WALKER’S 

歩く男の日日

多々羅大橋

2008-09-30 | 08年青春18きっぷ
 美術館は瀬戸田港から10分もかからない所にある。港から続く商店街を通り抜けていく、その商店総てに美術館のポスターが貼ってあった。6月から行われている企画展「旅のはじまり~そして今」のポスター、青年時代の麦わら帽をかぶった自画像が大写しに印刷されたポスター。この絵を見て平山郁夫の作品だと判る人がどれだけいるか、それほどこの絵はシルクロードの絵や、古都奈良の絵や、仏教画とはかけ離れている。彼のような大家でも、20代の頃は、どういう絵をどういう風に描くか、ということに関しては定まっていなかった。その壁を越えるのに相当苦しんだ、と玄関ホールの紹介ビデオの中で語っていました。彼の小学生時代、中学生時代の絵も展示されていたのですが、本当に想像を絶するうまさ。特に中学時代の武者絵の細かく的確な描写など、天才少年というしかない。でも上手いだけではテクニックだけでは本当のプロ、本当の画家にはなることができない、20代の絵はそのプロセスの絵、苦しみや迷いはぼくのような素人には読みとることはできない。でも、シルクロードの少女の絵を見ると、何の迷いもない、自信に漲った筆致であることははっきりと判る。自分の描きたいもの、どう描きたいかをはっきり見定めている、そのことは確実に読みとることはできる。
 陰影に満ちた大きなラクダの絵(絲綢の路 パミール高原を行く)も印象的だったのですが、ぼくが一番気に入ったのは写真の絵。深い青に浮かび上がる橋の灯が胸に沁みる。
 3つの展示室を見て回ったあとはハイビジョンルームで映像を楽しむ。時間がなくて全部見ることはできなかった。1本1本は短いけど本数が多いのだ。展示室はかなり広いけれど、収蔵品のほんの一部しか展示されていないという感じだった。何度も何度も見に来る意味のある美術館だと思う。

 これで3日間にわたる青春18切符の旅は終わり。交通費8500円、宿泊費8000円、美術館4000円、食費315円(クオカードで払った分は含まず)。47番目の県は海の向こうだから青春18切符では行けない。いつのことになるやら

瀬戸田港

2008-09-28 | 08年青春18きっぷ
 3日目は広島の美術館に行くので5時28分発の電車に乗る。尾道から船に乗らねばならない。広島の離れ島に平山郁夫美術館があると知ったのは神戸で行われた展覧会の時だったろうか。どうしてそんな交通の便の悪い所にと思ったけれど、そこが画伯の生まれ故郷だったのです、そして美術館ができたときには丁度しまなみ海道が開通して、全く不便ではなくなっていた。でもぼくのようにJRで広島まで行く者にとっては、やはり尾道から船に乗る方が都合がよい。尾道に9時41分に着くと駅前の波止場から10時10分に生口島瀬戸田港行きの船が出る、10時49分に着いて、帰りの船は13時40分に出るので、たっぷり2時間以上楽しむことができる。高速(路線)バスではこれ以上の都合のいい便がなかったし、値段も高かった。

津和野の操車場

2008-09-27 | 08年青春18きっぷ
 プラネタリウムから玄関ホールへ戻る廊下の右側にあるのが第2展示場。おなじみの津和野と明日香の風景画が展示されています。美術館が開館するときのポスターのために描かれた、津和野の絵地図がなんともほほえましい。絵を描くということは子供になること、そのことが本当によく分かる1枚です。
 ホールに戻ってもなかなか立ち去りがたく、ミュージアムショップをゆっくり散策する。蚤の市の絵本もあったけれど、原画ほどの感動はない。色が違うのと、印刷は縮刷ができるから本当の大きさが判らない、というのがあるのだろう。原画の細かさ、丁寧さは生でこそダイレクトに人の心を打つのだと思う。欲しいものはいっぱいあったけれど、結局何一つ買うことなく館をあとにする。いい版画や複製はあったけれど、それを飾るにふさわしいスペースが自分の部屋にはない。
 結局3時間近くこの一つの美術館で時を過ごしてしまった。もっとゆっくりすることもできた。残り時間を考えると森鴎外記念館にはとても行けないので、すぐ近くの葛飾北斎美術館に行くことにした。そちらは1時間弱で、駅に戻る。今日の泊まりは新山口のビジネスホテル。新山口に降り立つのは大学の時演奏旅行で来て以来だ、駅前の風景はそのときと全く違うものだった。たぶん前は南口から入ったのかもしれない。

