ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第15回 Weingut Selbach-Oster@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:15:54 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年10月11日)

第15回  Johannes Selbach  <Weingut Selbach-Oster>



<Johannes Selbach>
1959年生まれの46歳。
16歳の頃、家業を継ぎたい、自然に密着した仕事をしたいと決意。
ドイツのガイゼンハイム大学で経営学を2年学んだ後、アメリカに留学し、ドイツワインに興味のある教授に師事。研究テーマは、アメリカにおけるドイツワインのマーケティングについて。
卒業後は1985~87年までニューヨークでワイン関係の会社に勤務。
1988年にドイツに帰国してワイナリーを継ぎ、現在に至る。

ヨハネス・ゼルバッハさんは、ドイツといったらこの生産地を抜きにしては語れない、モーゼル・ザール・ルーヴァーのワイナリー 『ゼルバッハ・オースター』 のオーナーです。
今回は、日本へは何度も来ている日本通のゼルバッハさんに、モーゼルワインの魅力をたっぷりと伺いました。



モーゼルといったら“リースリング”!

ドイツワインのことをよく知らないという人でも、「モーゼル」という名前は、きっと耳にしたことがあるでしょう。

「モーゼル」とは川の名前です。フランスのボージュ山中を水源とする流れは、ルクセンブルグを通ってドイツに入り、大きく蛇行しながら流れてゆき、ゴブレンツでライン河と合流します。

このモーゼル川の上流はザール川とルーヴァー川に分かれているため、これらの3つの川の流域を合わせて「モーゼル・ザール・ルーヴァー」地域と呼んでいます。

モーゼル・ザール・ルーヴァーは、リースリング種からつくられる上質な白ワインを産する生産地として有名です。

モーゼル川がドイツ国内を流れる距離は約240km。
それだけの長さがあると、上流と下流ではだいぶ様子が違ってきます。上流地域は「オーバー・モーゼル」、中流は「ミッテル・モーゼル」、下流は「ウンター・モーゼル」と呼ばれていますが、銘醸といわれる畑は「ミッテル・モーゼル」に集中しています。
もちろん、ゼルバッハさんの『ゼルバッハ・オースター』も、このミッテル・モーゼルのツェルティンゲン(Zeltingen)という地にあります。




Q.ワイナリーの歴史について教えてください。
A.ぶどう園として1661年まで遡ることができます。
伯父がワイナリーを経営しています(J&Hゼルバッハ)が、私の父はぶどう栽培農家で、ワイナリーにぶどうを提供していました。
しかし、新しいワイナリーとして伯父のところから独立し、1964年から『ゼルバッハ・オースター』としてリリースしています。
ゼルバッハ・オースターは家族経営の小さなワイナリーです。

Q.モーゼルワインの最大の特徴は?
A.軽くてフルーティーな早飲みタイプから20~30年も熟成可能なものまで、幅広く楽しめるワインだということです。
モーゼルワインの飲み頃には3段階あります。

1) 若く生き生きとしたフルーティーさを楽しむ時期(5年未満)。

2) 人間でいえば中年期で、さまざまな複雑な要素が出てくる時期。晩年に備え、ミネラルやアロマが倍増します。

3) 人間なら晩年期で、今までとは違ったアロマをかもし出し、まろやかな味わいで、舌触りもよく、何杯でも楽しめます。

Q.では、あなたのワインの特徴は?
A.私は「リースリングのスペシャリスト」だと自認しています。
モーゼルの伝統を生かしたワインづくり、つまり、軽くてフルーティなタイプから、何十年も熟成させてから楽しむタイプまで、幅広く生産しています。
また、より畑の個性を反映させるワインづくりを行っています。

畑は16haありますが、ほぼ100%がリースリングで、ゼクト(=スパークリング・ワイン)用にヴァイスブルグンダー(=ピノ・ブラン)を少々植えています。
畑はすべて南向きで(大きく蛇行するモーゼル川には、川に対して南向き斜面の畑が存在します)、土壌は青いスレート(珪酸質の粘板岩の薄板)です。
傾斜は最大で70度もあり(!)、川に近い下の場所は湿気が多く、川面に反射する光を集めますが、山の上の場所は少し冷涼になります。


非常に急な斜面の畑

Q.ツェルティンゲンでは、いつ頃収穫を行うのですか?
A.私のところは、だいたい毎年10/18頃からリースリングの収穫を始めます。
畑の上下でも収穫時期が変わりますし、上級クラスのワイン用のぶどうは、アロマやエキス分をよりぶどうの粒にしみ込ませるため、11月の初旬に集中して収穫作業を行います。 。

