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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

ふらり、ひっそり、ひとり。旅 その18/和歌山県

2025年03月30日 | 日記
 アドベンチャーワールドがメインのツアーにひとり参加して、南紀白浜を訪れてきました。いつものツアーと違って家族連れ参加が多くて驚きました。家族で行くなら個人手配でレンタカーとか借りた方がいいのでは…とか思ったので。まあ、旅の方法はいろいろですね。私も四半世紀ほど前に、それことホテル川久とアドベンチャーワールド、というベタなデート旅行を個人手配でしたものです…(笑)

 というわけで、そんなに早くない時間に羽田空港第一ターミナル集合。ただし使用機材到着遅れで、飛行機は20分ほど押して出発しました。
 南紀白浜空港までは伊丹以上にすぐで、上がったと思ったらもう下がる、みたいな感じでした。ほぼ寝ていた気がします。
 着いたら天気予報どおりの横殴りの雨で、空港出口から観光バス乗り場までの道には一応屋根がありましたが、まったく役に立たずずぶ濡れになって乗車…15分ほどですぐに千畳敷に到着。一応記念撮影でも…と降り立ちましたが、折りたたみ傘がおちょこになって吹っ飛び、構えたスマホも飛んで転がる雨風で、早々に退散。
 次は梅干館なる工場に寄りましたが、週末で人のいないところの工場見学で残念…お土産物コーナーで梅のふりかけなど購入。
 夕方早めに、紀州みなべ千里浜温泉のリゾートホテルに入りました。中は広くてそれなりに豪華でよかったんですけれど、外装にまったくお金をかけていない建物で、病院とも思えないただの白いビルだったのには鼻白みました…
 サブベッドでもない完璧なトリプルルームのシングルユースでした、ありがたや。
 早速地下の大浴場へ。湯上がりスペースが広々とある、とてもゴージャスなお風呂でした。露天風呂も、岩風呂ふうだの檜ふうだのいろいろあっていい感じ。パラパラ落ちる雨を浴びながら、ゆっくり浸からせていただきました。
 夕食はバイキング。まあまあでしたが、ダイエット中だったためあっさりめに…食休みのあと再度大浴場に行って、ゆっくり髪と身体を洗って、お部屋でゴロゴロして就寝。
 お風呂の男女入れ替えはなかったので、朝風呂はパスしてギリギリまで寝て、7時起床。バイキングの朝食をこれまた簡単に済ませて、8時出発。嵐は去って、晴天でした。
 まずは三段壁へ。晴れて海の青さが素晴らしく、しかし風はまだ強くて吹っ飛ばされそうなスリルがある中を崖先までお散歩しました。足湯は工事中でお休みでした。
 その後は白良浜へ。ホントに真っ白な美しい砂浜で、ここでもお散歩を堪能できました。
 そして観光バスはアドベンチャーワールドへ。配られた入場券に描かれた動物イラストは、私の分は馬でニヤリとしました。いやパンダとかイルカとかがスターなんだろうけど、ね!
 2時間半の自由行動だったので、まずはまっすぐパンダラブへ。パンダは朝のうちが活動が旺盛だと聞いていたので…で、いました二頭とももぐもぐタイムでした! 何故白黒だというだけでただの熊なのに可愛いんだパンダ、悔しいよ…! 芋洗いのお客に飲まれながらもなんとかスマホでパンダを劇写して、満足。
 その後はホースキャンプで馬を眺め、ふれあい広場だのふれあいの里だのはどうも工事中のようだったので、海獣館とおみやげ屋さんを覗いてから、開演時間を調べておいたビッグオーシャンのイルカショーへ行きました。
 でもなんか、イルカのコンディションがあまり良くなかったのか、はたまた毎度こんなもんなのか、ショーとしてはかなり盛り上がりに欠けた気がしました…飼育員さんたちのアクションはすべてイルカたちへの指示になってしまうんでしょうから、それとは関係ない司会キャラみたいな人を立てて、もっと客席に今何をやっているのか、それの何がすごいのか、これからどんなものが観られるのかなどを解説してショーアップしないと、観客はけっこうポカーンとしちゃうんですけど…というのが、ステージワークにうるさい私の意見です(笑)。
 その後は、サファリワールドを一周できる遊歩道のウォーキングサファリへ。30年ほど昔、ケニアのマサイマラ国立公園に行ったことがあって、そのときもう一生分のシマウマとヌーを見た、と思ったものでしたが、またシマウマだのキリンだのサイだのを見られると、それはそれでテンションが上がるのでした。けっこう起伏があって、一時間弱のコースでしたが良き運動になりました。
 プレイゾーンの観覧車やジェットコースターは強風のために運転中止でしたが、エンジョイドーム内の屋内コースターはやっていたので貸しきりで乗車。ちまちま動いてなかなかスリリングで、楽しゅうございました。50すぎてもジェットコースターが好きだし乗れるんですよ…!
 帰り際に再度パンダラブを覗いたら、もうお昼寝タイムでした。お客もまばらになっていました。でも丸まって寝転んでる姿も可愛くて、けっこうじっくり眺めてしまいました…
 集合時間にバスに戻って、空港まではすぐでした。昼過ぎの便で帰京して、16時には帰宅した、お手軽な旅でした。見どころが空港からそう離れていない印象だったので、個人でタクシー観光でも回れそうでしたね。梅、桃、蜜柑押しなのがなかなかよかったです。素敵な県だな、と思いました。また何かしらで行きたいです。


