評価 東大大学院(情報理工学系研究科)教授で、東大グリーンICTプロジェクト代表の江崎浩さんが、ピーク時の使用電力で30%節電という実績をあげることができた、東大での節電の取り組みを紹介します。 その特長は、①「知恵」「創造」「成長」というポジティブ・スパイラルを目指す節電、②現場ごとに状況に応じて対策を練った「自律分散型の節電」、③節電に関する情報を「オープン化(見せる化)」したことにあります。 具体的には、以下のような取り組みです。 ・5つのキャンパスでベンダーごとに規格がバラバラでブラックボックス化していた使用電力量のデータを、東大グリーンICTプロジェクトで開発したオープン化を前提とした国際通信規格IEEE1888を活用して「見せる化」し、情報のベンダー主導をユーザー主導に変えたこと。 ・オープンな通信規格、IEEE1888をネットワークの基盤としたことで、後々、システムの再構築や新規アプリケーションに導入が容易なシステムを構築できたこと。 ・使用電力量のデータを「見せる化」したことで、東大の構成員一人ひとりが、自律分散的に行動できる環境を創り出せたこと。 ちなみに、東大は東京で一番エネルギー消費量の多い組織だそうで、年間の電気代は50億円。東京都内にある工場などの産業用施設を除く業務用施設の中で、東大の本郷キャンパスが一番CO2排出量の多い施設で、以下、日本空港ビルディング、サンシャインシティ、六本木ヒルズ森タワー、恵比寿ガーデンプレイスの順(2008年)となっています。 東日本大震災の後遺症によって、電力供給が不安定にならざるを得ない5年間で、節電の分野にインベーションが誕生するに違いありません。その際、トップダウンで物事を進めるだけではなく、この本で書かれているような一人ひとりの自律的な参画・行動が不可欠と言えるのではないでしょうか。 【my pick-up】 ◎緊急時には自律的な行動が欠かせない 日本の組織は、現場に対して、目標を達成するための方法や、そのための手段にまで細かく指示を出したがります。「全施設一律で照明を間引く」「全施設一律で空調の温度を設定する」という、2011年の夏に東京のいたる所で見られた光景がまさしく、これです。しかし、これでは、現場が状況に応じた判断を放棄してしまうため、最低限の目標を達成することは可能かもしれませんが、予想もしなかったほどの驚異的な成果を上げることはできません。 |