Q.リースリングのシュペトレーゼクラスまでは、よく食事に合わせて飲むといわれますが、その上のアウスレーゼは、どのように飲んだらいいでしょうか?
A.モーゼルのアウスレーゼは食中酒としても楽しめます。
実は150年くらい前の晩餐会のメニューを見ると、メイン料理に合わせて、シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)の赤ワインとリースリングのアウスレーゼが提供されています。アウスレーゼは、昔から食中酒としても楽しまれていたんです。

私はアンティパスト(前菜)に合わせたり、ナッツや、アロマが豊かな青カビのチーズと一緒に飲むのが好きです。それほど甘くないデザートと合わせてもいいと思います。
ほのかな甘さを持ったアウスレーゼが私の理想です。アウスレーゼは1杯で満足するワインではなく、2杯、3杯と飲みたくなるワインです。

Q.現在、輸出の割合はどのくらいですか?
A.輸出が6割で、国内消費が4割です。アメリカ、北欧、日本の順に多く輸出しています。
イギリスは重要なマーケットとしては考えていません。アメリカでは、かつては安くて甘いドイツワインが人気でしたが、最近は辛口タイプの比率が上がってきました。アジアの各国もマーケットとして大事ですが、もっとも重要なのは日本です。
繊細で素材を生かした料理が多い和食は私も大好きで、和食には白ワインが合うと思っています。ですから、今後もぜひ日本に力を入れていきたいですね。


<テイスティングしたワイン>



Zeltinger Sonnenuhr Riesling Auslese
(1983、1985、1989、1993、1995、1998、2001、2003年の垂直テイスティング)

同じワインが20年でどう変化するか?という、興味深いテイスティングです。
日常生活では、熟成期間が20年を超えるリースリングを飲む機会はなかなかありません。しかし、熟成したリースリングがこんなにも気品があり、ふくよかで、しかも酸が十分に残り、ミネラル感も感じられるものなのだということを、今回のテイスティングで実感させられました。

ヴィンテージが若くなるに従って、軽快で爽やかなフルーティー感が増してきますが、どれを取っても酸と甘さのバランスが良く、それぞれの時期ならではのおいしさを感じます。

ですが、セルバッハさんは「リースリングを飲むには忍耐が必要です」と言います。
確かに、数十年の熟成を経たリースリングの味わいは格別なものです。私たちは少し急いだ飲み方をしているかもしれません。




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インタビューを終えて

ドイツのリースリングは、アメリカで"リースリング・ルネッサンス"を巻き起こしました。地元消費が多いドイツワインが海外に輸出されるようになり、しかも"リースリング・ルネッサンス"といわれるような人気が出るようになるとは、ゼルバッハさんのお祖父さんやお父さんには信じられないことなのだとか。

「リースリングのワインは確かに糖分が多いかもしれませんが、それに負けない酸を持っています。そのため、30年は成長し続けるワインなのです。ですから、今から30年後にまた新たなリースリング・ルネッサンスが起きるかもしれませんね」とゼルバッハさんは言います。

「今まで、熟成した赤ワインに興味を持っていた人が、熟成したリースリングに興味を持つようになり、さらに、フレッシュなリースリングにも興味を持つようになってきました」。

リースリングからは、極甘口から半辛口、辛口、さらにゼクトまで、幅広いタイプのワインがつくられています。また、料理とのコンビネーションによっても、それらの味わいに変化が生まれます。そうした奥深さも、リースリングの魅力のひとつでしょう。
この日本でも、近いうちに"リースリング・ルネッサンス"が巻き起こるかもしれません。


*ゼルバッハ・オースターのホームページ  http:// www.selbach-oster.de
            
(取材協力:ドイツワイン基金)

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第14回 Bodega NQN@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:10:42 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年9月11日)

第14回  Luis Maria Focaccia  <Bodega NQN>

アルゼンチンといえば情熱的なアルゼンチンタンゴ、そしてサッカー!
今回のゲストは、その情熱溢れるアルゼンチンからやってきました。
パタゴニア地方のワイナリー"NQN"(エヌ・キュー・エヌ)のオーナー、ルイス・マリア・フォカッチアさんです。



<Luis Maria Focaccia>
パタゴニア地方ネウケン出身。
本業は弁護士。現在、弁護士の仕事とワイナリーの仕事は半々。「弁護士を引退したら、ワイナリーに専念できそうですね?」と尋ねたら、満面の笑みで「ええ、もちろん」と答えてくれたのが印象的。好きなワインはマルベック。
日本のテクノロジーに非常に興味があり、今回の来日では愛知万博や秋葉原も見学してきたとか。


パタゴニアって、どこ?

