ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

樹齢350年の古木のワイン+アルマーニ@伊大使公邸

2014-11-26 16:08:56 | ワイン&酒
今月、とてもユニークな体験をしました。
それは、樹齢350年を超える樹のブドウからつくられたワイン を飲んだこと。

イタリア大使館公邸で開催されたディナーで、リストランテ アルマーニの料理とともに、
樹齢350年の1本の樹から収穫したブドウでつくられたワイン VERSOALN(ヴェルソアルン) を楽しみました。


VERSOALN 2013 (Italy, Alto Adige IGT)

VERSOALN -ヴェルソアルン がブドウ品種の名前であり、ワイン名にもなっています。
産地は、イタリア北部のアルト=アディジェ州の南チロル地域のVal Venosta(Venosta Valley)。
ここはスイスとオーストリアの国境になります。

ヴェルソアルンは、たった1本のブドウの樹で、その樹齢が350年以上であることが、科学者の分析からわかっています。
350年の樹齢のブドウ樹は世界最古です。
※似たような樹齢のブドウ樹がスロヴェニアでも見つかっているとか

幹の太さは直径約32cm、枝は350平方メートル四方に広がり、栗の木で組んだ棚(ペルゴラ)に仕立てられています。
もう一度言いますが、1本のブドウの樹ですよ?

山梨県の勝沼を訪問すると、ブドウ園の庭先に大きく枝を広げて棚仕立てにした甲州ブドウの樹を見かけますが、あの状態のものが350平方メートル四方ですから、かなりの大きさです。
しかも、樹齢350年以上であるのに、毎年、600~700本のワインを生産できるほどの実を付けます。
※2014年のヴェルソアルンはやや収穫が少ないそうです

ヴェルソアルンのブドウの房はやや小ぶりで、粒の大きさは中程度、色はグリーンで、収穫を迎える頃には黄色がかった半透明の粒となります。

ということで、このブドウからつくられるのは白ワインです。
この日に飲んだ2013年ヴィンテージのアルコール度数は12%ありました。



肝心の味ですが、淡いイエローグリーンの色調で、白い花を思わせるフローラルな香り、柑橘やリンゴの香りが上品に感じられます。果実味にはデリケートなニュアンスがあり、酸味はややゆるめに思いました。ピノ・グリのワインに似たようなタンニン分もかすかに感られ、辛口ワインということですが、余韻に甘さを少し感じました。

サービス温度ですが、少し冷やし気味に飲み始めるのが良さそうです。
軽く何かをつまみながら、食事なら、シーフード入りのサラダ、レモンを絞っていただくあっさりしたものが合いそうです。



この日に合わせたのは、スカンピのエスカベッシュ

高樹齢の樹からは凝縮感のあるブドウが得られますが、このヴェルアソンの場合は、1本の樹で600~700本のワインをつくりますから、凝縮度は期待してはいけないでしょうね。

ヴェルソアルンのブドウ樹は、Prissianにある Castel Katzenzungen(カッツェンツンゲン城)の足元に広がり、2006年からはThe Gardens of Trauttmansdorf Castle(トラウトマンスドルフ城:2005年にイタリアで最も美しい庭園に選ばれ、2013年には世界で最も美しい庭園に選ばれた観光施設) により管理、運営されています。

このブドウからワインをつくっているのは、Laimburg Research Centre(ラインブルグ農林研究所)のワイン醸造所(Landesweingut Kellerei Laimburg/Laimburg Province Winery)です。
※県立農園であるラインブルグは、イタリアのワインガイドGambero Ross 2014にも掲載されています。

ということで、ヴェルソアルンのワインで乾杯し、ディナーが始まりました。



生のブドウ(イタリア産ではないと思われます)のテーブルデコレーションがステキでした

ヴェルソアルンの後には、同じくアルト=アディジェの白ワインが登場。


Pinot Bianco 2013 Nals Margreid
スペック ゴルゴンゾーラのフライ ビーツのヴィネグレット

ゴルゴンゾーラの塩気と、ミネラルと酸の骨格のあるピノ・ビアンコの組み合わせがよくマッチ。


LAGO DI CALDARO SCELTO "ÖLLEITEN" 2013 Landesweingut Laimburg
ストラッチ ローズマリー風味牛テールのラグー

ヴェルソアルンと同じラインブルグがつくる赤ワインで、品種はスキアヴァ。
これはかなり軽めの味わいでした。
ストラッチ(四角い薄いパスタ)のラグーが濃厚なので、ワインはもう少し強めのタイプの方がマッチしやすかったのではと思います。



赤ワインが注がれる頃にはさらにライトダウン


Lagrein Riserva 2011 St Michael Eppan
ローストした北海道産鴨胸肉 松茸ソース

熟成が進み、しっとりとした質感の赤ワインで、やや酸化したニュアンスも感じられましたが、脂の強くない肉料理との相性は悪くありませんでした。



ザッハトルテ





ゲストの半数以上がイタリア人で、参加者の顔ぶれもいつもと違い、見知らぬ方ばかり。
ジャーナリストも私を含めて片手で収まり、しかも他は私より年齢もポジションもかなり上の方々。
このような席になぜ私がご招待いただけたのか不思議でしたが、樹齢350年のワインを飲むという、いい体験をさせていただき、感謝です。



ヴェルアソンは、あまりにも高樹齢なので、いつまで実をつけてくれるのか気になるところですが、まだまだ頑張ってほしいですね。


現地では、ヴェルソアルンのブドウ樹と庭園を巡る特別なツアー“Garden & Wine”もあり、一般の観光客でも参加できますので、ご興味がありましたら、ぜひどうぞ。

■カッツエンツンゲン城のホームページ
 Castel Katzenzungen  http://www.castel.katzenzungen.com/en/

■アルト=アディジェのワイン協会  *ワイナリー巡りに便利
 Consortium of Alto Adige Wine  http://www.altoadigewines.com/en/home.html

コメント
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