稚内観光協会と宗谷シーニックバイウェイ、稚内信用金庫さんの合同主催による勉強会、「宗谷の新たな観光を考える勉強会 ~環境と観光の両立による地方創生~」が開催されました.
今日のメインは観光カリスマをはじめ、様々な地域振興のお手伝いをしている山田桂一郎さんを迎えての講演ですが、まずはそれに先立ち、先だってヨーロッパへ行きスイスの観光モビリティについて視察してきた遠征隊からの帰庁報告がありました。
スイスの山岳観光都市ツェルマットを訪ねて、環境と観光を両立させたそのマネジメントシステムの素晴らしいのだと。
ツェルマットは山岳観光都市と言っても、山登りだけではなくトレッキング、クライミング、マウンテンバイク、キックバイクや子供の遊び場なども充実しています。またレンタルも充実していて手ぶらで行っても様々な遊び道具をすぐ借りれる。映像で見せてもらった山の上から下ってくるキックバイクは楽しそうです。
公共交通機関ではチューリッヒからツェルマットまでの間、電車やトラムやバスなどが乗りやすく、特急列車には自転車の持ち込みが可能、ステップも平らで乗りやすそう。車両の一階は自転車置き場で二階には子供の遊び場があります。
ツェルマットは人口集積地からは遠くて不便、遠いからお金も時間もかかる、だからけちけちする人は来ない、そして一度来たら長く滞在する。
どこか宗谷地域にも通じる要素がありそうです。
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さていよいよ山田桂一郎氏による講演 「環境と観光の先進地『スイスに学ぶ地域づくり』」
来てもらって楽しんでもらってお金を使ってもらおうという「着地型観光」の地域づくりで各地を応援している山田さんですが、相変わらずの山田節。
いくつものヒントをいただきました。ちょっと断片的ですが印象に残った部分をご紹介します。
最近は地方創生が話題になったこともあっていろいろなところから声がかかる。「稼ぐ力を引き出す」というが観光で稼ぐというのは結構大変。入れ込み人数や泊数を伸ばすのは大変だし、特にこれらは観光地ほど大変だ。
大体三年から五年で盛り上がってくるがそこからは下がりがち。気の利いたお店が一軒あっても地域を支えられるわけがない。町全体の稼ぐ力が必要。
見ていてダメになる例は、どんな組織を作っても「全て、エゴと利害関係」でつぶれてしまうというもの。地域の中で皆が正しい選択をしてまとまって行動するのは実に難しいものだ。
そしてもっとマズイと思うことは、どの地域も実は真剣に困っている方が少ないことだ。農家のお年寄りは食えるだけ作ればよいと思っていて商業者はシャッターが閉まっていても平気。それなのに自分の代だけなんとかなるとは思っているが将来のことは考えていない。
観光は地域の総合力、地域経営が問われる。ツェルマットに行ってみて驚いたのは 小さな町の観光予算が北海道よりも高かったこと。宣伝ではなくマーケティングをしてきた。地元の宿泊産業者だけではなく、買うもの作るもの全てが地域に繋がっている。
遠くの安いものを買うのではなく、地元で作り地元で打っているものを使うことで町の景気は良くなる。お金をできるだけ外に出させず「地元を使い倒す」という気持ちでやっている。
葉っぱビジネスで有名になった上勝町というところがあるが、最近はあまり活性化していない。なぜなら稼いでいるのがお年寄りで彼らはお金を使わないから。儲かっているなら地域でちゃんと使って経済を回してほしい。ツェルマットはそのあたりを皆がコンセンサスをもって一生懸命にやっている。
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観光の売り物はなにか。ただ「勝ち残る」のではなく、価値をしっかりと見極めてその価値で残る、すなわち「価値残る」でなくてはだめだ。
ちゃんと継続している企業は、理念、戦略、事業目標がちゃんとある。理想があって、その理想との間にあるギャップを埋めるのが戦略だ。何を提供したいのか、得意技は何か、それをしっかりと見極めることだ。
ツェルマットでは観光のマーケティングをしっかりと行っている。マーケティングとは、「顧客が真に求める商品やサービスを作りその情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」ということ。簡単にいえば「売る仕組みづくり」だ。
例えばツェルマットでは地域を訪れてくれた顧客のデータベースをもっている。冬はスキーパスなども記名式で連結し、良い客のカード使用履歴などは押さえて好みの傾向やプレゼンテーションのセグメンテーションもできている。
日本では沖縄の竹富町や青森県七戸町の取り組みが面白い。図書カードと一体となったファンクラブ会員券を作り、会員名簿が顧客データベースになる。顧客データベースをきっちり管理して動向を探るという地道な活動を継続させるといろいろなものが見えて来る。
海外から見ると日本は健康長寿の国だ、という強い印象がある。だから様々な食材や名産品を健康や長寿と結びつけることは良い作戦ではないだろうか。
日本食がブームになったというのも、美味しいこと以上にこれを食べている日本人は健康で長寿だということが魅力の一つだ。ぜひ地域の売り物、資源は何かを考えて、売り先を考えて、マーケティングを考えてほしい。
今日も聞いていて勇気が湧くようなお話でした。あとは実践あるのみ。よし、宗谷も頑張ろう!