【前編】 より続きます。
ルーションエリアのワイン生産量をザクッと紹介します。
[Dry Wine]
Cotes du Roussillon Red 74,784hl
Cotes du Roussillon Rose 103,736hl
Cotes du Roussillon White 6,805hl
Cotes du Roussillon Village Red 65,836hl
Collioure Red 9,729hl
Collioure Rose 4,151hl
Collioure White 2,320hl
IGP 3 colors 23,4263hl
AOCワインの中では、意外にもコート・デュ・ルーションのロゼが多いですが、全体的にみると、
赤ワインの生産量が多い地域といえるでしょう。
ブドウ品種は、
グルナッシュ・ブラン、マカブ、グルナッシュ・グリ、カリニャン、グルナッシュ・ノワール が主体です。
【前編】で紹介したように、
地形が変化に富み、土壌が多様なため、
多彩なキャラクターのワインがつくられています。
まず、4生産者の
白ワインから見て行きましょう。
左)
Clos des Fees VV Blanc 2011 (VDP Cotes Catalanes Blanc)
右)
Roc des Anges “Llum” 2011 (AOC Cotes du Roussillon Blanc)
「クロ・デ・フェ」 の白ワインは、グルナッシュ・ブラン90%、グルナッシュ・グリ10%。グルナッシュ・ブランの樹齢は100年以上!ゴブレ仕立てです。
石灰岩、粘土度石灰岩の土壌に畑が点在し(全体で30haの畑を所有)、白品種は2.5ha。
華やかなアロマがあり、完熟したリッチな味わいは、バターを使った料理にピッタリ。
「フレッシュで冷涼感のある白ワインをつくることもできる」と、ビズールさん。
「ロック・デ・サンジュ」 の白ワインは、グルナッシュ・グリ90%(樹齢70~100年)、マカブ10%。
白用の畑は5haで(全体で20haを所有)、土壌はシスト。
繊細なアロマと味わいが特徴的で、ふわりとした軽やかさがあり、料理は繊細なものがオススメ。
このワインには“光(ルミエール”という名前が付けられていて、「ワインの中にある明るさ、軽さ、透明感を感じてほしい」と、マジョリさん。
左)
Le Soula Blanc 2008 (VDP Cotes Catalanes Blanc)
右)
La D18 2008 Olivier Pithon (VDP Cotes Catalanes Blanc)
「ル・スーラ」 の白2008年は、ソーヴィニヨン38%、マカブ35%、ヴェルメンティーノ19%、グルナッシュ・ブラン6%、マルサンヌとルーサンヌ各2%。
22haの畑のうち10haが白用で、土壌は花崗岩とシスト。
ピュアで透明感があり、フレッシュ感、ミネラル感、キレイでスムースな味わいで、奥底に複雑味もあり、とてもいいバランスでした。
「アッサンブラージュのワインに興味がある。人が介在することで全体の調和を取ることができ、造り手がバランスを決められるのは面白い」と、スタンドリーさん。
「オリヴィエ・ピトン」 では、白7ha、赤8haで、ほぼ半々。土壌は石灰岩、マール、シスト。
“D18”は県道の名前。グルナッシュ・グリ70%、グルナッシュ・ブラン30%のブレンド。熟成感のある味わいで、非常に骨太。デリケートな味わいのル・スーラと比べると、まったく対照的で面白い!
「同じ品種、同じ土壌でも、つくる人が違うと、ワインの味わいも違ってくる」とピトンさんが言う通り、この2つのワインは、造り手2人のそれぞれの個性がよく反映されている?(笑)
スタンドリーさん(Le Soula) ピトンさん(Olivier Pithon)
「2008年は最高の年で、白はフレッシュな冷涼感がある。赤も素晴らしい年」と、ピトンさん。
ということで、
赤ワインを見てみましょう。
左)
Le Pilou 2009 Olivier Pithon (VDP Cotes Catalanes Rouge)
右)
Roc des Anges “Carignan 1903” 2011 (VDP Cotes Catalanes Rouge)
「ピトン」の“ル・ピルー”は
樹齢100年のカリニャン100%。
「ロック・デ・サンジュ」の“カリニャン1903”は
1903年に植えられたもの。よって、これも100年を超えるカリニャン100%。
土壌は、ル・ピルーが粘土石灰で、1903がシスト。
この2つを飲み比べてみると、ル・ピルーは酸が豊かで、かつ熟成感もあります。
1903はまだ2011年なので、若々しい紫の色調が見られ、フレッシュさがあり、テクスチュアはまろやか。
ロック・デ・ザンジュのマジョリさん
「ワインは人を反映する」というピトン説に当てはめると、ロック・デ・サンジュの味わいは、マジョリさんを映し出しているでしょうか?
