高校地理の先生たちの集まりで、地理総合に関する意見交換会があると聞いて参加させていただきました。
来年4月から始まる『地理総合』という新たな必修科目ですが、実は文部科学省では一定の制約下であることを前置きしたうえで大学受験用のサンプル問題を公開しています。
【問題はこちら→ https://bit.ly/33Ks41E 】
今回は、東京の大手予備校で地理を教えている講師をお招きして、予備校講師の立場からこの問題をどのようにとらえているか、ということについて意見交換をするものでした。
当然ですがZoomによるリモート会議で道内外から問題意識の高い20人ほどの先生が参加していましたが、わざわざ会場へ出かけなくても良いというのはつくづく便利だと感じます。
冒頭講師から、「実はこの問題を地理科目として勉強をしていない妻に解いてもらったのですが…、なんと満点でした(笑)」という驚くべき一言がありました。
曰く、問題文をよく読めば常識ある大人ならば概ねわかる、分かってしまうレベルの問題だったということ、だそう。
問題は全部で大きく3問。
1問目は世界の人口問題についてですが、特筆すべきなのは発展途上国に関して問う問題になっていて、関心の範囲を世界に広げた学習が必要です。
会話による設問ではジェンダーギャップと男女間格差にも触れていて、現代の問題への広い関心が求められています。(ただ問題はわりと簡単だと)。
大きな2問目は防災がテーマ。問題は水害について問うものになっています。
設問では、ハザードマップに書かれている避難場所は川向こうの小学校となっている、ということが紹介されたうえで「(主人公)私たちが暮らすマンションの2階以上に避難する場合もありそうね」と発言させて、それはなぜかを選ばせます。
予備校の講師は「これも常識的だと思うけれど、これを知らないとすればやはり地理教育が担わないといけないのかな、と思う」とも。
また被災地の復興に関連して、明治の大津波、昭和の大津波を経験した三陸地方の村の図を示して考えさせる問題がありました。
講師はこの図の元になった村をグーグルマップで探して、おそらくここだろうという場所を探し当てたそうですが、「これは実際のどこのことだろう」と生徒に探させるというのは興味を引くうえでも上手なやり方かもしれません。
最後の大きな3問目は、平成の大合併による地域の変化を地域調査した結果から考えさせる問題。これは新たな地理総合の目玉である地域調査の手法を踏まえた問題と言えるでしょう。
設問では新潟県上越市や旧安塚町などが取り上げられていて、個人的に馴染みのある土地が出てきて懐かしく感じました。
いろいろと出張や旅行をしておくべきですね。
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さて、問題を眺めてみると、大人にすれば常識的な問題が多いのですが、それは大人は普段から広く社会全体の情報に触れているからで、まだ若い高校生に広い問題意識を持たせるとなると、以下に授業に興味を持たせるか、という教師一人ひとりの力量が問われそうです。
意見交換の中で講師に対する質問で、「設問に会話文がよく使われているのだが、これはなにか意味があるのだろうか」という問いがありました。
講師からは「実は(OECDの学習到達度調査である)PISAの調査で、日本の学生は文章読解力が劣っているといわれていて、そのため全ての教科でそれを強化しようという動きがあるのです」という説明があってなるほど、と納得。
一方、「ただ、会話にすることで回りくどかったり、ヒントになりすぎていると感じているところで、大学ではもう少し改善してほしいと願います」とも。
講師の説明、質疑応答を含めて1時間ほどの会合でしたが、興味深く聞きました。
道内の各地にも熱心な先生がいることが分かり、心強くも感じました。
これからも都市計画学会としての支援の方法を考えてゆくつもりです。