ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

これは、ちょっとステキな偶然?(笑)

2009-01-19 16:00:19 | ワイン&酒
今回アップした「キャッチ The 生産者」の第18回
オーストラリアの 「Brokenwood」 ワイナリーがあります。

ここの「セミヨン」のワインは、先週(2009/1/13)アップした
「リースリングをちょっぴりと(笑)」でも飲んでいます。



ブロークンウッドのワインメーカーは、イアン・リッグス氏(Ian Riggs)。

つまり、イアンさんは「Mr. Riggs」になり、

1/13に紹介した2本目のワインも 「Mr. Riggs」


あれ?ということは、両方ともイアンさんのワイン?

かと思いましたが、後者は ベン・リッグスさん(Ben Riggs)という別人のもの。

同じサウスオーストラリア州なので、もしかして2人の間には姻戚関係があるのかもしれませんし、全くの赤の他人かもしれませんが(調べた限りでは不明)、

今回の「キャッチ The 生産者」のアップの順番がイアンさんに当たったこともあり、Riggs氏が偶然にも続いたステキな1週間となったと思いませんか?(笑)

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第20回 Tenuta San Guido@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:30:48 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年3月11日)

第20回  Dottore Sebastiano Rosa  <Tenuta San Guido>

20回めのゲストは、イタリアの“スーパータスカンのパイオニア”といわれる"サッシカイア"のワインメーカーを務める、セバスチャーノ・ローザさんです。
テヌータ・サン・グイードの後継者でもあるローザさんに、次世代サッシカイアとして新しく誕生した"グイダルベルト"を中心に、お話を伺いました。



<Sebastiano Rosa>
1966年生まれ。2歳で実父と死別。その後、母がテヌータ・サン・グイードのオーナーであるニコラ・インチザ侯爵と再婚したため、インチザ公を養父として、ボルゲリで育つ。
カリフォルニア大学デイビス校にて、ブドウ栽培および醸造学修士課程を終了後、カリフォルニアのジョーダン・ワイナリーで1年間勤務。その後、フランスはボルドーのシャトー・ラフィット・ロートシルトで2年間勤務。
1990年からトスカーナのアルジャーノへ。ジャコモ・タキス氏とともにスーパータスカン"ソレンゴ"を誕生させている。
2002年からテヌータ・サン・グイードへ。現在は、ワインメーカー兼マーケティングディレクターを務める 。


次世代サッシカイアの担い手

サッシカイア(Sassicaia)といえば、イタリアワインファンならずとも心ときめく、スーパータスカンの代名詞的存在。
キアンティのサンジョヴェーゼ種、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのブルネッロ種が伝統的なトスカーナ州において、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランで構成されるサッシカイアは、原産地呼称制度上は単なるテーブルワイン(ヴィーノ・ダ・ターヴォラ)に過ぎませんでした。

しかし、1968年ヴィンテージ以降、熟成にフレンチオークを使用し、国際市場へとターゲットを広げていきながら、サッシカイアは、ボルドー1級シャトーと並ぶ評価を得るまでのワインへと成長していきました。 そして、1994年ヴィンテージからは、単独のDO"ボルゲリ・サッシカイア"に昇格しました。

現在は、イタリアを代表する超高品質ワインのひとつとして、その名声をほしいままにしているテヌータ・サン・グイードですが、つくっているのは、このサッシカイアだけでした。

しかし、21世紀を迎えた今、新しいワインと次世代のリーダーが誕生しました。



Q.なぜ、カリフォルニア大学デイビス校へ?
A.私が進学をしようとしていた1980年代は、ワインの勉強をする学校としては、フランスのボルドー大学かデイビス校しか選択の余地がなかったのです。私はイタリア人ですから、陽気な土地がいいと思い(笑)、カリフォルニアに渡りました。もちろん、カリキュラムが充実していたこともありました。入るのは簡単でしたが、入ってからが大変!勉強はかなり努力を必要としました。

Q.サッシカイアが"スーパータスカン"といわれるまでになった経緯を教えてください。
A.私の養父ニコロの父マリオ・インチザは、ボルドーワインの大ファンでした。第二次大戦後の1946年、シャトー・ラフィットのカベルネの苗木を購入し、ボルゲリの地に植えました(2ha)。マリオはピエモンテ出身ですが、イタリアで高貴なワインをつくることを学生時代から夢見ていたようです。

