いよいよ今週の木曜日(11/17)にはボジョレー・ヌーヴォーが解禁となります。
オーストリアの新酒も11月11日に解禁になり、このところ、新酒ラッシュですね。
オーストリアの新酒の解禁日は、牧童や農家の守護神である聖マルティン(聖マーティン)の日、11月11日です。
オーストリアの新酒は
「ホイリゲ」(Heurige)と呼ばれますが、ホイリゲは
“居酒屋” という意味も持っています。
ちょっとややこしいですが、ホイリゲには2つの意味があることを覚えておきましょう。
ホイリゲ(新酒)は、11月11日より1年間“ホイリゲ”として飲まれます。
今年のホイリゲを、解禁前日にいただいてきました。
(オーストリア大使館でのことなので、問題ないのでしょう)
ちょうど来日していたオーストリアの生産者が紹介してくれました。
Weingut ZAHEL
リヒャルト・ツァーヘル氏(当主)
アレクサンダー・スコッフ氏(醸造家)
ツァーヘル醸造所はウィーンで1932年よりワインづくりを行う生産者で、ホイリゲも経営しています。
醸造家のアレックスはリヒャルト氏の甥。今回は民族衣装のレーダーホーゼで登場してくれました。
左)
Gemischter Satz Sekt NV 右)
Heurige Gemischter Satz 2011
右が今年の新酒、
ホイリゲ。
Gemischter Satz (ゲミシュター・サッツ)というのは、
混醸ワインのこと。
同じ畑に数種類のブドウを植え、同時に収穫して一緒に醸造を行います。
2011年のホイリゲは、シャルドネ、リースリング、ノイブルガー、グリューナーフェルトリナーの4品種で造られています。
ブドウ品種によって成熟の度合いが違います。最も早く熟したのがシャルドネで、最も成熟が遅いのがリースリングとのことで、
これら複数の品種が最もいいコンビネーションを生み出すタイミングを狙って収穫しています。
例年の収穫は9月の中旬とのことですが、今年早く熟したので、9月の頭に収穫。
フレッシュでフルーティーでな白ワインです。アロマもフルティーで、青リンゴの風味を感じました。これは爽やかで飲みやすいですね。
左は
ゲミシュター・サッツのゼクト(発泡ワイン)。
ゲミシュター・サッツはウィーンの伝統のスタイルのワインですが、
ゼクトを造ったのはツァーヘルが世界初とのこと(2007年)。
北(ヌスベルク)と南(マウワー)の2つの畑の、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シャルドネ、トラミナーなどを混醸し、シャンパーニュと同じ
瓶内二次発酵を行います。熟成期間は12カ月。NVですが、2010年がベースとなっています
新酒と比べるとアロマが複雑。泡のキメが細かいですが勢いがあり、軽快で、ミネラル感もあり、キレのある辛口です。これはさまざまなシチュエーションで幅広く使えそうです。
下の2つもゲミシュター・サッツ。
ちなみに、ゲミシュター・サッツは"白ワイン"が原則。
左)
Nussberg Grande Reserve Gemischter Satz 2009
右)
Schloss Schonbrunn Weiss Gemischter Satz 2010
シュロス シェーンブルンは、上のゼクトと同様、北と南の2つの畑の数種のブドウを混醸。
ペイルグリーンの外見が若々しく、白い花の香りがエレガントですが、口にすると酸がイキイキとしてフレッシュ。爽快感たっぷりの白ワインです。
ヌスベルグ グランド レゼルブは、ツァーヘルのゲミシュター・サッツの最高峰ワイン。
所有する最も古い畑(樹齢平均は55年)の中の最もよく成熟した畑の
9種のブドウをセレクトして造られます。
完熟フルーツのアロマが甘く華やか。ピュアでエレガントな果実味が口の中いっぱいに広がり、複雑味もあります。まろやかでコクがあり、フルーツの余韻が長いのもいいですね。熟成も期待できる白ワインです。
ツァーヘルが日本で販売するワインのうち、4アイテムがゲミシュター・サッツなのはなぜ?
そもそもオーストリア国内では、ゲミシュター・サッツはどう受け取られているんでしょう?
ツァーヘルの総生産量の60%がゲミシュター・サッツ。ずいぶん入れ込んでますよね。
かつてゲミシュター・サッツはウィーンを中心に愛され、最も飲まれてきた伝統あるワインでした。
ところが、ヨーロッパを襲った
フィロキセラにより、その伝統が失われてしまいました。
それを
ツァーヘルが復活させた、
ラベルにGemischter Satz と表記したのもツァーヘルだ(1990年代の初め頃)、と彼らは言います。
オーストリア人は愛国心が強く、伝統的なものを好むため、ウィーンだけでなく郊外でもゲミシュター・サッツは大変よく飲まれるようになってきており、これを彼らはゲミシュター・サッツの
“ルネッサンス” と言います。
ルネッサンスを実感したのは
2000年頃で、国内だけでなく、海外(アメリカ、カナダ、ロシア、日本)でもゲミシュター・サッツの評判が高くなっているとか。
そのため、他の生産者もゲミシュター・サッツを造るようになり、ゲミシュター・サッツの畑は右肩上がりに増えているようです。
「ただ原点に戻っている。昔もそうだった」
混ぜるブドウ品種や畑の場所の組み合わせによりさまざまな表情を見せてくれるミステリアスなワイン、ゲミシュター・サッツ。
こんなワインを知っていると、ちょっと鼻が高いかもしれません
(輸入元:株式会社エイ・ダヴリュー・エイ)