北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

離宮さんへいかはりますの?

2011-02-21 23:45:35 | Weblog
 京都の三日目。今日は桂離宮と修学院離宮という宮内庁の施設を中心に回ってきました。

 桂離宮は1600年代の中頃までに、八条宮家(桂宮家)の別荘として造営されたもので、書院、茶屋などの建物と回遊式庭園から成る池泉回遊式と呼ばれる庭園様式の最たる者です。

 1880年代に桂の宮家に子孫がいなくなり断絶となって以降宮内庁が皇室財産として管理運営をしているもの。

 亡命ドイツ人建築家のブルーノ・タウトがこの桂離宮を絶賛して以来、外からの評価を受ける形で改めて国内でも評価が高まったものです

 宮内庁所管ということで観覧が事前申し込みによるもので人数制限もあります。はたと思い立ってその日に訪ねても見せてはいただけません。

 今回は2ヶ月くらい前に往復葉書で希望日を三日書いて申し込んでありましたが、その観覧日として今日の朝10時半という日時が指定されたものです。


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 桂離宮は仕事柄庭園を見る機会があって20年ほど前に修理中の現場を見せていただいたことがありましたが、宮内庁の方の説明を受けながら園内をぐるっと見回すというのは初めてで、大変勉強になりました。


                 【桂離宮の池を深山の風情として見る】

 庭園そのものの設計から管理もさることながら、建物の造作一つ一つに深い洞察と風雅なこだわりがあって、細やかで繊細な日本人らしさが伺えます。

 特に庭園作者のこだわりは「お月様」に向かいました。つまり観月。月を見るための縁台や、どんなシチュエーションで月を見るかを様々に仕掛けています。

 中秋の名月を見るためだけの縁台がありました。


                 【中秋の名月を見るためだけの縁台】

 園内には灯籠がいくつもありますが、ここではどれも背丈の低いものが据えられています。これは夜に観月のための来園者の足元を照らせるようにとの配慮なのだとか。

 また「月波楼」と名付けられた茶席から見える窓の風情は「屋形船」に見立てられていて、海に浮かぶ月を愛でるシチュエーションが用意されました。


                 【池を海に見立てた観月のシチュエーション】



 残念ながら現在は夜に園内を鑑賞することは許されていないとのことで、下々の者としては往時の雅な風情を想像するしかありません。

 ここには書ききれないくらいのその魅力については是非一度現地をお訪ねください。日本人であることが誇らしくなりますよ。

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 そうして午後は、京都市内を挟んで反対側にある修学院離宮へと向かいました。こちらも同じように宮内庁へ申し込んで今日の午後1時半からの観覧が許可されたものです。

 修学院離宮と言えば、庭園史の世界では「借景庭園」として知られています。

 これは自分の庭の敷地の外にある遠くの山々までを一体の風景として楽しむという形式のもので、まさにその最高峰がこの修学院離宮というわけです。

 こちらの庭園は後水尾上皇の手によって1650年代に造営されたもので、三つの庭園を松林の園路で結んだ構成となっており、その間に田んぼを中心とした棚田の風景が広がります。この農村風景をも取り入れた庭園なのです。

 この時期園内には修復工事の手が入っていて、一部の水路や池には水がない状態なのがちょっと残念でしたが、一番上流の浴龍池は満々と水をたたえていました。

 庭園史を語る上では必ず出てくる修学院離宮ですが、実は私自身訪ねるのは今日が初めて。やっと本物を見ることができました。天気も良くて最高の一日となりました。


                 【遠くの山々までが庭園の風景構成要素です】

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 さらにこの後には明治の元老山県有朋が築造した近代的地泉回遊式庭園の「無鄰菴(むりんあん)」も訪ねることができましたが、南禅寺は残念ながら時間切れ。夢窓国師の枯山水は次回までお預けです。

 京都の庭園は成立した時代背景を考えながら見ると理解がより深まります。

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 時間がない中で修学院離宮へ向かう途中で食事のために立ち寄った喫茶店ではママさんが「離宮さんいかはりますの?なら急がんとね、時間あまりあらしまへんわね」と急いで定食を作ってくれました。ちょっと京都の人情に触れた感じがして良かったです。

 良い庭園を見て目の保養になりました。

 眼力の養成は良いものをたくさん見て良い人にたくさん会うことに尽きるのです。
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