WALKER’S 

歩く男の日日

16日目 (1) 窪津から大岐海岸を望む

2008-07-11 | 08年四国の旅
 昨夜は、風呂、洗濯が終わって、夕食のパンも食べ終わり、あとは休むだけというところで、女将さんが部屋にやってきて、「夕食できたから食べて、お接待するから」と声をかけてくれる。おかしいでしょ、それがごく当たり前のように、普通にさりげなく声をかける。お接待は断ることができないので、もちろんありがたく頂くことにしたけれど、それでも半分は申し訳ないという感じが残る、2食付きで予約していたら全く同じ手間で、3000円収入が多かったのですから。メニューはカツオのたたき、茄子と筍の煮物、野菜の天ぷらとお漬け物。パンを食べたあとなのに、お代わりもして残らずきれいに頂くことができる。それだけ体力を使っているということなのでしょう。
 一夜明けて、6時に発とうと階下に下りると、また「あと5分でできるからご飯食べていって」と半ば強引に食堂へ通される。さすがに、これにはたまげました。もう何と言っていいか判らない。四国の宿は商売だけじゃない、と言っても信じない人がいる。でもこれはいったい何なのですか。これだから、ほかの所を歩く気になれないのです。最初のお遍路が終わったとき、もう一度歩きたいと思った大きな理由は足摺岬の宿でものすごく親切にされて、もう一度その人たちに会いたいと思ったからです。四国の魅力はそういう人たちがいっぱいいるということに尽きると思う。
 四国にはお大師さんがいる、お大師さんを信じている人がいる、自分では全くそうは思わないけれど、お大師さんと一緒に歩いている、そう信じてお接待をしてくださる人がいる。そのことを決して忘れてはならないと、改めて強く思う。しっかり歩かねばならない、しっかりお参りしなくてはならない、そういうことでしかお接待に答えることはできない。身の引き締まる思いで、ご主人と女将さんにお礼を言って民宿をあとにする。また来年戻ってくる、心に誓いながら。
 お代わりもして満腹に近いので体は少し重い。昨年はこの打ち戻りの区間は最高に調子がよかった。飛ぶように歩けたという感じが残っている。でも、今回はちょっと違う。天気は昨日とうってかわって快晴、すでに気温が上がっているのを感じる。すでに朝日は高くまぶしい。
 足摺岬からの打ち戻りには5つのルートがある。月山神社ルート、今ノ山峠ルート、下の加江川ルート、真念庵ルート、真念庵から真念遍路道ルート。ぼくは過去5回でこれらを全部歩きました。毎回違うルートを行った。今回は一番楽な真念庵ルートを行くことにする。昨年のルートだったのでタイムを比較したいということもある。それと、昨年は初めて足摺岬の東岸を戻って、多くの歩きの人とすれ違うのがとても良かった。土佐から須崎、窪川までに会った多くの人とすれ違うことができたのです。ぼくのように速い歩きだと一度追い抜いてしまうとそれっきりになってしまうのですが、この打ち戻りだけは何人もの人と再会できるのです。