畑は海から近くに位置しているので気候は安定し、東向きで日照も充分だったので、成熟したワインができると考えたようです。
最初は家族消費用としてつくっていたのですが、そのワインは硬く、あまり評判が良くなかったため、しばらく寝かせていたところ、非常に良くなったので、1960年代に畑を拡大することにしたそうです。
その後、アンティノリで働いていたエノロゴ、ジャコモ・タキス氏の影響もあり、それまで大樽で行っていた発酵をステンレスタンクに変え、熟成にフレンチオークの新樽を使い、また、マーケティングターゲットを国際市場に広げたところ、サッシカイアは非常に高い評価を得るようになりました。それが1968年ヴィンテージです。

Q.ということは、醸造方法の変更とマーケティングが成功の秘訣ですか?
A.いえ、それだけではなく、ボルゲリの土地にも秘訣があります。
先に述べたように、ここは海から近く、最初に祖父が植えた2haの畑は海から5kmのところにありましたが、60年代に広げた畑は、海から2kmの近さにあります。そのため、春は早くから暖かくなり、トスカーナの内陸部とは1ヶ月も違います。
夏は海の影響で涼しく、穏やかな天気となり、雲が出にくく、降水量も少ないのです。こうしたマイクロクライメット(微気候)は、海からの偉大な財産です。

また、土壌にはがたくさん含まれ、ボルドーのグラーヴと同じ土壌構成です。つまり、カベルネに適した土地なのです。
"サッシカイア"という名前は、「小石がいっぱい」という意味なんですよ。

Q.1994年にボルゲリ・サッシカイアがDOCに昇格した背景は?
A.今まで偉大なワインが存在しなかったボルゲリの地に偉大なワインを誕生させ、エノロジーと栽培学への貢献が認められたことによるといわれています。マリオがカベルネを植えた畑は、イタリアのカベルネの生誕地とされています 。




Q.次はいよいよ、新ワイン"グイダルベルト"の登場ですね?
A.グイダルベルトは2000年ヴィンテージからリリースしています。サッシカイアの個性はそのままに残しつつ、若いうちから楽しめるものを、ということから生まれました。 また、若い世代の、新しい飲み手に飲んでもらいたいため、手軽な価格設定にしました。
品種については、ボルゲリの土地にはメルロが合うと考えていたので、メルロブレンドのワインにしてみました。

ちなみに、"グイダルベルト"の名は、インチザ侯爵家の祖先であり、18世紀初頭のボルゲリでブドウ栽培の改良に貢献した"グイド・アルベルト・デッラ・ゲラルデスカ侯爵"から取っています 。

Q.グイダルベルトとサッシカイアの具体的な相違点は?
A.サッシカイアは、カベルネ・ソーヴィニヨン85%とカベルネ・フラン15%のブレンドですが、グイダルベルトは、メルロ45%、カベルネ・ソーヴィニヨン45%、サンジョヴェーゼ10%のブレンドで、メルロが入っています。
当初、メルロの比率は30%でしたが、現在は45%です。サンジョヴェーゼは、イタリアらしいスタイルを与えるために加えています。
どちらのワインも同じ栽培&醸造チームで手がけています。

Q.栽培方法や醸造方法は全く同じですか?
A.栽培に関しては全く同じように手をかけています。よって、サッシカイア用のカベルネのブドウが、その年の出来によっては、グイダルベルトに回されることもあります。

一方、醸造では、樽の使い方が違います。サッシカイアの熟成はフレンチオーク樽のみですが、グイダルベルトにはフレンチオークとアメリカンオーク樽の両方を使います。アメリカンオークは樽のニュアンスがダイレクトに出るため、樽熟成24ヶ月のサッシカイアよりも短い樽熟成期間(12ヶ月)のグイダルベルトのバランスがうまく取れるよう、メルロだけに使います。

Q.あなたは世界各国でのワインづくりの経験がありますが、その土地を意識したワインメーキングをしているのですか?
A.私は国によって自分のスタイルを変えることはありません。ワインメーカーがどういうワインをつくりたいか?ということが、まず最優先すべき点です。
例えば、カベルネ・ソーヴィニヨンのワインは世界中にありますが、たとえ1km先の畑であっても、その土地の個性がワインに現れます。
ボルゲリでボルドーのようなカベルネのワインにしたいと思っても、同じワインにはなってくれません。私が土地に合わせるのではなく、ワインが自然にその土地の個性を引き出してくれます。

