駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『CAPTAIN NEMO』

2017年09月01日 | 観劇記/タイトルか行
 日本青年館、2017年8月30日11時。

 19世紀後半、南極付近で捕鯨船の沈没事故が相次いでいるという報告を受けたイギリス政府はその調査をするため、イギリス海軍将校ラヴロック少佐(朝美絢)の指揮の下、フランスの海洋気象学者レティシア(彩みちる)、アイルランドの海洋生物学者ジョイス博士(華形ひかる)、イタリアの新聞記者シリル(永久輝せあ)を拉致し、南極へと向かった。しかしその途中、装甲艦は沈没し、彼らはある島に漂着する。そこは神秘の島マトカ、そしてそこにひとりの男が現れる。彼の名はネモ船長(彩風咲奈)、有能な物理学者でこの島の主である彼は帝国の植民地から逃れてきた人々を島に住まわせ、護っていたのだが…
 脚本・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治、植田浩徳。ジュール・ヴゥルヌの海洋SF小説『海底二万里』を元に描くミュージカル・ファンタジー。全二幕。新生雪組二番手スター彩風咲奈の待望の東上主演作。

 潜水艦ノーチラス号とネモ船長、という名前以外はほぼほぼ創作だそうなので、これは完全に谷先生のオリジナル作品ということでしょうし、なので今すぐジュール・ヴェルヌに謝っていただきたいですね。
 咲ちゃんの大事な初東上作品に、専科から世界の彼氏みつるを呼んでヒロインにみちるちゃんを据えてあーさとひとこを揃えてあす、まちくん、すわっち、センアガタと揃えてヒメやひまりちゃんも呼んで潤花ちゃんまで投入して、それでなんてことをやらかしてくれてんの谷先生!?
 だってこの作品、完全に電波ですよ!?
 何度も言うけど、脚本が上がった段階でとか本通しのときにとか舞台稽古のときにとか、チェックできないのおかしいと思わないの劇団首脳陣!? 止めなきゃダメだって!!!
 マトカだかなんだか知らないけれど、コレ完全にカルトのコロニーですよね? 不健全きわまりない。それにその島を守るためにノーチラス号を沈めるというのはわからないでもないけれど、これだけの科学の力とやらがあるんだったら自動でもできるんじゃないの? なんで乗組員の自爆でなきゃならないの? キャラクターを死なせれば客が泣くものだと未だに思いこんだままでいるなら、谷先生には今後もう二度と新作を書いていただきたくないです。『Samourai』は私は意外にダメだった記憶はないのですが(これは原作付きだったけれど)、『CODE HERO』のことは今もって許していません。
 『邪馬台国の風』とはトンチキの方向性が違っていて、あちらはまだ改良の可能性がありましたが、これは何しろ電波なので全ボツしかないです。それか、海底でタコのプリンセスと出会ってタイやヒラメが舞い踊る海洋ファンタジー・レビューにしてくれた方がよかったです。ホントに生徒の無駄遣い…
 せめてネモ船長は、あんな超人的な、非人間的な、アンドロイドなの?みたいな無機質な芝居をさせるのではなく、普通に理想のために戦う男に描いてあげて、レティシアとちゃんと恋愛させればよかったのに…そこだけでもだいぶ違うのに…

 組替えしてきたあーさはやはりなんとはなしに芸風が違っていていい意味で浮いていて、それを上手く生かしてもらった配役でよかったと思います。私は劇団はひとこの方を上げていくつもりでいるとばかり思っていたので、扱いが良くてちょっと驚きでした。
 ひとこはまた面倒な役回りをさせられていますが、鍛えられているのだと解釈してがんばっていただきたいです。
 みちるちゃんは『ドン・ジュアン』あたりから歌が改善されていないのが気になりますが、ヒロイン力は増していて、父娘のドラマなんかはなかなか良かったんだけどなあ…何しろ話がなあ…
 潜水艦の乗組員がイケメン祭りで、再下級生の彩海せらくんにときめかされました。お友達にあっきーみがあると勧められましたが、むしろれいこちゃんみを感じる美貌かな?
 潤花ちゃんはまだまだもうちょっと見ないと…という印象で、やはりひまりちゃんの方が垢抜けていたし、ヴェロニカはいい役だと思いました。

