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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『蒼穹の昴』

2022年12月17日 | 観劇記/タイトルさ行
 宝塚大劇場、2022年10月15日11時、18日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、12月8日13日18時半。

 19世紀末、清朝末期の中国・河北。村はずれの居酒屋で、飲んだくれて寝てしまった地主の次男・文秀(彩風咲奈)は、まどろみながら聞いた言葉に目を覚ます。老占い師・白太太(京三紗)の「そなたは長じて紫禁城に登り、天子さまの傍らで天下の政を執ることとなろう」といういつもの言葉だ。そこへ科挙の院試に合格したという報告が届き…
 原作/浅田次郎、脚本・演出/原田諒、作曲・編曲/玉麻尚一。シリーズ600万円部を超える大ベストセラーを舞台化したグランド・ミュージカル。トップ娘役・朝月希和のサヨナラ公演。

 原作小説は未読。学校の世界史の授業でなんとなく勉強したような…くらいのほぼノー知識で観ましたが、特にわかりづらくは感じませんでした。キャラクターが紹介されあーなってこーなってと話が展開して、豪華なセットやなかなかの大曲があって見応え聞き応えがあり、特に一幕は楽しく観られました。二幕はお話がやや駆け足になったのと、え、なんで?ってのが何度かあったのと、最大はオチに「え? コレで終わり??」って引っかかったのがあって、そしてフィナーレもまあフツーという印象だったので、全体としてはアレレ…な感じで観終えてしまいました。それが観劇回数にも如実に表れてしまっていると思います、すみません。
 小説は春児(朝美絢)が主人公なんだそうですね。それを、今の雪組の座組に合わせて翻案したということなのでしょう。マイ楽を一緒に観た親友は原作ファンで、いつかそら春児の主演で再度きちんと舞台化するといい、と言っていました。それはちょっと観たいかもしれません。別にヒロインとのラブはなくても、西太后(一樹千尋)との親交? 同志愛? みたいな交情メインでもドラマは紡げると思いますしね。
 それから考えると、一幕なんて特に、文秀ってホントたいしたことしていない、というかほぼ何もしていないに等しいキャラなのに、この人が主役なんです感をバッチリ醸し出す咲ちゃんってホントすごいな、とは思いましたね。タッパがあって映えるしお衣装も着こなすし、やや力任せだけど歌い上げるナンバーもあって、賢く優しく志ありげなことを語ってとにかく頼れる感じで、ホント「感じ」だけなんだけどちゃんと成立させているんだからたいしたものでした。リョウサエバも夢介も若干カッコよくない系の主人公だっただけに、よかったねえ咲ちゃん、とは思いましたが…というか実はそんなに芝居が上手いタイプのトップスターさんではないと思うので、わかりやすい白い王子さま役に配しちゃった方が本当はいいんだと思うんですが、何故そういう作品が来ないんでしょうね? ボニクラちょっと不安だわー…
 それはともかく、そんなわけで一幕はまあ起承パートでもあるしなんとなくのハッタリでも保ったんでしょうが、二幕はさすがに文秀のやっていることがよくわかりませんでした。