Q.では、あなたのスタイルとは?
A.私は、つまり、テヌータ・サン・グイードでは、パワフルさではなく、ボルドーのようなエレガントさを求めています。過剰な凝縮は行わず、樽の香りを前面に出すことも嫌います。フィルターもかけず、自然のままの、飲んで心地よいワインを目指しています。 また、他の生産者では、悪い年にはワインを生産しないことがありますが、
我々は、1968年以来、毎年サッシカイアをつくり続けています。畑で密度が高い仕事をすれば、きちんとしたワインができると信じているからです。そのため、収穫は全て手摘みで行い、選別もテーブルで厳しく行っています。
その結果、難しいといわれた年(92年、96年、02年など)でも良い評価を得ています。92年などは確かにリリース当初はかなり批判を受けましたが、今はきれいに熟成しておいしいワインになっています。

Q.他のブドウ品種でワインをつくる予定はありますか?
A.10年ほど前、南の方の品種を試してみたことがありますが、よく成熟せず、アルコール度数も低く、グリーンな香りのするブドウしか得られませんでした。
我々はボルゲリでNo.1のワインをつくりたいと思っているので、この土地に合ったブドウで勝負していきたいと思います。ここではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロがベストで、パフォーマンスの良いブドウが得られます。

Q.現在、興味を持っていることは?
A.オーク樽の研究です。現在は、セガン・モロー製などのフレンチオークを使っています。フレンチオークはどこでも使われて需要が多いのに、2001年の寒波でフランスの森林に被害が及び、供給の方が危うくなってきています。そこで、フランス産だけでなく、のスラボニアオーク樽なども試験的に使用しています。また、スクリューキャップにも興味を持っています。

 
<テイスティングしたワイン>

Guidalberto


2002
色がやや薄めで、口当たりはなめらか。果実の凝縮感ある甘さが押し寄せてくる感じもありますが、スムーズでバランスが良く、飲みやすいワインです。
「2002年は悪い年と言われていますが、ボルゲリはトスカーナの他の地域に比べると良好でした。収穫は遅く、10月中旬です。このワインはもうすでに開いているので、今飲むにはちょうどいいでしょう。レストランにもお勧め。クリーンなタイプのワインで、樽はほのかな感じです(新樽20%)。ブラックベリー、カシス、ラズベリーの感じがあり、バランスが良く、フィニッシュも長め」(ローザさん)

2003
色が濃く、深く、黒っぽい外観で、アタックもたっぷりとふくよか。ボリュームがありますが、酸も非常に豊かで、タンニン量も充分です。
「この年のヨーロッパはこの150年で最も暑い夏で、メルロはいつもより1ヶ月早い8/15に収穫を開始しました。暑さに苦しんだワイナリーも多く、トスカーナではブドウが過熟してしまいましたが、ボルゲリは地中海性気候なので、悪くはありませんでした。色は自然に濃くなりました。香りは閉じていますが、キメが整い、奥深さ、複雑さがあります。ポテンシャルが大きく、熟成の可能性を秘めた長熟タイプのワインです」(ローザさん)

2004(Barrel Sample)
まだ紫のニュアンスが残る黒い深い色をしています。まろやかで、果実のボリュームにあふれたアタックがあり、余韻も長く、ツルツルととてもなめらかなのに、キュキュッと引き締まった感じもあります。
「この年は天候も畑の出来も良く、全ての条件が整い、非常にお気に入りの年です。というのも、実は私が結婚した年でもあるからで、気合を入れてつくりました(笑)。これはいくつかの樽からブレンドしたバレルサンプルですが、香りの中にすでに複雑性が出ています。メルロの特徴もよく出ていますね。さまざまなベリーの香りがあり、なめし皮の香りもあります。父とディスカッションしたときに、2004年はサッシカイアよりこっちの方がいいかも?という話まで出ました。年明けのボトリング(2006年1~2月頃)が待ち遠しいです」(ローザさん)


Sassicaia


2003(Barrel Sample)
同じ年のグイダルベルトよりもさらに黒味が深い外観。酸のしっかりとした厚みと、凝縮した果実の甘さを強く感じ、タンニンはすでになめらか。
「モンタルチーノでは40℃を超える日が1ヶ月も続きましたが、ボルゲリは海の影響で、32~34℃くらいに止まりました。サッシカイアのブドウ樹は古いものが多く、根が非常に深く張っているため、猛暑の影響は樹に及びません。2003年はクラシカルなタイプではありませんが、凝縮感があり、ここ10年くらいで1番良い年だと思っているくらいです」(ローザさん)