アルゼンチンのワイン生産地といったら"メンドーサ"。ぶどうの生産量も、95%以上をメンドーサエリアが占めています。このメンドーサと首都ブエノス・アイレスを含む地帯は"Centro"(チェントロ)(中央の意味)と呼ばれ、チェントロの南に南北に長ーく広がるのが"Patagonia"(パタゴニア)地方です。

フォカッチアさんのワイナリーは、このパタゴニア地方の"Neuquen"(ネウケン)という地にあります。  

彼のワイナリー名の"NQN"は、なんだか不思議な名前ですが、実はネウケン(Neuquen)から取っています。(ネウケン空港のコード名も"NQN"です)。

フォカッチアさんは、まずネウケンからブエノス・アイレスに飛び、次にブラジルのサン・パウロへ。
そして北米のニュー・ヨークと3回乗り継ぎ、38時間かけて日本にやってきました!気が遠くなるほどの長旅です。




Q.ネウケンはどのような土地ですか?
A.メンドーサの800km南に位置しています。チリとの国境にはアンデス山脈がありますが、ここは海抜300m程度です。雨は年間で180mlと少ない半砂漠地帯です。夏は暑く(40℃くらいまで上昇)、冬は寒くて(マイナス7~8℃まで低下)、また、一日の気温差も18℃くらいあり、寒暖の差が激しい土地です。

Q.いつからこの土地でワインをつくり始めましたか?
A.2001年にブドウを植え、2003年からワインを生産しています。
2003年は8万本、2004年は42万本、2005年は92万本の生産量でした。2004年から生産量が増えたのは、ワイナリーを2004年4月30日に本格的に稼動させたからです。醸造施設だけでなく、レストランも併設しているんですよ。

Q.なぜネウケンでワインづくりをしようと思ったのですか?
A.私はネウケン出身で、ここにリンゴやナシの果樹園を持っていました。この土地には愛着があります。
また、ここは半砂漠地帯のため量は望めませんが、品質を追求するのであれば、素晴らしいブドウが得られると思ったからです。元々ワインが好きで、ワイナリーを持つのが夢でした。ワイナリーは私の末息子のようなものです。

Q.ネウケンはワインづくりに適した土地ですか?
A.ブドウを植える前は、まったく手の入っていない荒地でした。土壌は砂地に小石が混ざっています。それを切り拓き、162haの土地にブドウを植えました。
風が強い土地柄で、空気がとても乾燥しますが、それがブドウの健康状態をよい状態に保ってくれます。

Q.半砂漠地帯ということですが、灌漑は行っていますか?
A."ドリップ・イリゲーションシステム"を採用しています。
畑のセクターごとにセンサーを取りつけ、コンピュータで湿度を管理し、灌漑を行います。畝の間には砂よけの雑草を植え、また、雹よけにネットを張ったりということもしています。

Q.NQNで生産しているワインは?
A.品種は、白はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを、赤はマルベック、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールです。全て手摘みで収穫します。
醸造に関しては、メンドーサからエノロゴを呼び、フレンチ・オーク、アメリカン・オークなども使ったワインづくりをしています
現在は4つのレベルのワインを生産しています。さまざまな品種、レベルのワインを生産するのは、マーケット戦略を考えてのことです。

Q.マーケット戦略というのは、海外を意識しているということですか?
A.国内と国外は、今は半々です。国外ではアメリカに輸出していますが、ブラジルへの輸出が決まっています。メキシコとドイツは途上中です。日本はまだですが、近いうちにぜひ、日本のみなさんにも飲んでいただきたいですね。

Q.アルゼンチンでは、NQNのような新しいワイナリーは増えていますか?
A.ここネウケンでは、立ち上げて4~5年という若いワイナリーが5つあります。どこも同時期に立ち上げたところで、ネウケン全体では2000haになります。
他の地域でも、新しいコンディションを持った土地を求め、メンドーサ以外の新しい地域に広がる傾向が見られます。




<テイスティングしたワイン>

1) Malma Pinot Noir 2004
ピノ・ノワール100%で、アルコール度数は14.5%!完熟したフルーツの凝縮感が強く、ボリュームのあるボディを持った力強いワインですが、ビロードのように超しなやか。

2)Malma Merlot 2004
メルロー100%。80%をステンレスタンクで、20%を樽で熟成させています。樽はフレンチオークとアメリカンオークの両方を使用。
色は非常に濃厚。香りはフローラルな若々しさを感じ、口にするととてもなめらかです。花のような豊かなアロマを持った、きれいなスタイルのワインです。

3)Malma Malbec 2004
アルゼンチンのお家芸ともいうべきマルベック100%。こちらも80%をステンレスタンクで、20%を樽で熟成させています。紫の色が非常に濃く、深みがあります。フルーツのジャム、コンポートのような甘い香りが華やかで、果実味が口いっぱいに広がります。タンニンも豊富でパワフルなのに、とてもまろやかに感じます。



