ここ2年の間に、日本市場でのテキーラ消費量がグングン伸びています。
テキーラはアルコール度数が高いお酒として知られ、数年前にはとある事件でマイナス方向にフォーカスされましたが、そのイメージを払拭したのは、
日本テキーラ協会の素晴らしい活動の賜物でしょう。
※日本テキーラ協会の林会長によるテキーラ指南は以前の記事を参照ください→
コチラ
テキーラはメキシコ産。よって、「メキシコ=テキーラ」 という図式がわたしたちの頭の中に出来上がっていますが、実はメキシコでもワインがつくられており、しかも、
メキシコはアメリカ大陸で最も古い歴史を持つワイン産地。意外でしょ?
ということで、本日はメキシコのワイン
「 L.A. CETTO」 (ラ・セット)を紹介します。
メキシコで最も古いワイナリーの創設は1888年ですが(Bodegas Santo Tomas)、近代ワイン産業が本格的に始まったのは
1920年代半ば です。
ラ・セットの前身になるワイナリーを創設した
ドン・アンジェロ・セット(1900-1972)がイタリアからメキシコに移住したのも、この時代、1924年のこと。
アンジェロは自分の故郷、北部イタリアのトレントのブドウづくりの技術を生かし、1928年にメキシコの
バハ・カリフォルニアの地にブドウを植えます。
バハ・カリフォルニアはメキシコ北部の太平洋側に位置し、アメリカとの国境に近く、すぐ北はサン・ディエゴ。
「サン・ディエゴ」といえば、スペインのフランシスコ会の司教たちがキリスト教布教のための伝導所(ミッション)を初めて建てた所(1769年)。宣教師たちはアメリカの西海岸を北上しながら次々とミッションを建てていきますが、布教の際に使われたのがワインです。当時スペイン領だったメキシコのバハ・カリフォルニアでは、1769年よりも前にすでにワインづくりが行われていた、ということですね。
ラ・セットのワインのバックラベルに描かれた地図でおおよその場所がわかります
赤いマークが、ラ・セットが多く所有している畑のある
グアダルーペ・ヴァレー。
グアダルーペ・ヴァレーは太平洋から22km内陸に位置し、北緯32.5度、海抜350m、土壌は砂質や粘土質、地中海性気候で、11月から3月が雨季となります。
夏の日中の気温は30℃を超えますが、夜になると14℃くらいに下がるため、この昼夜の温度差がブドウの生育にいい環境となっています。
冬の日中は8~10℃くらい、夜は0~5℃と、日本の首都圏の真冬とよく似ています。暑いイメージがあるメキシコですが、冬はちゃんと寒いんですね。
さて、「ラ・セット」では、第二次大戦後の1951年に次男のルイス・オーグスティンが加わり、1965年に有能なイタリア人ワインメーカーを迎え、1972年には初めて海外にワインを輸出します(隣国アメリカのロサンゼルスでしたが)。
1981年には3世代目のルイス・アルベルトが加わり、現在の「ラ・セット」は、
3000エーカー(約1200ha)の自社畑を所有し、
海外27カ国に輸出する、メキシコ最大のワイナリーとなっています。
また、大きいだけでなく、
国内外のさまざまなコンクールで300以上もの賞を獲得しており、名実ともにメキシコNo.1のワイナリーといえます。
そして、実は今年の3月に東京で行われた“世界最優秀ソムリエコンクール”のファイナルの問題で、ラ・セットのトップキュヴェ「DON LUIS CETTO」が登場 →
コチラ ※場面4の間違い探し
メキシコはソムリエならしっかり押さえておかねばならないワイン生産国であり、
その中でも「ラ・セット」は、確実に覚えておかねばならないつくり手なんですね。
「ラ・セット」では多様な品種のブドウを栽培し、多彩なワインをつくっています。
今回は(といっても昨年のことになりますが)、来日した輸出担当マネージャーの話を聞きながらいくつか試飲しました。
Luis Garcia Garcia Export Manager - LA CETTO Wines
LA CETTO Sauvignon Blanc 2011
フレッシュでバランスのよいソーヴィニヨンは、幅広い料理に合わせられそう。
ルイスさんのオススメマリアージュは “ワカモレ”(アボカドディップ)。