2002色はやや薄め。香りは最初控えめですが、だんだんと甘い香りが出てきます。酸はきっちりとあるものの、全体のボリュームはやや抑え気味。
「この年から、長い熟成に向かないカベルネのロットを、グイダルベルトに混ぜ始めました。若いうちに楽しむグイダルベルトにとって良いことであり、サッシカイアをより良くするためでもあります。2002年のサッシカイアはすでに香りが開いていて、熟成感もあります。他の年に比べると、ややふくよかさに欠けるところがありますが、酸のレベルが高く、良い質のタンニンがあり、フェノール類も出ています。さらに3~4年すると、もっと良くなるでしょう」(ローザさん)

2001
色はかなり黒っぽく、アタックは強めながらも、口当たりはなめらか。タンニンの性格はクラシカルで、酸もエレガントなワインです。
「とてもクラシックなスタイルの年です。だんだん香りが開きつつあります。樽とフルーツの香りのバランスが良く、気品、複雑性があります。サッシカイアの特徴であるミネラル感、なめらかな舌触り、調和した複雑さがよく出ていて、熟成の可能性も充分秘めています」(ローザさん)

1997
酸とタンニンがしっかりとし、まだまだ若さを感じさせますが、スムーズで、フィネスさえも感じさせる素晴らしいワインです。
「1997年はトスカーナの偉大な年で、もちろんボルゲリも最高です!」(ローザさん)



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インタビューを終えて

超一流のワイナリーのオーナーを父にして育つという恵まれた環境にありながらも、世界各地で長年の修行を積み重ねてきた強い意志。確実に実績を積み重ねてきた堅実さと創造力。ワインメーカーとしての立場だけでなく、経営全体のことも見据えることのできる能力と判断力。ローザさんには、そうしたものがしっかりと備わっていることを実感しました。

かなり期待できます、サッシカイアのプリンス!

ローザさんがサン・グイードに戻ってきたのと時を同じくしてリリースされたグイダルベルトも、これからもますます進化していきそうな勢いです。
さらに、他の土地への進出プロジェクトもあるようですから、ローザさんの動向には目が離せそうにありません。


(取材協力:株式会社スマイル)

(サッシカイアのホームページ) http://www.sassicaia.com




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第19回 Chateau La Fresnaye@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:25:58 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年2月11日)

第19回  Philippe Baudin  <Chateau La Fresnaye>

仏ロワールのシャトー・ラ・フレネのオーナーでありながら、現役の旅客機パイロットでもあるというフィリップ・ボダンさんが、奥様のロールさんを連れて来日しました。
今回も面白い話が聞けそうです。



<Philippe Baudin>1966年、アンジェに生まれる。
アンジェの大学を卒業後、エール・フランスへ。
旅客機のパイロット(キャプテン)歴は15年。現在もキャプテンとして活躍中。
1999年にシャトー・ラ・フレネを取得後は、奥様のロールさんと3人のお子さんとともに、シャトーでの生活をエンジョイする毎日。


パイロットがビオディナミに挑戦 !

"フランスの庭園"と呼ばれる、美しいロワール地方。その中でも、"花と芸術の都"と讃えられるのがアンジェ市(Angers)です。
フィリップさんの『シャトー・ラ・フレネ』は、アンジェ市の中心から南西約20kmのサン・トーバン・ド・リュイニュに位置しています。
ラ・フレネでは、サン・トーバン・ド・リュイニュや、ラブレ・スール・ラヨン・レシャリエの地から「AOCアンジュー・ブラン」や「AOCアンジュー・ルージュ」などを、また、トゥワスの地から「AOCボンヌゾー」などを生産しています。

『シャトー・ラ・フレネ』のワインづくりの歴史は、17世紀の半ばまで遡ります。ワインはヨーロッパ各国に輸出され、その栄光は1960年代まで続きました。しかし、火災を機にシャトーが売却に出されると(1974年)、300年以上続いたワインづくりの伝統の灯は消えてしまったのです。



それを救ったのが、フィリップさんでした。彼は1999年にシャトーを取得し、ラ・フレネのワインづくりを復活させました。
しかし、彼のつくるワインには、かつてのラ・フレネと大きく違う点がありました。それは、"ビオディナミ"(*1)を採用したことです。



Q.まず、フィリップさんが現役パイロットということにびっくりしましたが、パイロットをしながら、なぜ、ワインづくりの道に進もうと思ったのですか?
A.私は元々ワインづくりに興味を持っていました。いい土地があれば買いたいと思っていたところ、テロワール、土壌の質ともに良い土地を見つけたからです。