 袁世凱(真那春人。というかメジャーだろうとなんだろうと日本語読みと中国語読みの混在はおかしいと思う。統一すべきでしょう)の説得に行くのは原作では別の人物なんだそうですね。なので主人公の活躍場面としてスライドさせたエピソードなんでしょうが、説得に行ったはずが持論を言いっ放しにしただけでさっさと帰ってきているので、結果的には決裂しただけでなんの成果も出せていないんです。それでいいのか? 何しに行ったんだ? って気になりましたし、なんかやっていることの意味がよくわかりませんでした。そのせいでこのあと国内が割れて内ゲバみたいなことになるから、文秀たちは日本大使館に逃げ込んだんだろうけど、ここでのそれぞれの立場や取る行動のメリットデメリットみたいなこともよくわからなくて、なのでそのあとの譚嗣同(諏訪さき。ホントによかった…もともと上手い人で上手さが先行していた時期もあったと思うけれど、今スターとしていい感じに仕上がりつつある気がします)の処刑とか文秀の脱出とかもすごくドラマチックな展開なんだろうけれど、なんか私には意味がよくわからなくて、感動しきれませんでした。
 さらに、文秀と玲玲(朝月希和)の関係がよくわかりませんでした…玲玲の方は文秀を愛している、しかし文秀は弟分の春児(「弟同然」か「弟分」のどちらかでしょう、「弟分も同然だ」って台詞はヘンですよ…)の妹、としてしか玲玲のことを見ていない。よく言って家族、でもせいぜいが面倒を見るべき使用人程度で、見下しているということはなくても対等には扱っていないのが丸わかりでした。そこに玲玲と譚嗣同とのエピソードもあったんだから、これはこの形で完全に正解だったと思うんですけれど、この顛末を通して玲玲もひとつ大人になったというか目が覚めたというか文秀とは生きている世界が違うんだなとあきらめるというか、な進展があって、まあ家族みたいなおつきあいは続けるにしてもラブとしてはチャラになったんだろうと思ったわけですよ私は。文秀の方は玲玲の抱き寄せ方にしてもなんにしても、ほぼ最後まで異性に対するものではなかったじゃないですか。なのに急に、えええぇ~いつの間に~!?ってなりましたし、大丈夫か玲玲ホントにそれでいいのかけっこう面倒だぞそいつとか思いましたし、何より文秀のとりあえず日本に撤退するみたいな行動に、結局全部投げ捨てて自分だけちゃっかり逃げるんじゃん何ソレ、って思わせられちゃったんですよね…皇帝の傍らで天下の政を執るはずの人が、島流しにされた皇帝のもとに馳せ参じることもなく、自分だけ女連れて脱出しちゃうんですもん。えええええぇ~ってなりますよそりゃ…
 で、話としてもオチてないじゃないですか。この内乱みたいなの、どうなるの? 外国との戦争がどうとかは? 春児は今何してるの、これから何をするの、彼は何ができたら幸せになってゴールなの、天下のお宝is何、昴is何???
 全然わかりませんでした…
 紫禁城の城壁?がくるんとひっくり返ると船体になるのはよかったんですけどね。でもそれは単なるギミックにすぎないので…
 で、フィナーレもわりとベタでしたし(そらの歌唱指導はスタァ!でしたよー! そしてデュエダンのはおりんのカゲソロは素晴らしかったです)、景徳鎮な娘役ちゃんたちは可愛かったけど揃いのお衣装のあーさは特にズボンがなんかヘンなパジャマみたいだったし、デュエダンのリフトかなんかがなんかいつもヘンでいつもドタバタしててハラハラさせられて、なんかホント全然感心しませんでした。そもそも娘役ちゃんの出番がなさすぎて…これで退団のカレンちゃんやはおりんにはムリヤリ台詞が作られていましたが…てかぶーけたんもったいない…
 あとこれはちょっと違う問題だけど、昴を金星みたいな表現しているのは天文ファンとして許しがたかったです…
 なので、なんか、やっぱり咲ちゃんって作品に恵まれていないんだなあ、それじゃ辞めるに辞められないじゃん…とかつい心配して終わってしまったのでした。しょぼぼぼん。