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インタビューを終えて


NQNのワインには、上から
"セレクション"、"マルマ・リゼルヴァ"、"マルマ"、"ピカダ" の4つのラインナップがあります。

ブランド名となっている"マルマ(Malma)"は、先住民であるマブーチェ族の言葉で"誇り"を意味するのだとか。


こちらは マルマ・リゼルヴァ

アルゼンチンワインというと、地域では"メンドーサ"、品種では"マルベック"という認識があり、「大きな肉の塊を濃厚なマルベックのワインで流し込む!」みたいなイメージもありました。
しかしここ数年で、ネウケンをはじめ、各地方で新しいワイナリー、そして新しいワインが誕生しつつあるのです。

特に国際マーケットを意識しているワイナリーでは、クオリティが高く、かつ洗練されたワインを次々と生み出しています。有機栽培に取り組むところも増えてきました。

しかし、そうしたワインは、まだまだ日本ではお目にかかれる機会がほとんどないというのが実状です。
近いうちにぜひ、みなさんに新しいアルゼンチンワインをごく気軽に飲んでいただき、驚いてもらいたいものです。


*NQNのホームページ   http://www.www.bodeganqn.com.ar

(取材協力:アルゼンチン大使館)

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第13回 Chateau Pape-Clement@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:05:19 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年8月11日)

第13回  Anne Le Naoul  <Chateau Pape-Clement>



今回は、フランスのボルドーから素晴らしい生産者をお迎えしました。
グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも指折りの名門、
シャトー・パプ・クレマンのワインメーカーである、アンヌ・ル・ナウルさんです。

<Anne Le Naoul>
パリ生まれ。料理学校の先生をしていた父と、ホテル業界を経て"ゴー・ミヨ"誌の編集に携わっている母の影響を受け、ワイン業界へ。
モンペリエの醸造学校でディプロマを取得後、オーストラリアのヤラ・ヴァレーのワイナリーでアシスタント修業。その後はシャンパーニュのマム、シャブリのラロッシュなどを経て、パプ・クレマンに入社。
好きなワインは赤で、品種ではメルロー。自分のつくるワインはもちろん、ラングドックあたりのものもよく飲むとか。


パプ・クレマンは、グラーヴの"クリュ・クラッセ・デ・グラーヴ"(赤ワインは12シャトー、白ワインは9シャトー)に格付けされている超一流シャトーです。

現在のオーナーはベルナール・マグレ氏で、他にもメドック格付け4級のシャトー・ラ・トゥール・カルネをはじめ、フランスではボルドー地方やラングドック地方、国外ではスペイン、アルゼンチン、カリフォルニア、ウルグアイ、モロッコなどの32のワイナリーを経営しています。
また、コンサルタントには、あのミッシェル・ローラン氏が参画しています。



Q.パプ・クレマンには何人のワインメーカーがいますか?
A.当社では、パプ・クレマン以外のワインも数多くつくっているので、6~7人のワインメーカーがいます。が、女性は私ひとりで、しかも、私が一番年下です。

Q.あなたの担当範囲は?
A.ボルドー地域とカリフォルニアのナパ・ヴァレーで、7つのぶどう園を管理しています。そのため、ナパには年に何度も出向きます。

Q.オーナーのマグレ氏は、なぜそんなにたくさんのワイナリーを経営しているのですか?
A.みなさんに違ったワインを届けたいためです
例えばパプ・クレマンはグラン・クリュクラスのワインで、ラ・トゥール・カルネは4級格付けですが、もっと気楽に飲めるものも提供したいと考えています。また、ブティック・ワインといった、稀少価値の高いワインもつくりたいと考えています。
それらを、ネゴシアンとしてではなく、"ワイン生産者"として提供したいと思っているので、ワインにはマグレのサインを入れ、保証の印としています。私たちは、プライスよりクオリティの追求に力を入れているのです。

オーナーは現在68歳ですが、新しい考えを持っている人です。ボルドーは、シャトー側の主張が強いところが多いのですが、消費者の求めるものを常に気にかけています。サインには、消費者を失望させてはいけないという、オーナーの気持ちが込められています。

Q.パプ・クレマンのワインづくりのポイントは?
A.ワインづくりには、"エグ味(苦味)"と"酸化"といったマイナスの要素の危険性を伴いますが、それをどれだけ押さえるか、ということに最大の注意を払っています。
例えば、よく熟していない未熟なぶどうだったり、また、醸造の際にぶどうの種が潰れたり、茎や葉っぱなどの緑の部分が混ざったり、ということでエグ味が出てきますので、そうならないような作業をします。

