先週、
チリのNO.1ワイナリー「コンチャ・イ・トロ社」のエンリケ・ティラド氏が来日し、同社のアイコンワインである
「ドン・メルチョー」の秘密を紹介 するセミナーとパーティーが、都内で開催されました。
エンリケ・ティラド氏 -
「ドン・メルチョー」醸造責任者
1883年創設の
コンチャ・イ・トロ社は、2013年に創業130周年を迎えたチリの老舗名門ワイナリーです。
1960年代後半には海外市場に積極的に進出し、1987年にはチリ初のプレミアムワインをリリースするなど、常にリーダー的存在としてチリワイン界を引っ張ってきました。
現在は、世界145カ国に輸出し、チリの輸出ワインのシェアは34%を占めています。
その
コンチャ・イ・トロ社のアイコンワインが
「ドン・メルチョー」です。
1990年代後半の日本の赤ワインブームの際に、チリのスーパープレミアムワインも話題となりましたが、「ドン・メルチョー」が先駆者というわけです。
「ドン・メルチョー」は専門各誌で高い評価を獲得し続けており、今もなお、
誰もが認めるチリ最高峰のワインです。
「ドン・メルチョー」のワインがさまざまな区画の畑のブドウからつくられている ことは、2013年9月にコンチャ・イ・トロ社を訪問した際に話を伺いました。
その区画ごとの元ワイン(7区画あります)、本社でも飲めなかったその元ワインを、今回のセミナーで試飲できたのは、幸運なこと。
今回の、
7区画の元ワインを飲む試み はもちろん日本初ですが、チリ以外でも行われることはほとんどないそうです。
「ドン・メルチョー」の畑は、チリの首都サンティアゴの南側、マイポ川の北岸にあります。
この畑がある場所はマイポ・ヴァレーの中で
“プエンテ・アルト”と呼ばれ、土壌も気候も、畑の東側にあるアンデス山脈の影響を大きく受けています。
この場所には、第1、第2、第3段丘という3つの段丘がありますが、ドン・メルチョーの畑は、最も高い場所で(海抜650メートル)、かつ最も古い土壌の第3段丘にあります。
古い土壌は成分も複雑で、ミネラル分も複雑なため、複雑な味わいのワインを生み出します。
土壌は、アンデス山脈から流れてきた
非常に貧しい沖積土です。
この
貧しい土壌が最良のカベルネ・ソーヴィニヨン ―ドン・メルチョーの主体ブドウをつくります。
アンデス山脈から吹き下ろす冷たい風がマイポ川を伝って畑に入り込むため、アロマやフレッシュさを失わずにブドウが完熟する、という、素晴らしい気候条件も備わっています。
2013年に訪問した時のコンチャ・イ・トロ社 奥にアンデス山脈が見えました
プエンテ・アルトの畑の面積は127ha。およそ
90%がカベルネ・ソーヴィニヨンで、残りにカベルネ・フランと、少量のメルロ、プティ・ヴェルドが植えられています。
畑には
100以上の小区画(パーセル)があり(1ha以下)、それを、表現力やアロマなどの個性を同じくする
7つの区画にブロック分けしています。
区画分けの基準は土壌(土壌の階層なども)の違いだそうです。
この7区画のワインをブレンドしたものが「ドン・メルチョー」となります。
ちなみに、区画1-6はカベルネ・ソーヴィニヨンで、区画7はカベルネ・フランです。
その前に、まずは100以上のパーセルのブドウをそれぞれ仕込み(タンクの数が150くらいになるとか)、その中から最も良いものを選んで7区画のワインをつくるそうですから、実に細かく手のかかる作業です。
特別に樽から抜いて瓶詰めして持ってきたという7区画のワイン-2013年を試飲しました
7区画のワインには、それぞれ特徴的な個性があります。
例えば、
区画1は、熟れた果実、赤い果実、上品かつ複雑味があり、甘いタンニンの特徴、
区画2は、黒い果実、チョコレートの風味、時折メンソールのヒントがあります。
区画7のフランは、ワイルドベリー、熟れたタンニン、なめらかさを丸みをワインに与えます。