 例によって大劇場新公は観られましたので、以下簡単な感想を。
 主役はかせきょー。『夢介』新公のあーさ役でも華があるわー、いい若手キタわー、という印象でしたが、今回も歌もしっかりしていて真ん中力がバーンとあって、堂々としたものでした。このまま上手く育ててほしいものです。ただし、マイ初日が東京新公になってしまい、かつ下級生の見分けが全然つかない後輩は誰が主役か全然わからなかったと言っていました。確かに大きなナンバーが削られていたりしましたし、私が感じた真ん中力はまあまあいい席で観たし顔や声で識別できるから、というせいもあったのかもしれません、すみません…
 ヒロインはねいろん、メロディちゃん。いじらしく、歌がまた素晴らしく、手堅いヒロインっぷりでした。
 春児は一禾くん。毎度言っている気がしますがとにかく上手い。でもぶっちゃけスター扱いされる人だとは私には思えないのですが、2番手までやらせちゃってどーする気なの?という気がむしろしてしまいました、すみません。
 順桂(和希そら)は紀城くん、これまた毎度上手いなと思っているような気が…今回も、ちょっと地味に感じましたが綺麗で上手くていいなと思いました。まあいいお役だというのはあるかもしれません。
 光緒帝(縣千)は聖海くん。本公演の蘭琴も雰囲気あって素敵ですが、こちらも若くて綺麗な皇帝っぷりで、頼りなさげな塩梅もちょうどよく感じて好印象でした。
 王逸(一禾あお)の蒼波くんも手堅く上手かったです。黒牡丹(眞ノ宮るい)の壮海くんも綺麗でした。そして新公蘭琴の水月くんも美形で震えました…!
 ミセス・チャン(夢白あや)は愛陽ちゃん、美人系でしたねー。譚嗣同の霧乃くんもいじらしくて泣かせてくれました。玲玲とのやりとりが新公バージョンになっていたのも良き、でした。
 専科祭りでは白太太の愛羽ちゃんが娘役ちゃんには難しいだろう老けを上手くこなしていて好感持ちました。はっちさんとこの真友月くんもちゃんとしたてなー。カチャのところのさんちゃんはナンバーカットが残念でしたね。しかし圧巻は次期トップ娘役の夢白ちゃんによる西太后でしたね、すんばらしかったです! これからも単なるお姫様役者ではないヒロイン像を築いていっていただきたいです。好き!
 あとはまなはるのところの月瀬くん、上手くて舌を巻きました! あすくんのところの苑利くんもまだ研1さんなのにあの上手さ的確さ華、どーいうことなの最近の若手はなんなのすごいな天才なの!?
 娘役陣は、あとはねいろんのところの華純ちゃんが可愛かったけれど、これだけでは…という感じでしたね。りなくるもぶーけも、うーん…とにかく出番として芝居としてやりようがなくて、残念でした。

 これがひらめちゃんの退団公演となりましたが、就任が遅かったせいもあるのかハナから3作のみと決めていた、という潔さよ良し、という印象でした。ひらめらしいというのかな、娘役の方がホント男前(性差別かな?)でもののふですよねえ(笑)。役柄もヒロインとして幅があり、よかったと思います。なんか妙な組替えだったし、決して順当に育てられていたわけではなく若干の棚ボタ感もあったわけですが、やはり前回ショーの仕上がりっぷりとかを見るとホント男役も娘役も学年や立場で磨かれるんだな、と格別ファンでない私ですら感心したので、このまま咲き誇り無事に良き大千秋楽を迎えることをお祈りしています。大劇場サヨナラショーはタカラヅカニュース映像やレポツイートでしか知りませんが、大階段に娘役全員を出して始めたと聞いてホント胸アツでした。娘役を従えてバリバリ踊るトップ娘役、という構図は全トップ娘役が何度でもやってくれていいヤツですね!!!
 そしてお相手が変わると咲ちゃんもまた変わって見えて良きでしょうが、しかし演目に恵まれて上手くあーさへのバトンタッチをするといいと思うよ…とは思ってしまうのでした。ここまで育てた御曹司にちゃんと花を持たせてくださいよね劇団…
 というわけで今年の宝塚観劇納めはやや早めになりました。今夜のスペースでいろいろ語って締めくくりたいです。
 来年もどうかチケットに恵まれますように…(笑)






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作品運ということ (とおやま)
2022-12-18 00:19:00
お邪魔します。
咲ちゃんは本当に主演作に恵まれないなあと、しみじみ思います。
何しろ、バウ初主演(W主演)が鈴木圭の「灼熱の彼方」ですからねえ…。ホントにひどい作品でした。
単独主演は野口幸作「パルムの僧院」。同じ組で5年前に同じ原作の「情熱のバルセロナ」を演ったばかりだったのに、柴田先生への挑戦のつもりだったんですかね。ま、挑戦にあえなく敗れた凡作でしたが。
咲ちゃんには退団までに、見ごたえある良作にめぐり会ってほしいと心から願っています。

