クリスマスが過ぎ、一気にお正月モードに入ってきました。
スーパーに行くと、おせち用の食材がドーンと並んでいて、あ、あれも買わなくちゃと、なんだか気持ちが切迫してきます(笑)
普段はワインを飲んでいても、お正月のごちそうには日本酒、という方も多いかもしれません。
でも、最初はよかったこの組み合わせも、だんだんと飽きてくるんですよね…
そこで提案したいのが、日本酒とチーズのペアリングです。
日本酒にチーズを合わせるのは目新しくないですし、中でもうまみ系のハードチーズは日本酒に合うと以前からよく言われています。
ハードチーズも種類がたくさんありますが、これも日本酒とバッチリだわ~、と納得したのが、イタリアを代表するチーズのひとつ「パルミジャーノ・レッジャーノ」。
北イタリアの限定地域で生産された無殺菌乳と塩、天然の凝乳酵素だけを原材料とした大型のハードチーズで、ひとつが約40キロもあります!
EUの原産地呼称認定のDOP商品で、側面には必ず “PARMIGIANO REGGIANO”の焼き印 があります
ちょうど、11月末に、パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会からPR担当者のアンドレア・ロブスキ氏が来日し、パルミジャーノ・レッジャーノのプレゼンテーションを都内で行ないました。
パルミジャーノ・レッジャーノの基礎について説明するアンドレアさん
パルミジャーノ・レッジャーノは、アーモンド型の専用ナイフでひとくちサイズにかち割ったものをそのまま食べるのが、簡単で手っ取り早い食べ方です。
パルミジャーノ・レッジャーノの基本熟成期間は24カ月ですが、それ以上長く熟成させたものもあります。
熟成期間が長いと色が濃くなるのでは?熟成期間が長いほどいいのでは?と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、一概にそうとはいえません。
今回は27カ月熟成と36カ月熟成を食べ比べました
アンドレアさんによると、今回の27カ月熟成のチーズは、カロテンを多く含む夏の草を食べた牛のミルクから作られているため、色が濃くなります。
36カ月熟成のチーズは、冬の間、干し草を食べていた牛のミルクのチーズなので、色が白っぽくなります。
つまり、どの季節の草を食べていたか?で、チーズの色が変わってきます。
27カ月熟成のチーズは、まだソフトで弾力性があり、ミルクや溶かしたバターなどの乳製品の風味がまだ残っていますが、アミノ酸の結晶も見られ、甘みと塩気のバランスがちょうどよい状態です。
36カ月熟成のチーズは、ミルクの風味よりも、ナッツなどの凝縮した風味がより強く感じられます。白っぽいアミノ酸の結晶が大きくなっていて、うまみが乗り、ほろりとした口どけです。塩気は、27カ月よりも強く感じました。
私は、うまみたっぷりの長期熟成タイプも好きですが、若い熟成のミルクっぽいやさしい風味も大好きです。
それぞれの熟成の個性を味わうのが、熟成期間偏重に走らない楽しみ方でしょうか。
ホロホロ砕いたかち割りもいいですが、スライサーで薄く削ったり(写真奥)、おろし金で粉状にすりおろす(写真左)食べ方もあります。
スライサーを使うと、ふわっと空気が入り、それでいてチーズのしっかりした味も感じられ、かつ食べやすいので、これはいいなと思いました。
すりおろして粉状にしたものは、そのままつまんで食べてもいいですが、他の食材や料理の上にトッピングすることが多いかもしれませんね。
熟成の違うチーズ、削り方の違うチーズをテイスティングした後は、チーズプロフェッショナルの資格を持つフードジャーナリストの佐野嘉彦さんによる、パルミジャーノ・レッジャーノと日本酒のペアリング提案を体験しました。
佐野さんは以前からの知り合いで、ワインの取材先でよくご一緒しましたが、いつの間にかチーズの専門家になっていて、あちこちでご活躍されていて嬉しい限りです。