7つのワインは、色調も違えば、香り、風味、果実味、酸やタンニンの性質なども違いました。
なお、これら区画ごとの性質の違いを出せるよう、使用する樽(フレンチオーク樽)の種類から焼き加減まで、同じものを使い、同じように醸造しているそうです。
ワインメーカーたちが各区画ごとのワインの特徴を熟知しているからこそ、絶妙なブレンドができるわけですね。
そのブレンドについては、フランスのボルドーの著名シャトー(ラトゥールやラフィット、マルゴーなどを筆頭に多数)のコンサルタントを務めるジャック・ボワセノとエリック・ボワセノが、ボルドーの彼らの研究所で最終ブレンディングを決定しています。
この日、7区画のワインの特徴を確認した後は、エンリケ氏がその場でブレンドを行ない、氏曰く、「ドン・メルチョー New Tokyo Blend 2013」をつくりあげる実演を行いました。
区画1-7単体のワインと、7つをブレンドしたワインを比較すると、ブレンドしたワインの方が完全な球体に近い丸みを感じました。
でも、どこか、それぞれの区画を思わせるようなニュアンスを感じさせました。
エンリケ氏も「
ブレンドした方がより豊かな表現をし、より出来上がったワインになっている。音楽でいうシンフォニーと同じ で、楽器単体とオーケストラの関係と同じ」と言います。
これら7区画のワインが実際に「ドン・メルチョー 2013」として市場にリリースされるのは、ずっと先のことになりますが、どんな姿で登場するのか、今から楽しみですね。
Don Melchor 2009 Don Melchor 2010 /
Concha y Toro
その後、すでに完成版のドン・メルチョーとしては、現行ヴィンテージの2009年と、日本未入荷の2010年を試飲し、ヴィンテージの違いを確認しました。2010年は現在、船の上だそうです。
よく見ると、ラベルデザインも少し違っていますね。
2009年は天候に恵まれた年だったので、果実味がよく熟し、丸くなめらかでボリューム感のあるワインに仕上がっています。
2010年は涼しい年でしたので、少々ストイックな感じがありますが、まだこれからどんどんいい方向に進む予感がします。
「2009年も2010年も、ドン・メルチョーとして最高の年。毎年、上品なタンニンを、それは熟してまろやかだけれども、熟しすぎないタンニンを出せるようにしている。また、ワインの複雑さを表現できるよう、プエンテ・アルトのテロワールを最大限に表現できるようにしている。それは、毎年、カベルネ・ソーヴィニヨンの最高品質のワインをつくること。年ごとの差はもちろんあるが、常に同じパーソナリティになるようなワインづくりを目指している」と、エンリケ氏。
同日夜に開催されたパーティーでは、
日本未発売のスパークリングワイン「スベルカッソー」や、
エンリケ・ティラド氏が新たに手掛ける「グラバス・デル・マイポ シラー」も登場しました。
Subercaseaux Extra Brut GRAVAS del Maipo Syrah 2008 /
Concha y Toro
「スベルカッソー」は軽快で繊細な果実味と泡が楽しめるシャルマ方式のスパークリングワインで、アルコール度数も12%とライトなので、食前酒やパーティにピッタリ。昼から楽しめそうです。
「グラバス・デル・マイポ シラー」はアルコール15%。色調も濃厚で、一見、パワフルに見えますが、なめらかで丸く、ふわりとソフトなタッチに驚きました。スパイシーな風味はほんのかすか。濃密ながらエレガントなシラーです。
参加者に自らの手でワインを注ぐエンリケ氏
パーティーでは、7区画のワイン、ドン・メルチョー2009&2010、スベルカッソー、グラバスがふんだんに振る舞われました。
このような貴重な機会に参加できたことに感謝いたします。