Q.それまで、ワインづくりの経験はありましたか?
A.1995年から99年までの4年間、他のワイナリーにスタージュ(研修)に行き、ワインづくりを学びました。

Q.パイロットの勤務は過酷だと思うのですが、どのようにしてシャトーの仕事と両立させているのですか?
A.パイロットとして月に15~17日の勤務がありますが、勤務以外の日にシャトーの仕事をします。ここはパリの空港から3時間かかり、通うのは大変ですけれど、好きなことですから苦になりませんよ(笑)。
また、醸造に関してはジュリアン、畑に関してはブノワという、2人の頼もしい現場責任者がいますので、私が不在でも安心して対処ができる体制になっています。

Q.ロワールの土地を選んだのはなぜですか?他の土地は気になりませんでしたか?
A.まず、私がロワールのアンジェ出身で、地元に愛着があることも理由のひとつですが、ここで素晴らしい畑を見つけたことが最大の理由です。
特にシュナン・ブランにとって最適な砂地の畑があり、とても素晴らしいテロワールだと確信したからです。

Q.ラ・フレネではビオディナミを採用しているということですが?
A.ワインのポテンシャルをアップさせたいと思い、甘口ワインの畑2haを、まずオーガニックから始めました。現在は4~5haの畑がビオディナミになりました。

Q.ロワールはビオディナミの生産者が多い土地ですが、参考にしている人はいますか?
A.確かに、ビオディナミではニコラ・ジョリー氏<が第一人者(*2)でしょう。彼は世界中を飛び回っています。
現在、ビオディナミ生産者にはいくつかのグループがありますが、私は敢えてどこにも属さず、いいと思う人とは積極的に交流を持っています。

私が素晴らしいと思っているのはマーク・アンジェリ氏(*3)で、彼とはもちろん親交があり、また、オリヴィエ・クザン氏(*4)とも深い交流があります。畑を耕すときは、オリヴィエさんの馬を借りたりする仲です。
(下記の写真はオリヴィエさんと愛馬)



Q.あなたのワインについて教えてください。
A.白はシュナン・ブランで、辛口の"アンジュー・ブラン"と甘口の"ボンヌゾー"のワインが、赤はカベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランからのワインがあります。
ラ・フレネのワインは、"畑で全てがつくられる"、と考えています。純粋で良いブドウが得られれば、セラーでは何もすることはありません。特に手をかけなくても、ただ待つだけで素晴らしいワインになってくれます。

Q.ボンヌゾーは毎年生産できるのですか?
A.ボンヌゾーの極甘口ワインは、その年の天候に大きく左右されるため、毎年できるとは限りません。収穫は通常、10月下旬から11月にかけて行いますが、1999年は11月中旬に行いました。2005年は非常に難しく、5リットルほどがやっとでしょう。

Q.国内消費と輸出の割合は?
A.80%が海外輸出です。輸出先はイギリスやドイツ、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、アイルランド、イタリアなどで、アジアでは、日本のほか、台湾にも輸出しています。アメリカへは、もう少し先になりますが、輸出する予定です。
フランス国内では、星付きのレストランやワイン専門店などに卸しています。

Q.これからの夢は?
A.まず、ビオディナミをきっちり究めていきたいですね。畑は、トラクターなどの機械を使わないでも管理できるようにしていきたいと思っています。

また、究極の白ワインをつくりたいと思っています。ボンヌゾーは甘口タイプと決められていますが、ボンヌゾーの畑から"辛口"のプレステージワインをつくるのが夢です。もちろん、それはボンヌゾーとは名乗れず、単なる"アンジュー・ブラン"になってしまうのですが、素晴らしいワインになりそうじゃありませんか?(笑)


(*1)ビオディナミ:英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。

(*2)ニコラ・ジョリー氏:サヴニエールにある"ラ・クーレ・ド・セラン"のオーナーで、ビオディナミの伝道師とも言われる人物。1980年からビオディナミを開始。

(*3)マーク・アンジェリ氏:アンジュにある"フェルム・ド・ラ・サンソニエール"のオーナー。1990年からビオディナミを開始。

(*4)オリヴィエ・クザン氏:マルティニェ・ブリアンにある"ドメーヌ・オリヴィエ・クザン・ルデュック"のオーナー。1996年に有機栽培開始、2002年からビオディナミ開始。




<テイスティングしたワイン>

Anjou Blanc L'Echalier 2002
口当たりはトロリとなめらか。辛口タイプなのにしっかりと熟した豊かな果実味を感じ、非常に厚みがあり、飲みごたえがあります。
「よく熟した果実だけを使っています。プレスは軽く行い、ピュアなテイストを大切にしています」(フィリップさん) 。



※なお、レシャリエの04ヴィンテージは、2006年2月6~8日にアンジュで開催された「第20回サロン・デ・ヴァン・デ・ロワール」のコンクールで、見事銀賞(Ligers D'Argent 06)を受賞しました!おめでとうございます!