具体的には、房の一粒ずつを手で外しながら丁寧に選別しています。

これは2001年から始めたことなのですが、収穫時の2週間は150人体制でこの作業に当たります。そのための人員を確保したり、特別な部屋を用意したりと、非常にコストがかかりますが、品質のためには仕方がありません。
これにより、ワインにエグ味が出ないようになりますし、実に傷がつかないので、酸化を防ぐこともできるのです。

Q.すべてのワイナリーで、一粒ずつ取り外す作業を行っているのですか?
A.全てではありません。機械を使って除梗するところもありますが、なるべく手作業に近づけるような方法を取っています。

Q.フランス以外でワインをつくる理由は?
A.我々は常に良いぶどうを求めています。良いぶどうを求めるということは、良い畑を求めるということです。良い畑を求めていたら、例えば、スペインであればトロとプリオラートにポテンシャルの高いテロワールを持った畑が見つかったのです。そこで我々の持てる技術を駆使し、良いものを最大限に引き出したいと考えてます。

Q.今後のプロジェクトの予定は?
A.現在、南アフリカやイタリアで土地を探しているところです。イタリアではシチーリアに素晴らしい畑がありそうです。



<テイスティングしたワイン>  


La Croix du Prieure 2002(ラ・クロワ・デュ・プリウレ)
AOCプルミエール・コート・ド・ブライエの赤ワイン。
収穫量を26hl/haに押さえ、最高のテクニックを使ってつくった、生産本数3,000本というブティック・ワイン。メルロー90%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%を100%の新樽で熟成。
果実味が凝縮し、タンニン量も豊かな力強いワインで、今からでも充分おいしく飲めますが、長期熟成のポテンシャルを持っているので、今後が楽しみです。


Chateau Fombrauge Blanc 2003(シャトー・フォンブロージュ・ブラン)
AOCボルドークラスであるにもかかわらず、収穫量は28hl/haとかなり低く押さえています。ソーヴィニヨン・ブランを中心に、セミヨンとソーヴィニヨン・グリと少量のミュスカデルをブレンドした白ワインです。
フレッシュな状態の2~3年以内に飲むことを勧められましたが、新樽を使っているので、樽の風味がしっかり感じられ、ワインに厚みもあります。発酵から瓶詰めまで、すべて重力のみで作業され、フィルターもかけていません。


Chateau La Temperance 2003 (シャトー・ラ・タンペランス)
AOCオー・メドックの赤ワインで、メルロー主体に、カベルネ・ソーヴィニヨンとプティ・ヴェルドがブレンドされています。収穫量は48hl/haで、つくりもシンプルなので、ハレの日よりは週末に気軽に楽しんでほしいワインだそうです。たしかに、まろやかで飲みやすく、料理によく合います。
「このワインはフォアグラの脂に合うと思います。日本で食べたマグロの赤身にもよく合いましたよ」とアンヌさん。



Chateau Pape-Clement 1984 (シャトー・パプ・クレマン)
カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー40%で構成されています。
20年の熟成の時を経たワインは非常にやわらかくこなれ、いい飲み頃を迎えていました。こういうワインを飲むと、熟成したボルドーの素晴らしさを再認識させられます。(マグナムボトル)

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インタビューを終えて

ボルドーも男性中心の世界で、女性のワインメーカーはまだまだ少ないそうですが、有名シャトーでも少しずつ女性が活躍しはじめたようです。
ある統計によると、香りや味覚に一番敏感なのは、若い世代の女性なのだとか。
ということは、アンヌさんのような人材が醸造の分野に積極的に携わっていくことは、実は非常に理にかなっているといえるでしょう。
しかもアンヌさんは、両親の影響で"香り"と"味"に対して敏感に育ち、自然にワインの道に進んだ、というのですから。

彼女たちを起用するかどうかはオーナー次第かもしれませんが、伝統的な体質が根強く残るボルドーにも、これからはマグレ氏のようなオーナーが増え、人材の起用だけでなく、シャトー経営のさまざまな面において、驚くような変化が見られるようになっていくのかもしれません。


*ホームページ  http://www.pape-clement.com


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第12回 Chateau de la Roche@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:00:28 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年7月11日)

第12回  Louis-Jean Sylvos  <Chateau de la Roche>
   


今回のゲストのルイ=ジャン・シルヴォさんに会うのは、実はこれが二度目です。彼から、「また日本に行くから、ぜひ会いましょう!」とメールをもらった私は、「もちろん!」と、返信しました。


<Louis-Jean Sylvos>
1946年生まれの59歳。シャトー・ド・ラ・ロッシュのオーナー兼ヴィニュロン(ぶどう栽培家)。前職を引退後、ワインビジネスの世界へ。


