昨日の作業で触れた「はつり屋」さんの話。
建築現場でときどきブレーカーのガガガガ…という音が聞こえるときは、はつり屋さんが来てコンクリートを削っているときです。
どうしてはつり屋さんが必要になるかというと、大抵は図面どおりに現場が施工されておらず、本来はあってはいけないコンクリート部分が存在しているからです。
図面通りに型枠工が型枠を作っていれば、その型枠にコンクリートを流し込んで求める形が出来上がるはず。
しかしそれがどこかで施工ミスがあったり、ごくまれには設計通りにやったのに設計が間違っていたということもあるのです。
コンクリートが固まった後に型枠を外し、次の行程に移ろうかというときに間違いは発見されます。
で、現場監督が呼ばれて「原因はなんだ…」「さてどうしたらよいか…」を考えて、結果やってくるのがはつり屋さん、というわけ。
つまりは失敗の後始末屋さんです。
現場で一番嫌われるのが、作業が後戻りする「手戻り」というやつです。
作業が遅れるならまだ良いのですが、一旦やり終えたと思ったら、実はそれが間違っていて、一度元に戻す手間と時間がかかるということは実に嫌われるものです。
そういう手戻りを黙々と担当してくれる「はつり屋」さんは、現場の中でも最も報われない仕事ではないか、とよく思ったものです。
作業の結果、何かができあがるわけではなく、折角作られたものを壊して元に戻すというのは、美しい成果が見えるわけではありません。
それに何しろ固いコンクリートを削るというのは、いくら機械を使うとはいえ、手に相当の振動を受け騒音に聞き続ける重労働。
しかしその作業が終わらなければ次の工程には進めないので、その場面では絶対に不可欠な存在なのです。
世の中のことは多くの仕事で成り立っているのですが、誰かの失敗を帳消しにする仕事というものもあるのだと、学生の時に知れたのはありがたかったかな。
自分の仕事を手戻りにすることは避けようと思うようになりましたから。