Anjou Rouge Festina Lente 2002
フィリップさんは「フルボディでパワフル!若いときは、デカンタージュして飲んでいただきたいです」と言いますが、私には、凝縮感はあるのに、果実味とタンニンのキャラクターが非常にエレガントに感じ、やさしい口当たりで、ピュアでナチュラルな味わいがしました。
2002年は80%がカベルネ・ソーヴィニヨンで、20%がカベルネ・フランですが、年によって比率が変わります。2003年はカベルネ・ソーヴィニヨン100%。




Bonnezeaux cuvee L 2003
甘さが凝縮し、ひと口飲むだけでシアワセな気分になれてしまう甘口ワインですが、残念ながら、このボンヌゾーは日本未入荷。生産量の少なさを考えると仕方ありませんが・・・。



フィリップさんのおすすめマリアージュ

白ワインは刺身(イカやホタテ)、お寿司にもいいですね。
フランスではヌーヴェル・キュイジーヌの料理、スパイスを使った白身の魚料理、ホタテ貝料理などが合うかと思います。
肉でも白身のものならOKですし、山羊のチーズ(シェーブルチーズ)、パスタなどにも合わせてみてください。

赤ワインはジビエ類(ウサギ、鹿、イノシシetc…)に最適で、ブフ・ブルギニヨン(牛のブルゴーニュ風煮込み)などとも美味しくいただけますよ。



ダブル”フィリップ・ボダン”?

シャトー・ラ・フレネには、もう一人のオーナーがいます。 そのオーナーの名前も、なんと"フィリップ・ボダン"! このフィリップさんの方は金融業に携わっていて、日本に住み、奥様も日本人です。
2人の名刺は全く同じで、見分けるポイントはメールアドレスのみ。実に紛らわしいのですが・・・。

今回インタビューをしたパイロットの方のフィリップさんに、「2人をどう呼び分けたらいいの?」と尋ねたところ、「僕が"本物のフィリップ"(real Philippe)だよ」と答えてくれました(笑)。

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インタビューを終えて


個人的に好きなワインは?と聞くと、 「実はブルゴーニュの赤ワインが好きなんです」と笑うフィリップさん。 特に"ルロワ"のワインが好きで、ルロワのマダム、ラルー・ビーズ・ルロワさんの名を取って、娘さんに"ラルー"と付けたという筋金入りのルロワファン!

「でも、基本的には、やっぱりロワールのワインが好きですね。バランスが良く、ファインなワインで、ピュアなスタイルをしていますからね」と語るフィリップさん。
シュナン・ブランのワインは、まさしくそれにドンピシャということですが、リースリングのワインも、同様の理由から、非常にお気に入りとのこと。

ワインづくりには、このところ話題となっている"ビオディナミ"を採用していますが、「ワインのポテンシャルを高めるため」と、フィリップさんは、自分なりの理論をしっかりと持っています。

手法が目的になりがちなビオディナミですが、飲む側の私たちも、それにあまり囚われることなく、まずは素直にワインと向き合いたいものですね。

(取材協力: 有限会社イシス) http://www.isiswine.com


奥様のロールさんと

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第18回 Brokenwood@「キャッチ The 生産者」

2009-01-19 15:20:59 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年1月11日)

第18回  Iain Riggs  <Brokenwood>

オーストラリアのワイン生産地、南オーストラリア州(SA)のハンター・ヴァレーにあるワイナリー『ブロークンウッド』
今回のゲストのイアン・リッグスさんは、ブロークンウッドのオーナーの一人で、かつチーフ・ワインメーカーも務めています。



<Iain Riggs>
1955年、南オーストラリア州のBurra出まれ。 ローズワーシー大学卒業。
マクラレーン・ヴェールのBleasdaleワイナリー、Hazelmereワイナリーを経て、1982年にブロークンウッドに着任。
現在、ブロークンウッドのマネージング・ディレクター兼チーフ・ワインメーカーで、オーナーの一人 。
また、ハンター・ヴァレー・ワインショーの議長やその他のアワードの審査員なども務めている。


白ワインのスペシャリストからシラーズのスペシャリストへ

イアンさんが入る前まで、ブロークンウッドは、オーナーが趣味で片手間にやっているような、ちっぽけなワイナリーで、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズの赤ワインのみを生産していました。

