世代のデータサイエンティストを育てることも忘れてはならない。「このデータ収集方法は論理的に許されるのだろうか?」という判断を、どのように行えばいいのだろうか?さらに、マセマティカル・コーポレーションのリーダーは、自身が率いる組織の利益のみを追求するだけではなく、社会全体をよりよくするためにはどうすればいいのかも考えなければならない。
なお、マセマティカル・コーポレーションのリーダーは、必ずしもデータサイエンティストなどIT関係の専門家である必要はない。一方データサイエンティストは、扱うデータの分野について、詳しい知識を持っている必要はない。リーダーデータとサイエンティストが、複雑なビッグデータとマシンインテリジェンスを介して起こす化学反応で新たな見識を手に入れられる。