蚤の市

2008-09-20 | 08年青春18きっぷ
 津和野ではたっぷり4時間50分とってあるので二つ以上の美術館に行ける。先ずは駅のすぐ前にある安野光雅美術館に行く。
 第1展示室、第2展示室は3ヶ月ごとに作品の入れ替えが行われる。今回の第1展示室の作品がものすごかった。絵本「蚤の市」のための原画がずらりと並んでいた。これらの絵を1枚1枚丁寧に見ようと思うと時間がいくらあっても足りない。とにかく細かい。細かく丁寧で、こんなものまでというようなものが次から次へ描き出されている。写真の絵はその1枚、おかしいでしょ、城壁を見るとヨーロッパの町に違いないのに、並べられている品物はアメリカ西部劇時代のものばかり、蒸気機関車が売られているのが先ずおかしいし、駅馬車、ガンベルト、テンガロンハットから墓標用の十字架まである。別の絵では日本の物ばかりが並んでいたりもする。あり得ないおかしみが味わえる。
 第1展示室を見終わると、次は学習棟へ行く。エントランスホールにはテレビモニターがあって、美術館の紹介ビデオが流されている。2階に上がるとアトリエ、常時ではないけれど、実際にここで制作が行われています。1階に下りて教室が二つあってその奥がプラネタリウム、丁度映像の時間が始まるので中に入ることにする。ぼくはプラネタリウムを生で見るのは初めてのこと。約40分の上映。

津和野 安野光雅美術館

2008-09-19 | 08年青春18きっぷ
 16時50分のバスには7人しか乗っていなかった。半分は1時間早いバスに乗ったようだ、これだけのものを1時間で通り過ぎていくのはとってももったいないと思う。2時間かけて見ても速すぎるという感じがしたくらいだ。こんな辺鄙な所までわざわざ来たのだから、できるだけ味わい尽くしたい。
 17時20分安来発の電車に乗ると30分で松江に到着、明日は7時前の電車に乗るので、松江城も小泉八雲記念館も見ることができない。明日の目的地は島根県の西の端にある安野光雅美術館だ。島根県の西の端と東の端にある美術館を見るだけで、中央にあるメインの観光地には一切触れられない。
 今日の泊まりは松江駅から南へ500m、レークインというビジネスホテル。3700円。米子駅の前には2580円というホテルがあったけど、松江では一番安いと思われる。名前からすれば宍道湖のほとりにあるように思われるけど、残念ながら部屋から宍道湖を見ることはできない。

 松江駅構内のコンビニは6時から開いている、食料を調達して6時59分発の快速マリンライナー益田行きに乗り込む。この時間なので出雲市までは通勤通学客でいっぱい。何とか座席は確保できて宍道湖の風景を存分に楽しむことができる。距離にすれば20km足らず、琵琶湖でいえば瀬田から近江八幡までくらいだけれど、ずいぶん長く大きな湖だと実感する。対岸の山並みがいい感じだしシジミ取りの船も出ている。車窓からだけだけれど、この県の代表的な風景はしっかり味わえたと思う。出雲市で多くの乗客が降りたけど、まだ座席はほぼ埋まっている状態だ。ぼくのように青春18切符で旅している人は意外なくらいに多い。ここからだと萩、長門市、仙崎あたりへ行くのだろうと思っていたら、大田市で乗客の半分以上が降りていく、何事かと思ってホームを見て納得、ここは世界遺産石見銀山への入り口、ここからバスが出ている。この時間だとゆっくり見て回っても今日中に萩に行くのは可能だろう。
 益田では48分待ち、11時14分発の山口行きに乗ると41分で津和野に着く。

乾坤輝く(霊峰飛鶴)