シャトー・ド・ラ・ロッシュ は、ボルドーのシャトー?と勘違いしてしまいそうな名前ですが、フランスのロワール地方にあるシャトーです。

ロワールのワイン生産地域は、ロワール河を河口に近いナント地域から上流に上ってくると、アンジュー&ソーミュール地域、その上流のトゥーレーヌ地域、さらに内陸の中央フランスとなっています。

シャトー・ド・ラ・ロッシュは、 "フランスの庭園"と呼ばれるトゥーレーヌ地域の、アゼイ・ル・リドー(Azay-le-Rideau)にあるシャトーで、その歴史は1580年に遡ります。
シャトーが所有する土地は35haで、うちぶどう畑は6.5haあり、シュナン・ブランを中心に、カベルネ・フラン、グロロー、コー(マルベック)種が栽培されています。
土壌は粘土石灰岩質で、シレックスと呼ばれる火打石も混ざっています。



Q.たしか、あなたがこのシャトーを手に入れたのは最近ではありませんでしたか?
A.はい、私がこのシャトーを買ったのは2000年でした。その前は、私は建築家で、ワインとは全く関係ない仕事をしていました。フランスでは、ビジネスマンが引退した後、好きなワインづくりをはじめるということはときどきある話です(笑)。

Q.ということは、昔からワインが大好きだったということですね。毎日飲みますか?
A.もちろん、ワインは毎日飲んでいますよ(笑)。

Q.あなたのワインづくりのコンセプトは?
A.まず、自然な農法でぶどうを育てることにあります。

Q.ということは、ビオディナミ(*1)を採用しているのですか?ロワールではビオディナミの生産者が多いようですが?
A.いいえ、特にビオディナミというような名前のついたものでなく、本当に伝統的な自然な方法なのです。
化学的なものは使いません。施肥は剪定した枝を利用していますし、うねの間に草を生やし、害虫や雨対策をしています。
ロワールではたしかにビオディナミという看板を掲げている生産者が多いのですが、私は敢えて言いません。

Q.今日のワインについてコメントをお願いします。
A.私のところでは発泡性のワイン(ペティアン)もつくっていますが、今回は持ってきませんでした。とても泡がやわらかいスパークリング・ワインです。


Touraine Azay-le-Rideau Blanc Sec 2004
シュナン・ブラン100%でつくっている白ワインで、セック(辛口)ですが、やわらかい果実味があります。

Touraine Azay-le-Rideau Blanc Demi Sec 2003
ご存知のように、2003年のヨーロッパは猛暑でしたので、ぶどうの糖度が上がり、最初の2004年のワインと同じシュナン・ブラン100%ですが、ワインはドゥミ・セック(半辛口)になりました。しかし、かなり強い甘味を感じるかと思います。

Touraine Rose 2002
グロロー種を使ったロゼです。これは、ノドが渇いたときに冷たーくして飲むと、とても美味しく感じるワインです。少し発泡している感じもあります。

Touraine Rouge 2002
カベルネ・フランでつくった、やわらかくやさしい口当たりの、まろやかな赤ワインです。


(*1)ビオディナミ:
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。



≪さて、ワインをテイスティングしてみると…≫

この地域のシュナン・ブランの白ワインは、大概やさしい印象を受けますが、シャトー・ドゥ・ラ・ロッシュの白ワインは本当にソフトで、しかもナチュラルな魅力にあふれています。
しかし、2003年の甘さにはかなり驚きました!ドゥミ・セックなんてものではなく、しっかりとした甘さで、フォアグラやデザートなどにも合わせてみたくなるほど。
同じ構成なのに、2004年はミネラル感がしっかりと感じられ、非常にクリーンなスタイルで、ルイ=ジャンによると、2004年は"普通の年"だったので、こちらがこのシャトーの白ワインの典型のようです。

ロゼワインは透明感のある淡いローズ色が美しく、外観はうっとりするほどですが、口にすると生き生きとした酸が素晴らしく、非常にフレッシュでキリッとした味わいです。
気持ちがスカッとし、リフレッシュに最適のワインで、夏のバカンスに連れて行きたくなります。

カベルネ・フランを使った赤ワインには青臭いものが見られますが、ルイ=ジャンのつくる赤にはそんな面は一切なく、タンニンがよく熟してなめらかで、飲んでほっとする心地良いやさしいワインです。

これらのワインに共通するのは、"つくりすぎていない"こと。
わざとらしさがなく、自然で、すーっと入ってきます。
ルイ=ジャンの言う「自然な農法でつくったぶどう」が素直に生かされているのだなぁ、と実感しました。



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インタビューを終えて

"元建築家"というと、なんとなくキッチリとして生真面目そう、というイメージがありますが、ルイ=ジャンはとても気さくで、ユーモアもたっぷり。
たしかに、素朴な"農夫"という雰囲気ではありませんが、「自由気ままにやってるさ…」と、田舎暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきます。
こんなルイ=ジャンがつくるワインたちは、どれも伸びやかで、ナチュラル。
ワインはつくっている人を表す、というのは本当です。

ロワール地方は、ぶどうの品種もさまざまで、甘口から辛口まで、バラエティ豊かなワインがつくられています。
また、このところAOCに昇格する村も多く、ビオディナミや有機栽培の生産者も多いことから、注目されつつあるエリアでもあります。

ワインは値段も手頃で、味わい的にも普段の生活にすーっとなじめそうなものが多く、ルイ=ジャンのワインも正にその通り!