“ワカモレ”は中南米のサルサ料理のひとつ トルティーヤチップスと
「アボカドの青臭い感じとソーヴィニヨンのハーブの風味がよくマッチする」とルイスさんの談
LA CETTO Viognier Private Reserve 2011
プライベート・リザーブのヴィオニエは、上のソーヴィニヨンの生産量の10%。畑が限定され、収穫も醸造も特別なワインです。アルコール13.5%。
手をかけているのがよくわかり、ボディがしっかりして凝縮感がありながら、繊細さもあります。
チーズを振りかけた“シーザーサラダ”はヴィオニエにオススメ
LA CETTO SANTA CECILIA Cabernet~Malbec Red Wine 2010
カベルネ・ソーヴィニヨンとマルベックをブレンドした、ミディアムボディの赤。
気軽に飲めるタイプで、家庭の食卓でも活躍しそうです。アルコール13.5%。
LA CETTO Cabernet Sauvingon / Petit Syrah / Zinfandel
単一セパージュの赤ワイン3種。
カベルネはオーク樽熟成12か月後、瓶熟成6~8カ月、プティ・シラーとジンファンデルはオーク樽熟成6カ月後、瓶熟成6カ月。
各品種の個性が楽しめます。
面白いのは
ジンファンデル。産地も最北のテカテ(Rodondo Valley)になります。
「カリフォルニアのジンファンデルよりもライトで丸みがあるミディアムボディ。合わせる料理は幅広く、やわらかくて飲みやすい」とルイスさん。“メキシカン・ピノ・ノワール”と呼ばれているとか?
赤でもこのジンファンデルは“真鯛のグラタン風”にぴったり
LA CETTO Nebbiolo Private Reserve 2006
創設者がイタリア移民だったので、やはりあります、イタリア品種。
ネビオロです。
フレンチオーク樽で16カ月熟成後、瓶熟成24カ月!
アルコール14.5%。色は濃厚で、とろみがあり、口当たりはベルベットのよう。少し甘さを感じるまったりとした味わいですが、エレガントで洗練されたフルボディ。これはおいしい! 今回いただいた中では、これが抜きん出ていました。各コンクールでもいろいろと受賞しているようです。
ネビオロは
骨付き豚肉の薪直火焼き“セルドアサド”と相性バッチリ ―各種ソースで
赤ワインの「樽」の使い方については、プティ・シラーのプライベート・リザーブ(今回は試飲なし)のみアメリカンオークで、それ以外はすべてフレンチオークです。
新樽の使用率は、品種によって、またワインによっても異なります。
例えばネビオロPRに関しては新樽60%。
(輸入元:リードオフジャパン株式会社)
メキシコでは、さすがに
テキーラの消費が多く、グレープフルーツで割るカクテルドリンクなどでもよく飲まれているようです。ラム酒のコーク割、ブランデーのコーク割なども定番とか。
夏のビーチならピール!ですって。日本と同じですね(笑)
メキシコ国内のファインワインメーカーは、ラ・セットを含めてまだ数社しかないそうですが、
ワインの消費は伸びており、ホームパーティーなどではワインが出てくることが多くなっているとか。
日本に入ってきている数は多くありませんが、見つけたらぜひチャレンジしてみてください。
ラ・セットのワインは、2012年10月に六本木にオープンした
メキシカングリル&ワイン 「La Cocina GABRIELA Mexicana」 (ラ・コシーナ・ガブリエラ・メヒカーナ)」で飲むことができます。
店では、メキシコ伝統料理のほか、
日本初の「カルネ・アサーダ」(肉のグリル)もいただけます。
店内中央に「炉」を配置 ―ブロック肉を豪快に薪で焼き上げるスタイル!
食材はほとんどメキシコ産、店内にはメキシコの調理グッズや雑貨などが配置され、エキゾチックな雰囲気でした。
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La Cocina GABRIELA Mexicana (ラ・コシーナ・ガブリエラ・メヒカーナ)
東京都港区六本木7-15-10 クローバービル2F
http://www.gabriela.jp/index.html
※地下1階には姉妹店となるテキーラバー「AGAVE」があります