2008-09-18 | 08年青春18きっぷ
 足立美術館は安来駅から南へ8km、山奥ではないけれどそのすぐ手前という相当辺鄙な所にある。この美術館を造った足立全康の生まれ育ったところ。車で20分、駐車場に大型バスが4台、乗用車も数十台停めてある。ぼくのように電車で来る人はほんの一握りだろう、今や島根観光の目玉になっているようだ。最終のバスは16時50分だから2時間以上楽しむことができる。
 日本庭園をじっくり見ることなど今まであったかなと思う。ベストテンに入っている栗林公園に行ったのも、岡山の後楽園に行ったのも中学生の時だった。金沢の兼六園には大学生の時にそのそばまで行っておきながら体調を崩して中に入ることはできなかった。だから、偉そうなことは何も言えないのだけれど、一番感じ入ったのは借景でした。向こうの山と庭園の緑が完全に繋がって一体化している。その向こうの空まで加えた奥行きと広がりに先ず心打たれる。手前の庭園は人の手が加えられたいわば人工の自然、その人工の自然と向こうの本物の自然との違和感が全くない。大きな庭園は三つの部分に分かれていて、最初は苔庭、中央が枯山水庭、最後が白砂青松庭、繋がっているのだけれど、見る場所が違うとそれぞれ趣が違って見飽きることがない。大庭園の反対側には、池庭と茶室につながる庭園もあってまた違う魅力を見せてくれる。ぼくと一緒に入ったバスツアーの人たちはとっくに行きすぎてしまったけれど、ぼくはずっとこの庭を眺めていたい、庭を見て回るだけであっという間に1時間が過ぎてしまった。
 2階の大展示室では秋期特別展が始まったばかり、「横山大観と院展の同人たち」。明治後期から昭和初期にかけての日本画の大家たちの作品が並んでいるけれど、ぼくにとってはほとんど初めて見る名前であり作品でした。その中で、ひときわ輝いていたのが、平山郁夫画伯の「祇園精舎」、この作品だけは神戸で開かれた展覧会で見た覚えがある。そしてもう一つの展示室が横山大観特別展示室、広さは半分くらいですがこちらが常設展示なのでしょう。その中にあったのが写真の絵です。記念切手を集めたことがある人なら、国際観光年の50円切手、霊峰富士として思い出すことでしょう。ぼくも横山大観の名を覚えたのはその切手が最初のきっかけだったと思う。あの本物を間近に見られて、えもいえぬ感慨に浸る。

46番目の県へ

2008-09-13 | 08年青春18きっぷ
 今年は関西吹奏楽コンクールが滋賀の守山で行われたので、2年半ぶりに青春18切符を買うことになりました。あと1回は別格19番香西寺に行ったので、残り3回分を使ってまだ足を踏み入れたことのない県に行くことになりました。
 まだ行っていないから行きたいということもあるけれど、それ以上にその県にはぼくの見たいものがあるということの方が大きかった。ぼくが先ず見たかったのは写真の日本庭園。この日本庭園はアメリカの専門誌で5年連続日本一に認定されたものです。ちなみに2位は桂離宮、桂離宮より素晴らしい日本一(実質世界一)の庭園がまだ足を踏み入れたことのないマイナーな県に存在する。テレビで紹介されたとき絶対行かねばと思ったものでした。
 多くの日本庭園は大名や貴族、大富豪が自分の屋敷や別荘の一部として、自分たちが楽しむために造ったもの、お寺や神社の庭園などは公開されているものも多いけれど、最初からそのことのために造られたというものは少ないでしょう。この庭園がほかの庭園と違うのは、最初から、不特定多数の人に見てもらうために造られたということです。最初から美術館の一部として、というより美術館のメインの見せ物として設計された、おそらく日本庭園を見せるための美術館というのはほかにないのではないかと思われる。

 この日本庭園は足立美術館、島根県安来市にあります。
 姫路から島根へJRで行く場合3通りの途がある。播但線~山陰線、姫新線~伯備線、山陽本線~伯備線。姫路から山陰へ行くなら先ず播但線ということになるけれど、今回は島根なので、まだ本竜野までしか乗っていない姫新線で行くことにしようと時刻表を見ると、驚愕の結果がそこにあった。特急を使わないと、播但線経由だと、6時22分に姫路を出ると、米子に着くのは16時20分。姫新線経由だと、姫路を6時55分に出て米子に15時07分に着く。山陽線経由だと、姫路を7時32分に出て米子に着くのは13時08分、出発した日に美術館に行けるのは山陽線経由だけだった。播但線の乗り換えは5回、姫新線の乗り換えは4回に対し山陽線で行くと乗り換えは2回だけ。伯備線は山陰と山陽を結ぶ大動脈だということが初めて判る。
 迷うことなく山陽本線岡山行きに乗る。米子では39分待ち、13時47分発の電車に乗ると、8分で次の駅が安来。駅前に足立美術館の無料シャトルバスが待ちかまえている。26人乗りのバスに客は13人、さすがというべき人気です。