ところが、「白ワインもつくってみたい」というオーナーの願いから、白ワインづくりで名を馳せていたイアンさんに白羽の矢が当たり、1982年、イアンさんはブロークンウッドのチーフ・ワインメーカーとして着任。
そしてこの年、ちょうど新しいワイナリーも完成し、イアンさんを中心とする"新ブロークンウッド"がスタートすることに。

イアンさんの活躍の成果はすぐに現れ、翌1983年の生産は、赤ワインが30%、白ワインが70%と、いきなり白ワイン優勢のワイナリーへと転換しました。
現在も白ワインは、セミヨン、シャルドネ、ピノ・グリ、ヴィオニエ、リースリングと、幅広く生産しています。

ですが、現在のブロークンウッドを有名にしているのは、実は赤ワインのシラーズ
イアンさんはシラーズのスペシャリストでもあるのです。





Q.セミヨンは、ボルドーではソーヴィニヨン・ブランとブレンドした辛口に、また、ソーテルヌでは甘口ワインに使われていますが、ブロークンウッドのセミヨンのスタイルは?
A.我々のセミヨンは辛口スタイルで、ボディはあくまでもライトに仕上げています。フレッシュなシトラスと花の香りがあり、酸が生き生きとし、味わいもフレッシュで、アルコール度数も低めです(10.5%)。

ハンター・ヴァレーは高温多湿の地として知られています。つまり、ブドウにとってはあまり良い条件ではないんです。そこで、なるべく早めに収穫をするようにして、フレッシュさが損なわれないようにしています。

Q.ブロークンウッドのリースリングのスタイルは?
A.オーストラリアで辛口のリースリングを生産しているワイナリーは、非常に多くありますが、当社では、リースリングは甘口タイプのみを生産しています。
マクラレーン・ヴェールのジェルカ・ヴィンヤードという単一畑のもので、収穫は6月に行ないます。2004年は貴腐菌が少し付き、大変良いものができました。

Q.イアンさんはシラーズのスペシャリストということですが、ブロークンウッドのシラーズには、どのようなものがありますか?
A.当社を代表する、つまりフラグシップとなるワインは、"Graveyard Vinyard"(グレーヴヤード・ヴィンヤード)です。
畑はニューサウスウェールズ(NSW)のハンター・ヴァレーにあります。グレーヴヤードの樹齢の若いブドウ"Baby Graveyard"からのワインも少しつくっています。

ハンター・ヴァレーでは他に、単一畑"Mistress Block"と、"Hunter Valley Shiraz"があり、SAのマクラレーン・ヴェールでは、単一畑"Rayner "Graveyard Vinyard""Wade Vinyard Block2 Vinyard"があります。

他に、マクラレーン・ヴェールとパサウェイのブドウをブレンドした"Brokenwood Shiraz(McLaren Vale/Padthaway)"があり、広い範囲の土地でシラーズをつくっています。

Q.フラグシップワインについて詳しく教えて下さい。
A.先ほどお話した"Graveyard Vineyard Shiraz"が、当社のフラグシップワインです。
ブロークンウッドが設立された1970年、ハンター・ヴァレーのグレーヴヤード・ヴィンヤードにシラーズを植えました。
重たい粘土質土壌のため、自然と収穫量も低く抑えられてしまう畑ですが、そのおかげで、凝縮感のあるブドウが得られます。
現在は、グレーヴヤードにはシラーズの他にシャルドネも植え、単一畑の"Graveyard Vineyard Chardonnay"としてリリースしています。

Q.マクラレーン・ヴェール(SA)とハンター・ヴァレー(NSW)のシラーズの違いは?
A.マクラレーン・ヴェールのシラーズの特徴は、果実味の甘さにあります。そのため、樽はアメリカンオークを使い、果実味を生かすようにしています。
ハンター・ヴァレーの方は、マクラレーン・ヴェールよりも果実味が抑えられたキャラクターですので、熟成樽はアメリカンオークとフレンチオークの両方を使っています。

Q.ブロークンウッドのワインには全てスクリューキャップが採用されているようですが?
A.はい、高級レンジのワインも含め、全てスクリューキャップを採用しています。というのも、ワインをベストな状態で飲んでいただくには、スクリューキャップこそ最適な栓である、ということを確信しているからです。コルクによるダメージを受けることはありませんし、新鮮さを保てますから。