 そして咲ちゃん…新調のお衣装は素敵で金髪ロン毛も素敵、長い手脚が映えるダンスも素敵、歌も素敵でした。でも、肝心の役がアレでは…話がアレでは…
 今は耐えて、新生雪組お披露目本公演でスパークしてくれることを祈ります。私は嫌いじゃなかったけど『パルムの僧院』はやはり微妙だったかなと思うし、作品運の悪さは悲しいばかりですが、まこっちゃんも『かもめ』『鈴蘭』とまあまあ微妙でやっと『阿弖流為』が来たのですし、待てば海路のなんとやら、ですよネモだけに…!
 みなさん、世紀の珍作をぜひともその目で目撃するべく、劇場に足をお運びください。観ないと語れませんよ! ある意味、もったいないですよ…!!






コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« アン・モーガン『私はヘレン... | トップ | 萩尾望都『ピアリス』(河出... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も見てきました (シャンシャン・大森)
2017-09-02 23:23:11
爆笑しながら読ませていただきました。私はきょう観てきたのですが、戸惑いのあまり、客席全体が拍手のタイミングを失い続けていたのが印象的でした。

カルトのコロニー、まったくです。咲き乱れていた花、あれはたぶんケシの花ですよ。そうでなければ意味のないモールス信号の歌を楽しそうに合唱するはずがないですもの…

お言葉に甘えて琥珀につづいてコメントさせていただきました。明日はAFOでネモの傷を癒やしてきます。苦笑
返信する
観たくなりました。 (オリカ)
2017-09-03 16:21:11
はじめまして。
いつも楽しくブログを拝見しています。
地方在住なので、二ヶ月に一度ぐらいしか観劇に行けないものです。
ネモは行かない予定でしたが、駒子のさんのブログを読んで
これは是非見に行かねば! と居ても立っても居られなくなりました^_^

プレイガイドで追加販売があるので当たれば行くことにしました。
これからも素敵な感想ブログを楽しみにしています。
返信する
ケシの花かな… (シャンシャン・大森さんは)
2017-09-04 23:01:22
マトカに咲くのはケシですかね、それでみんな幻覚を見てるんですかね(ToT)。
「皆殺しの谷」の異名を取る谷先生ですが、
今までの作品はもうちょっと死ぬのにまっとうな理由があったと思うんですがね…
『AfO』で口直し、贅沢ですね!(笑)
ホント振り幅大きいです、宝塚歌劇!

●駒子●
返信する
そんな貴重な機会に…!? (オリカさんへ)
2017-09-04 23:04:32
コメントありがとうございます、いつもお読みいただいているようで嬉しいです!
で、でもそんな貴重な観劇の機会に『ネモ』でいいのかしら!?
『AfO』か『神々』か『琥珀』の方が良くないですかね!?!?(^_^;)
でもけっこうチケットないか…(ToT)
あまりの酷評でガラガラになっちゃったら泣くのは生徒だからな、とフォローのつもりで
あのような言葉で締めましたが、無理に観るようなものではないかと(^_^;)。
でもご覧になったらまたゼヒ語りにいらしてください!

●駒子●
返信する
Unknown (はなこ)
2017-09-09 15:40:17
ただただぼーぜん、終わって外へ出たら、風が強く吹きまくっていて空気は生ぬるく、その気持ち悪さに目が覚めたみたいに思いました。咲ちゃんが終始無表情だったのは演出か、それとも舞台の上にも魔法がかけられていたのか・・・。
返信する
ご覧になりましたか! (はなこさんへ)
2017-09-11 11:21:46
コメントありがとうございました。
ホント、クールな咲ちゃんはカッコよかったんですけれど…
そういうキャラクターだという演技なのか、はたまたやりようがないと感じているのか…!?

もうすぐ大阪公演ですね、がんばっていただきたいです…!

●駒子●
返信する

コメントを投稿

観劇記/タイトルか行」カテゴリの最新記事