左)
Le Soula Rouge 2008 (VDP Cotes Catalanes Rouge)
右)
Clos des Fees VV Rouge 2010 (AOC Cotes du Roussillon Village Rouge )
「ル・スーラ」 は、カリニャン55%、シラー35%、グルナッシュ10%。
「クロ・デ・フェ」 はグルナッシュ50%、カリニャン35%、シラー15%。
どちらも同じブドウ品種を使っていますが、ブレンド比率が異なります。
ル・スーラの土壌は花崗岩、片岩。熟成感が出始めていますが、酸がしっかりあり、エレガントなバランスが絶妙。
クロ・デュ・フェの土壌はヒルサイドの石灰岩、粘土。年が2年若いので、まだまだ硬く、タンニンがタフで、ガッチリパワフル。やっぱり造り手を反映している?(笑)
クロ・デュ・フェのビズールさん
「クロ・デ・フェ」は、「妖精が舞い降りた畑」 の意味。
メルヘンなドメーヌ名とビズールさんの雰囲気に、若干の違和感を感じますが…(笑)
こちらも「クロ・デ・フェ」のワイン。
左)テンプラニーリョ80%+カリニャン20% 右)カベルネ・フラン80%+メルロ20%
※どちらも VDP Pyrenees Orientales
VDP Cotes Catalanes Trigone 2010 Le Soula
シラー95%+カリニャン5%のフレッシュな赤で、プライスもお手頃。
Le Soula は、オック語(フランス南部の言葉)で、「太陽」(仏語ならSoleil)の意味。
南向きの畑をイメージしているそうです。
ドメーヌ・ゴビィ同様、ル・スーラも
バイオダイナミクス。
Olivier Pithon もバイオダイナミクスを実践
ピトンのコンセプトは
“楽しさ、バランス、軽快さ”
「セパージュとテロワールの関係をいかに早く理解できるか?が大事」
「カリニャンは土壌を素直に表現する品種」と、語ります。
「Roc des Anges」 は
「天使の岩」の意味。マジョリさんが見つけたラグリ渓谷の畑が、白い石英(水晶)を多く含んだ土壌だったことから名付けました。ブドウの平均樹齢は70年で、45%が樹齢95年以上という古木揃い。
ロック・デ・ザンジュも
バイオダイナミクスです。
マジョリさんは、2008年にもうひとつのドメーヌ
「Les Terres de Fagayra」(レ・テレ・ド・ファゲイラ) を夫とともに立ち上げました。
ここでは
酒精強化ワインをつくっています。
モーリーの北限の地に3.2haの畑を所有し、栽培は
オーガニック。
Maury Rouge 2010 Maury Blanc 2010
ルージュはグルナッシュ100%、ブランはグルナッシュ・グリ80%+マカブ20%。
平均樹齢は60年で、土壌はシスト、石灰岩。
ルージュはステンレスタンク発酵で、熟成も短め。やわらかく、まろやかで、アルコール度数17%を感じさせないキレイな甘さです。ショコラとのマリアージュがパーフェクト!
ブランはアルコール度数15.5%とやや低め。酸がきれいで、ミネラル感があり、ハチミツを思わせるリッチななめらかさもあります。こちらはブルーチーズと合わせてみたいですね。
彼らのように、情熱を持ってルーションを目指し、成功している生産者が、この産地の評判を押し上げてきています。
ルーションならではの個性あふれるワインは、ボルドーやブルゴーニュといった定番に飽き始めた人たちの心を刺激し、ビオやオーガニックワインが多いことやコストパフォーマンスの良さもあいまって、ひとつのトレンドとなってきています。
日本では、フランスワインに詳しい人以外には、「ルーション」という名前程度しか知られていないかもしれませんが、この機会にぜひ覚えておくと、これからのワイン選びが楽しくなること間違いなしです。
(輸入元:セパージュ株式会社)