<テイスティングしたワイン>

Brokenwood Semillon 2005
グリーンがかった透明ボトルに入れられ、見るからに爽やか!口にすると、とてもフレッシュ。最初は刺激的だった酸が、飲んでいるうちに落ち着き、骨格のある酸に変化します。
「2005年はとても強い年で、フルーツのニュアンスがよく出ています。料理を合わせるのなら、オイスター(牡蠣)がピッタリ。ワインがフレッシュなので、フレッシュな味わいの料理や食材に最適ですよ」とイアンさん。アルコール度数10.5%。

Brokenwood Shiraz (McLaren Vale / Padthaway) 2001
香りはおとなしめで、味わいもピュアできれいなタイプのシラーズ。ソフトで甘い口当たりですが、よく凝縮されています。
「2001年はとても良い果実ができました。収穫も多かった年でしたが、10年は持つワインに仕上がっています」(イアンさん)。アルコール度数は13.5%。

Brokenwood Hunter Valley Shiraz 2003
樹齢10年。涼しげな香りで、まだ少々タンニンが若く、暴れている感じがありますが、もう少し落ち着くと、ちょうどいい飲み頃になるでしょう。アルコール度数は13.0%。
「2003年はとても暑い年でした。このワインは、フレンチとアメリカンオークを50%ずつ使って熟成させています。ラム肉やロブスター料理に合わせてみてください」(イアンさん)。

Brokenwood Wade Block 2 Vineyard Shiraz 2003
とても深い色合いで、甘さと凝縮感があります。アルコール度数は14.5%と高め。
「よりリッチで、ダークチョコやチェリーリキュールのニュアンスが感じられます。アルコール度数が高いのに、アメリカンオークを使っているため(19ヶ月)にそれが和らげられ、あまりアルコールを感じないと思います。料理はオーソ・ブッコ(牛スネ肉の煮込み)などがオススメ」(イアンさん)。

Brokenwood Graveyard Vineyard Shiraz 2003
ブロークンウッドのフラグシップワイン。スパイシーで、レッドチェリーのニュアンスがあり、酸も非常に豊かで、優美さも漂います。アルコール度数は13.5%。「このグレーヴヤードのシラーズは、デカンター誌で金賞を受賞するなど、国際的に非常に高い評価をいただいています。嬉しいですね」(イアンさん)。

Brokenwood Jelka Riesling (botrytis affected) 2004
マクラレーン・ヴェールのジェルカ・ヴィンヤードから生まれた、甘口のリースリング。深いハチミツ色で、アプリコットのような甘い香りがあります。口当たりはなめらかで、ふっくらとした甘さもたっぷりなのに、酸のボリュームあるので、バランスもグッド。食事の最後にこういうワインを口にすると、ほっとします。アルコール度数は10.5%。
「この年は少し貴腐が付きました。チーズなどをつまみながら飲んでください。デザートのタルトタタン(リンゴの焼き菓子)にも合いますよ」(イアンさん)。



スクリューキャップ

今回テイスティングしたワインは、全てスクリューキャップが採用されていました。このところ、オーストラリアやニュージーランドなどを中心に、スクリューキャップを選択する生産者が多くなってきました。
中には、"流行"だからと、ただ真似ているだけのところもあるかもしれませんが、ブロークンウッドでは、きちんとした理念のもと、高級レンジを含めた全てのワインにスクリューキャップを採用しています。
ブロークンウッドのワインに共通して感じるエレガントできれいなスタイルは、スクリューキャップだからこそ、よりそれが具現されているのかもしれません。

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インタビューを終えて

白ワインのスペシャリストとしてブロークンウッドに着任したはずなのに、いつのまにか、シラーズでも大々的な評判を得てしまったイアンさん。

たしかに、オーストラリアではシラーズの存在を無視することはできません。
ですが、単なる"オーストラリアのシラーズ"ではなく、それぞれの土地の個性を生かし、単体で、また、いくつかの土地を組み合わせたシラーズを生み出している点が、ブロークンウッドの特徴です。

しかも、「これでもか!」という強烈なスパイシーさや力強さを前面に出しているワインとは一線を画し、洗練されたエレガントさが備わっています
だから、いつまで飲んでいても飲み疲れないし、料理とのマリアージュの可能性も広げてくれるのでしょう。

ブロークンウッドのワインは、今までは日本ではほとんどお目にかかれませんでしたが、いよいよ日本に上陸することが決まりました



フラグシップのグレーヴヤードのワインは少々お値段が張りますが、オーストラリアでも指折りの品質を誇るワインを、ぜひ一度、試してみてはいかが?

*ブロークンウッドのホームページ  http://www.brokenwood.com.au/              

(取材協力: ミナト・ワイン・インポート)

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