とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「日本人の美意識」熊倉功夫さん

2011-06-28 21:53:54 | 社会人大学
先週の社会人大学のお話である。
今回は、現静岡文化芸術大学学長で文学博士の熊倉功夫さんだ。

熊倉さんのプロフィールは下記のとおりだ。
・1965年 東京教育大学文学部卒業。
・1982年 筑波大学教授。
・2004年 国立民族学博物館名誉教授
・2004年 林原美術館館長
・2010年 静岡文化芸術大学学長。
おもに茶の湯についての研究・評論活動で知られる。

この日の講演は「日本人の美意識」というタイトルで、「花鳥風月」について詳しく話された。花鳥風月(かちょうふうげつ)とは、美しい自然の風景や、それを重んじる風流を意味する四字熟語である。一文字ずつに分けてみると、花は植物、鳥は動物、風は自然、月は宇宙を意味している。つまり人間以外の自然界すべてを指しており、これがいつしか転じて、自然を愛しむとか、風流を好むという意味で使われるようになったというわけだ。ただ、このような言葉を使ったり、意味を理解できるようになるのは歳をとったという証だろう。

以下、各文字ごとの薀蓄を列記してみた。まだあったかもしれないが、いちおう覚えていることを挙げてある。とにかく、いろいろなことを知っている先生であった。

「花」
・なんといっても花はサクラ。お花見といえばサクラを見ることで、これは日本人の大切な行事だという。震災で自粛するなんて話があったが、自粛するなんてことはお花見の意味がわかってない人がいう事なのである。サクラの「サ」は神の名を表し、「クラ」は坐という字に通じ、おいでになるという意味を表す。つまり、サクラは神の木を表すのである。神をもてなすために酒を出し、飲み食いをするというのは、正しい行事なのだ。そして、花見をすることは、その年の様子を占うことでもある。ただ花を観賞して宴会をするのではないのである。
・サクラの散り際の美しさを称えるのは、再びよみがえるという事に通じる。だから、通常家の庭には植えず、学校や墓地に植えることが多いのだという。
・松は、サクラに対して常に変わらない物を表す。正月に門松を飾るのは、門松が依代(よりしろ)になるからである。依代とは、神に来てもらうための目印である。
・神とは姿が見えないものだが、形を現したものが翁である。翁は年寄りの姿をしている。年をとっているほど知恵があり尊敬すべき人、すなわち神である。これは、年寄りを大事にしなければならないという事に通じる。

「鳥」
・今ではカラスといえば嫌われることが多いが、本来カラス(ヤタガラス)は神の使いとされていた。
・ハトは、八幡様のおつかい。
・かつては、ニワトリは食べてはいけない鳥だった。庭で飼い、時を告げる鳥として親しまれていた。しかし、安土桃山時代にポルトガル人の影響により食べられるようになってしまったという。

「風」
・日本ほど美しい国はない。四季折々に風景が変わる。
・松風とは茶の湯の用語のひとつで、釜の湯のたぎる音。このように、茶の湯は日本人の感性を育てていった。
・雪が美しい日本の風景。

「月」
・月とは、大宇宙を象徴する言葉である。日本人は、太陽よりも影に隠れた月に共感を持つようになった。
・月=影(偶数)、日=陽(奇数) これらを組み合わせることによって昔は未来を占った。
・陽が重なる日 1/1、3/3、5/5、7/7・・・は季節の変わり目の日であり 厄払いの日でもあった。けっしておめでたい日ではなかった。
・線香の香りは、悪魔祓いの意味があり悪霊を追い払うために焚かれる。