えーと、新公でまなはるの袁世凱を演じた月瀬君は研4です。腹に一物ある感じを上手く表現していました。
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ご指摘ありがとうございました! (とおやまさんへ)
2022-12-18 11:13:40
こちらではごぶさたです、またお会いしてもろもろたかれるのを楽しみにしています!
そして間違いのご指摘、ありがとうございました。そっと修正させていただきました、大変失礼いたしました…
咲ちゃんについてはファンの方こそやきもきしているのでは、と察せられます。
個人的にはハリーのスーツものとかの方が似合うタイプなのでは、と思っています…『はじ愛』の役とか、好きだったんですよねえ。
ああいう芝居ができるスターさんだと思うので、真ん中になっても演技しがいのあるお役に恵まれるとより輝くのではないかしらん、と…
でもそらが来て、ひらめちゃんが去り、変わっていくだろうけどまた素敵になるに違いない雪組さんから目が離せません!
あとはドンピシャ好みの下級生を作りたい…(笑)ご指南ください!

●駒子●
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追記 (とおやまさんへ)
2022-12-18 11:16:00
「たかれる」って何! たかりはしません、割り勘ですなんならたくさん飲むので多く払います「語れる」です!!

●駒子●
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覚えておいでですか (はなこ)
2022-12-18 21:57:30
いやもう、お忘れかもしれません。数年ぶりでございます。前みたいに行けないんですよ、人混みが怖くて。それで時々こっそりお邪魔して、観たつもりごっこをしておりました。本当にありがとうございます。でもなぜか雪だけは何回か観ていて、今度もヒラメの退団なので絶対!とばかりに出かけました。ほんと二幕目は、はあ?という感想ばかり。仮にもトップ娘の退団公演なのに、ヒラメの存在意義まで不明。全体を通して頭に残ったのは、主要3人が、切っちゃったんだよ!と連呼していたこと。原田先生、よっぽど痛かったんですね。
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久々のコメントありがとうございます! (はなこさんへ)
2022-12-24 10:27:20
「切っちゃった」連呼、失笑ものでしたね…何度も言わなくてもわかるがな、
なんならカットしてもなんら問題ない説明だったがな…
とすごーく思いましたが、男性にとってはすごーくアイデンティティにかかわる大問題なんでしょうね。
知らんがな…(^^;)
ひらめちゃんはサヨナラショーが素敵だったようなので、
作品が残念なのはアレですが、トップ娘役の単独退団もいいな、と改めて思っています。
明日の大楽まで、無事の感想をお祈りしています。
また覗きにいらしてくださいねー、年明け遠征は『うたかた』『夢現』です!

●駒子●
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Unknown (すみれ)
2023-01-03 12:03:59
時々お邪魔しています。
蒼穹は楽曲が良かったので一部リニューアル数年後かせきょーでとか、外部でチュンル主人公でとか勝手に考えていましたが、残念な事になりました。
劇団はあーさに繋げる気はあるのでしょうか?
咲ちゃんからそらくんになりそうな気もします。
本の書評も購買の参考にしています。
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再演… (すみれさんへ)
2023-01-08 20:50:27
コメントありがとうございました。
そうですね、ブラッシュアップしたり形を変えての再演、というのは
難しくなってしまったかもしれませんね…
私はあーされいこの組替ええはあーさのためのものだったのではないかと思っていて、
まあ結果的にはれいこちゃんの方がさっさとトップに就任しているのですが、
どこかでちゃんと咲ちゃんからバトンタッチされるだろうと踏んでいます。
あーさそらのお芝居、もっといろいろ観てみたいなーと思っています。

読書はだいぶペースが落ちましたが、常にハードカバーと文庫と、今は電子の三冊を並行して読んでいます。
またちょいちょい語っていきたいです!
2023年もよろしくお願いいたします。

●駒子●
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