評価 (3点/5点満点)
この本の目的は、以下の2点です。
・「働くこと」に対する日本の皆さんの悩みは「外部環境の変化」によるものであり、決して「自分に問題がある」つまり自分自身が悪いわけではないこと
・激変する世界情勢の中で、食べていくために何をするべきかを浮き彫りにすること
日本人は、考え方自体は成熟した西欧州の国の人々に近いにもかかわらず、相変わらず労働時間が長く、長期休暇をほとんど取ることができません。つまり、本当は、成熟した国のような生活をしたいのに、働き方は、インド、ロシア、中国などの新興国に近い。(P.48)
日本で、幹部候補の社員以外にも定期採用が実施されるようになり、終身雇用や、職場への高い定着率が一般的になったのは、50年ほど前のことであり、それ以前は、働く人のほとんどはフリーターのような状態で、転職は当たり前、さらに、職場への帰属心も高くないのが一般的だったのです。つまり、働く人の自分商店化は、50年前の状態に回帰しただけであり、そもそも、終身雇用や働く人の多くが、正社員として、新卒で一括採用される仕組みの方が異常であった、ということがいえるでしょう。たかだか50年程度の歴史しかない仕組みが、「日本固有の雇用体系」といえるかどうかは疑わしいですし、戦後の高度成長期の産業構造に合わせて、最適化された雇用体系にすぎなかったというわけです。(P.195~196)
そもそもリモートワークでやるような仕事は物理的に物をどうこうすることではなく、知能を使って何か考えたりアウトプットすることです。アウトプットさえできればどこで何をしていようと、いつやるかも関係ないわけですから、各自のペースや気分によって仕事をすればよいわけで、オフィスに常時いるようなやり方を押し付けるのはまったく間違っています。(P.210~211)
著者の谷本真由美さんは最近、『世界のニュースを日本人は何も知らない1・2』がベストセラーになっていますが、本書は、特に若い方に向けて、自分の人生を本当に豊かにするには、どのように働くべきかを考えてほしいと願うものです。
【my pick-up】
◎臨機応変な対応にはことごとく弱い日本人
臨機応変な対応が必要な場面では、日本人の従順さや、上の人に逆らわない、杓子定規にやる、というキャラクターがマイナスの方向に作用します。思い切った決断、その場の問題を解決しようという瞬発力、お客さんへのサービス精神、終わりよければ過程なんてどうでもいいんだという大雑把さ、働く人もお客も会社も楽しくなるやり方、というのを考えつきません。
◎35歳転職限界説は日本だけ?
私がいたイギリスやイタリアでは、1社しか経験がないような人だと、様々な問題への対処が不可能なので、お呼びがかかりません。有能な人ほど経験社数(もしくはプロジェクト数)が多いです。日本の純血主義を喜ぶ文化とは正反対です。
◎ライフスタイルジョブという選択
正社員とはいっても、今や正社員は簡単に解雇できる対象である国が少なくないために、安定した雇用というのはないに等しいのです。いつクビになるのかわからないのなら、誰かに雇われるよりも、自分で何かやろう、もしくは、自分が本当にやりたいことに取り組もう、と思う人が増えても不思議ではありません。たとえ年収1000万円でも、労働時間が1日18時間、夏休みもない、業績評価が毎月ある、という生活では、人間らしい暮らしは無理でしょう。自分が幸せになるのは、自分が求めることに取り組むことであって、「周囲」が期待する役割を演じることではない。