
『阿寒湖を世界遺産に』という記事が1月5日付道新の一面を飾りました。
新春を飾る明るい話題…とも言えますが、書かれた市役所サイドとしてはこのタイミングでの記事内容にちょっと当惑気味です。
記事では既に市役所も検討を開始しているかのような書きぶりで、『釧路市など運動開始』などという細部タイトルが添えられています。
これだともう市役所が積極的に運動の中心となって運動を開始しているかのような雰囲気が伝わりますが、まだとてもそこまで熟した議論がなされているわけではありません。
具体的には昨年秋に、阿寒湖畔の一部の意見として『世界遺産を目指したい』という声があるということを聞き及んでいましたが、いますぐ動き出すためには課題もありますね、という認識でいます。
一つには、まず世界遺産の対象は何なのか、という問題。マリモの群落なのか、それともマリモが群生する阿寒湖なのか、まずは対象が定かではありません。
また、世界遺産に値する「顕著で普遍的な価値」として何をアピールし、それが要件に合致する見込みがあるのか、という情報収拾と検討が全く不足しています。
世界遺産には世界自然遺産、世界文化遺産、世界複合遺産という三種類があるそうですが、どれに合致するか、という問題もあります。
我々もまだまだ勉強が足りません。
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阿寒湖畔の各方面の関係者の意向はどうでしょうか。
世界遺産などになることでより強い規制が加わるようなことになると、現在のような湖面の利用などにも影響を及ぼさないでしょうか。
そうしたことに正確な情報がないと関係者もどう判断してよいか迷うに違いありません。
そもそも、マリモの保存運動を展開してきたのは阿寒湖畔の住民や関係者の皆さんであるわけで、こうした皆さんのコンセンサスが十分に整って気持ちと熱意が一つになることが最優先でなくてはなりません。
ものごとを進めるためにはスイッチを押す順番があって、それを間違えるとうまくいくはずのことも滞ってしまったりします。
新春初夢くらいの話題ならば面白かったかもしれませんが、市役所としてはまだとても具体的な議論ができていないので、訊かれてもまだ明確には返答もできかねる状況。
今年はマリモとタンチョウの特別天然記念物指定60周年という節目の年ではありますが、だからこそ逆にただ賑やかしのために浮かれるのではなく、地に足の着いた活動として展開してゆく必要があると思います。
いいテーマだなあ、と思うからこそ余計に大切に育てたいところ。
どうぞご理解の上、温かい目で見守っていただけるようお願いします。