フランスには、ボルドーやブルゴーニュをはじめ、素晴らしいワイン生産地がたくさんありますが、肩肘張らずに楽しめるロワールのワインは、もっと飲まれてもいいのにね…、と強く感じた私でした。

*ホームページ http://www.chateaudelaroche.com/(日本語バージョンもあり)

シャトーでは、ツアー客の見学受け入れのほか、宿泊施設も備えています。さまざまなイベントも開催されていますので、ロワールのシャトーめぐりのひとつに加えてみてはいかがですか?ルイ=ジャンとは英語でも会話可能です。

*取材協力: 横浜君嶋屋


以前に会った時のルイ=ジャン。・・・かなり変化が(笑)


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第11回 Weingut Josef Leitz@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 12:55:33 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年6月11日)

第11回  Eva Fricke  <Weingut Josef Leitz>



今回は、久しぶりの女性生産者の登場です!
この5月、ドイツワイン基金の『Riesling &Co. World Tour 2005』が大阪、東京、横浜で開催されましたが、そのプレゼンテーションに『ワイングート・ヨセフ・ライツ』の代表として参加したのが、エヴァ・フリッケさんです。

<Eva Fricke>
ラインガウ出身の27歳。
ライツ醸造所の娘さんではありませんが、栽培と醸造のディプロマを取得後、スペインやオーストラリアのワイナリーで研修を重ね、2002年からライツに勤務。


ライツ醸造所は、ドイツワイン生産地の中でも素晴らしいワインを生み出すといわれるRheingau(ラインガウ)のリューデスハイムにあり、設立は1985年と比較的最近です。当初は花屋との兼業で、畑も3haしかなく、近くの人たちにワインを売るような小さな家族経営のワイナリーでしたが、徐々に畑を拡大し、2000年になる前くらいから輸出に力を入れ始め、生産量を伸ばしてきています。日本ではまだ輸入会社が決まっていませんが、ぜひ積極的に売り出していきたい!と意気込むエヴァさんに、ライツのワインをテイスティングしながら、色々なお話をうかがいました。





1) Riesling Dragonstone 2004
QbAクラスに該当するややカジュアルなワインで、半辛口よりやや甘めのタイプ。果実味が豊かでフルーティで、酸味がしっかりしています。
エヴァさんのおすすめの飲み方は、アペリティフとして、また、東南アジアの力強い味付けの辛い料理などと一緒に。夏にテラスで気軽に、という「テラスワイン」にも最適とのこと。




2) Rudesheimer Bischofsberg Riesling Auslese 2004
非常にキレイでクリーンな、薫り高いワインで、まだ少々発泡しています。というのも、これはサンプルで持ってきたもので、ラベルに書かれた「Auslese」の文字はエヴァさんの手書き。繊細でエレガントな甘さが魅力の、上質なワインです。 畑は山
の斜面の石とロームの混ざった土壌で、「かなり個性的な味を楽しんでもらえると思います」とエヴァさん。




3) Rudesheimer Kirchenpfad Riesling Beerenauslese 2002 (左)
4) Rudesheimer Kirchenpfad Riesling Trokenbeerenauslese 2003 (右)
どちらも素晴らしい甘口ワイン(お値段も高価です!)で、BAの方はなぜかイチゴのようなベリーの甘いニュアンスを感じました。
TBAは甘さの凝縮感が非常に強く、とろーんとした口当たりで、アプリコットのフレーバーがあります。

2003年はドイツも非常に猛暑で乾いた年であったため、貴腐がつかず、ぶどうはカラカラの干しぶどう状態になったとのこと。

この極甘口に合うエヴァさんのオススメマリアージュは、青カビのチーズやフォアグラ。
今回はこの甘口ワインと一緒に、激甘の赤いベリーのソース(イチゴやラズベリーなど)のかかったデザートをいただいたのですが、極甘口といえど酸がしっかりしているので、激甘のデザートとも素晴らしいマリアージュでした。


ライツのワインは、「エレガントでミネラルが豊富」で、「酸と残糖のバランス」を重視するスタイル。
辛口のトロッケンタイプのワインにも果実の自然な甘さを感じるのは、試飲をして、いいと思った段階で発酵を止めるので、発酵されずに残る果糖によるものとか。