佐野さんがセレクトした日本酒は、高知県土佐の「桂月(けいげつ)」から3アイテムと、島根県出雲の「+旭日(じゅうじあさひ)」の1アイテム。
左)桂月 吟之夢 純米大吟醸 40 右)桂月 吟之夢 純米吟醸酒 55
フルーティーで軽やかな味わいの純米大吟醸は、ほわほわと軽~く削った粉状のパルミジャーノと相性バッチリ。
純米吟醸の味わいもふわふわしていますが、純米大吟醸ほどフルーティーではないので、スライサーで薄く切り出した、ほどよい噛み応えのあるパルミジャーノといい感じでした。
左)桂月 相川譽 山廃純米酒 58 右)十旭日 生もと純米 27BY
山廃仕込みのお酒は、天然の乳酸の力で発酵を促して造るそうなので、独特の風味、濃いうまみがあります。これに合わせるなら、粉状チーズでは力不足。ここはガツンと味わいの濃いかち割りのパルミジャーノを合わせるのがオススメ。
十旭日 生もと純米の「27BY」は平成27年なので、3、4年熟成させている生もとづくりの純米純米酒です。
生もとづくりとは、発酵のもとになる酒母をつくる際に、乳酸菌を加えずに一から育てる方法だそうで、非常に手間がかかりますが、濃厚な味わいなのにスッキリ感があるといわれます。
飲んでみると、これも独特の風味があり、濃厚~!
佐野さんによると、お燗して飲むのがオススメだそうです。
この「十旭日 生もと純米 27BY」には、チーズ単体でなく、
「パルミジャーノ・レッジャーノと日本酒のリゾット」を合わせました。これは合う!
パルミジャーノのリゾットは、通常はイタリアの白ワインGavi(ガヴィ)を加えますが、それを日本酒に置き換えています。ポイントは、野菜やチーズの皮で出汁を取ったブロードを使うこと。アクセントに明太子を添えています。
今回の料理は、イタリア料理家の板倉布左子さんが担当されました。
左から)
佐野嘉彦さん アンドレア・ロブスキさん 板倉布左子さん
上の料理は、佐野さんの晩酌の定番という「イタリアン冷ややっこ」
木綿豆腐に刻みオリーブを乗せ、オリーブオイルをかけ、削りおろしたパルミジャーノ・レッジャーノをパラリと振りかけています。
これは簡単!絹ごし豆腐でもいいそうですよ。
パルミジャーノを使った「イタリア風だし巻き卵」
パルミジャーノを混ぜ込んだだし巻き卵に、パルミジャーノ・レッジャーノの皮で出汁をとったスープを上からかけています。
パルミジャーノ・レッジャーノの皮はワックスや添加物を一切使っていないので、捨てずに活用できます。
旨味の宝庫ですから、前述のリゾットにも、皮で取ったスープを使っているそうです。
おせちにも卵料理の伊達巻がありますが、伊達巻はひんやり甘く、どちらかというとデザート的ですよね。
こちらは、削ったパルミジャーノを混ぜ込んでいるので、チーズ由来のやさしい塩味です。温かいスープをかけているので、ほっこり~
「桂月」の土佐酒造株式会社 代表取締役 松本宗己さんも臨席されました。
明治10年創業の蔵元です。標高350~600m、昼夜の気温差が15℃と大きく、豊かな水と澄んだ空気の高知県土佐町の山間に広がる棚田で、古来より良質な米作りが行われています。この自然の恵みを活かした酒造りが、土佐酒蔵の真髄とのこと。
私は初めてここの酒を飲みましたが、それぞれの特徴が明確で気に入りました。
もうひとつの旭日酒造は、縁起のいい出雲の酒。
お正月に飲むにはピッタリでしょうか
これまでは、パルミジャーノ・レッジャーノ=イタリアワインと、と何気なく考えていましたが、日本酒との組み合わせは盲点でした!
パルミジャーノ・レッジャーノのアミノ酸の結晶の旨味と、日本酒の旨味のひとつであるアミノ酸のことを考えたら、合わないわけがありませんよね?
我が家では、日本酒はあまり飲む機会がありませんが、次にパルミジャーノを手に入れたら、日本酒とのペアリングも試してみたいと思っています