北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

JR宗谷線ぶらり旅 下沼駅~南稚内は秘境です

2015-10-19 21:40:21 | Weblog

 土曜日の夜、豊富町内での湯治移住者のみなさんとの懇談会の後の話。

 当日はもともと飲んでいない方に稚内まで送ってもらおうと思っていたのですが、懇談会参加者の中に幌延にある法昌寺さんの住職がご夫婦で参加されており、「うちに泊まって行けばいいよ」と言われ、ついその気になって幌延のお寺に泊めていただくことに。君子は豹変するのです(笑)。

 送らなくて良いのであればドライバー役の方も飲めると言うことで、二次会も一層楽しいひとときになりました。


 さてこの以前も泊めていただいたことがある法昌寺さんでは、地域の心のよりどころとして本堂を使った様々なイベントや地域活動をしています。

 幌延の小学生たちを相手にした日曜学校なる催しも行っています。本堂でお弁当を食べた後はサロベツ原野の大自然の中での野遊びは人気だそう。

「子供たちには幌延駅から一駅だけどこのお寺の近くのJR下沼駅まで汽車に乗ってもらって、ここでお迎えをしてお寺まで行くの。その一駅もまた子供たちには大冒険なのよね」とは法勝寺の奥様の稲垣順子さん。

 明日はこの下沼駅からJRに乗って帰ってみようと思うので時刻表を見に駅に立ち寄りました。



「そうそう、このJR下沼駅が今『秘境駅』の一つとして話題になっているんです。幌延町役場の人なんか周囲にある秘境駅をJRを乗ったり降りたりして一日で回るイベントをしたりしてね」
「でも駅はだいぶボロボロですねえ」

 下沼駅にはかつては駅舎もありましたが無人駅の今は貨車を利用した待合小屋がひとつあるだけで、それも外側のペンキはあちこちで剥げかけています。



「JRには修繕する気はなさそうですね」
「うん、それどころか周りの人たちが気にして『修繕してもいいですか』っていっても、どうもあまり良い顔をしていないみたい。最近はJRがだんだん利用者の少ない駅を廃止しているので、ちょっと心配だわ」


 この下沼駅。鉄道ファンで広島在住の牛山隆信さんという方が秘境駅に関する本を何冊も書かれているのですが、そのなかの一冊「秘境駅ランキング2015」によるとこの下沼駅は全国34位という高い位置にあるのだそう。
 秘境駅ランキングって上にいるのが良いのか悪いのか。

「明日の朝一番の駅は…6時37分ですね。次は…10時53分!」

 さすがは秘境駅だなあ(笑)


          ◆  


 翌朝起きてコーヒーを一杯飲ませていただいて駅へ向かいます。

 駅の中には旅行をしてきた人が何か書き留めるノートが置いてあって、やっぱり結構旅行者は来ているみたい。

 一両だけのジーゼルカーがカタンカタンとやってきました。

https://youtu.be/4nM5ah1HRnE


「小松さんがこの駅の始発便に乗る日が来るとはねえ、なんか不思議(笑)」
「ではまた。お世話になりました、さようならー」


 乗った車両の中には男性のお年寄りが一人と女子高生が一人。お年寄りは次の豊富駅で下車したのですが、ここで車内放送「登りの汽車の行き交いのため20分停車いたします」

 なるほど-、宗谷本線は旭川以北は単線なので交差する便は駅でしか行き交うことはできません。しかも駅だって全てが行き交えるようにはなっておらず限られた駅でのみそれが行えます。

 やがて登りの汽車がやってきて駅舎に近い方のホームに入ってきました。下りは私を含めて二人しか乗っていませんが、今来た登り便には十数人は乗っているぞ。混んでる…。

 やがて隣の汽車は7時5分に発車して行きましたが、こちらの汽車はまだ動かない。運転手さんは二十代後半の若い青年。



「登りの汽車は出ましたけどまだ動かないんですか」
「またこの先で通過待ちがありますので、乗ってくる学生さんのためにできるだけ待っています」
 発車は7時9分。

 さらに二つ先の兜沼駅で、札幌行きの特急列車の待ち合わせのために9分の停車。まあのどかなものです。


 ところでJRの線路って、大抵道路と平行に走っているような印象があって、車に乗っても汽車に乗っても窓からの風景はそれほど変わらないと思いがちです。



 しかし兜沼駅手前あたりから線路は道路と別れを告げて宗谷丘陵の中をカーブしながら走ります。次の南稚内までは途中に駅もなく、線路の継ぎ目のカタンカターンという音を響かせながら汽車はどんどん進みます。



 考えてみると、こんな朝早くにこの宗谷丘陵を走る汽車に乗ったのは、まだ旭川からの夜行の急行利尻があって稚内に帰省したとき以来かも。そのときは寝ていたので車窓の風景など見ることはありませんでしたが、先頭車両で風景を見ていると、原野、丘陵、酪農草原、樹林、沼など実に多様な風景が目に入ります。

 下沼駅からの汽車の旅は、カーブが多いのですがカーブするたびに新しい風景が広がる絵本のよう。



 最後には抜海駅のところで一瞬海が見える高台も走り、日本海と宗谷丘陵のおりなす雄大な景色はちょっと感動的でした。

https://youtu.be/cvc0hfxpp9Y

 結局家の近くの南稚内駅に着いたのは7時57分。乗ってから1時間と20分の汽車の旅。

 いつまでも目的地に着かない遅い汽車とみるか、1時間20分も楽しめる最北風景の旅と見るか。

 私はいくつもの風景が早変わりする、絵本を見る様なページめくりの旅だと思いました。こういうぶらり旅もたまにはいいですね。



コメント
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