Q.あなたのライツでの役割は?
A.夏から秋は、ほとんど畑に出ています。従業員はオーナーと私と事務担当の3名だけなので、私は、栽培、収穫から醸造までの全ての過程に関わっています
また、経営責任者でもあります。ラインガウ地域は男性社会なので、女性がここまで担当させてもらっているのは珍しいことです。

Q.ライツ醸造所について詳しく教えて下さい。
A.当初畑は3haだけでしたが、その後、小さい良い畑を徐々に買い集め、現在は26haを所有しています(生産量は年間約19,000ケース)。
しかし、大量生産ワインではなく、品質に注意したワインづくりを行っています。また、昔風の古臭いイメージから脱却し、新しいイメージを打ち出していくための、さまざまな工夫を試みています。 ワインは100%リースリングのみです。

リューデスハイムの畑は、場所によりローム(黄土)やシーファー(粘板岩のスレート)といった土壌の違いがあるのですが、その土壌の違いが出せるようなワインづくりをしています。
もちろん、化学肥料や農薬などは使わず、自然のままの栽培を行い、畑仕事は100%手作業です。
9月から10月にかけて房を選りすぐり(グリーンハーベストに該当)、1本の樹から1.2~2.0kgの実が得られるよう、約4~6房を残します。
収穫は10月から11月にかけてで、平均収穫量は60hl/ha(最良の畑では30hl/ha)です。

Q.良い畑は、そう簡単に手に入るものなのですか?
A.この地にはかつて、小さくて古いワイナリーがたくさんありました。しかし、後継者がいないところは畑を手放さざるをえず、そうしたところから良い畑を選んで買うのです。
私たちは本当に良い畑を持っています。が、現在VDP(*1)でエアステス・ゲヴェックス(*2)と認定されている畑は持っていません(ライツはVDP会員)。認定されている畑よりも私たちの持っている畑の方が良いものがあるのですが…。私は、VDPの認定基準には疑問を感じています 。

Q.新しいイメージを打ち出している、という具体例は?
A.例えば、アメリカやイギリス向けに力を入れている「ドラゴン・ストーン」ですが、モダンなデザインのエチケットにし、商品名も英語の「Dragonstone」としました。これだけで年間7万リットルも売る人気商品です。
これはドイツ国内ではほとんど売られていないのですが、アメリカでは、ドイツの辛口リースリングといえば「ドラゴンストーン」と認識されるまでになっていて、非常に成功しています。
(*「Dragonstone」は商標登録もしています) 。

Q.現在の輸出の状況は?
A.生産量の80%が輸出で、輸出先も、アメリカ、イギリスに加え、デンマークやノルウェー、カナダなどにも拡大してきました。日本では、今回のプレゼンテーションでも人気の高かった「Dragonstone」と「Rudesheimer Bischofsberg Riesling
Spatlese Trocken」、「Rudesheimer Berg Roseneck Riesling Spatlese」の3アイテムを売り出したいと考えています。日本のマーケットは私が担当する予定です。


(*1)VDP:
"ファウデーペー"と読み、ドイツ優良ワイン生産者協会のこと。

(*2) エアステス・ゲヴェックス
ラインガウ地域の辛口ワインのトップ・クオリティのものに付けられる肩書きで、格付けされた畑のぶどうからつくられたものに限るなどの厳しい条件があり、VDPによって認定が与えられる。




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インタビューを終えて

ドイツでも、学校を卒業してもすぐに仕事には就かず、しばらくはフラフラしている若者が多いそうですが(どこの国も同じ?)、エヴァさんは卒業と同時に世界各地のワイナリーで実践を積んできたので、若くして今の地位を得ることができた、と言います(エヴァさん、かなりのしっかりものです!)。

ドイツでも伝統あるラインガウ地域というと、気難しそうな年配の男性が口数少なくワインづくりをしているような図を想像してしまいがちですが、ライツでは、消費者の嗜好に合わせた、ターゲットを絞り込んだワインづくりや販売戦略を行い、また、エヴァさんのような若い女性を重要なポジションに置くなど、革新的ともいえるワイナリー経営で、成功を収めています

これからは、このライツのような考えを持ったワイナリーがどんどん出てきそうですし、ドイツは確実に変わりつつあります。

*ライツでは生産するワインの100%がリースリングということですが、実は0.5haのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の畑も所有しており、今年はそれから新しいワインをつくる予定とのこと。
エヴァさんは「赤のゼクトなんてどうかしら?」と言っていましたが、果たしてどんなワインが出来上がるでしょうか?注目です。

(ライツ醸造所のHP: http://www.leitz-wein.de


*取材協力: ドイツワイン基金

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