〈旅のお小遣い帖〉
ツアー代金 62,900円
ヒレカツ卵サンド 579円
お土産の梅ふりかけ2種 1,090円
アドベンチャーワールドのお土産(パンダ柄のメガネクロス、ステッカー、限定ハッピーターン、あられ、ビール、和歌ももジュースなど) 5,470円
屋内コースター 500円









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宝塚歌劇花組『儚き星の照らす海の果てに』

2025年03月27日 | 観劇記/タイトルは行
 宝塚バウホール、2025年3月26日11時半、15時。

 20世紀初頭、イギリス。北大西洋を舞台に、豪華客船による旅客輸送の覇権をめぐる熾烈な競争が繰り広げられていた。「世界で一番大きな船を造り、人と人をつなぐ架け橋になりたい」という夢を少年のころから思い描いていたトーマス・アンドリューズ(希波らいと)は、一流の造船会社ハーランド・アンド・ウルフへ入社する。同期のジョージ(美空真瑠)、モーリス(愛乃一真)、そしてのちの師範となるアレクサンダー(峰果とわ)をはじめとする仲間との絆を深めながら、設計士への道を着実に歩むが…
 作・演出/中村真央、作曲・編曲/太田健、斉藤恒芳。豪華客船タイタニック号の造船に携わった設計士を主人公にしたミュージカル・ロマン。希波らいと初主演作、中村真央デビュー作。全2幕。

 中村真央先生は中村暁先生のお嬢さんだそうで、この「さとる」を「あきら」と呼んで中村A先生、中村一徳先生を中村B先生と呼ぶ風習(?)が劇団内外にあるので、そこからドーターのDで真央先生のことは中村D先生とファンの一部が呼んでいるようなのですが、さすがに生徒はそう呼んでいないのではないかと思われます。
 それはともかく、先日の『にぎたつ~』の平松先生に続き、女性演出家が続々デビューしていて、めでたい限りです。当初はチケットの売れ行きがかんばしくないと聞いていて、「まあらいとはともかく他にスターと呼べるほどの人材がいない、あまりに若い座組だもんな…」などと案じていたのですが(失礼!)、一応公式には「完売御礼」と出ていたので、たとえ中でダブついているのだとしても、とりあえずなんとかなりそうということなのでしょうか。なかなかいい公演だったので、その好評が届いて尻上がりに売れるといいよね、と思いました。私が観た回はちゃんと客席が埋まっていましたし、興味ある方に観てもらえているといいな、と思っています。
 私はマチソワのダブル観劇をしましたが、まったく苦になりませんでした。ストレスのない舞台で、単純に複数回観ても楽しかったです。というか、やや優等生的ではあるかもしれないけれど、とてもよく出来たミュージカル作品になっていたと思いました。
 ナウオンでも語られていましたが、なんせ曲数が多いです。多すぎて印象的なものがあまりなかった…とも言えるかと思いますが、旧来の宝塚歌劇にありがちな歌入り芝居っぽいところが全然なくて、ああ新世代の作劇だなあ、と感心したのです。私もあまり歌ばかりだとストーリーを進めてくれ、と思ってしまうタイプなのですが、今回はそういうことは全然感じなくて、芝居が少ないとか薄いとかも思いませんでした。まあわりとシンプルなストーリーで、キャラクターもどちらかといえば類型的だから、というのはあるかと思いますが、簡にして要を得てストーリーがさくさく展開するので、全体としてちょうどよく感じられたんだと思います。
 架空の人物ですが、トーマスやジョージに比べるとやや能力が落ちるらしいモーリスが闇落ちしていくとか、トーマスの助手?アシスタント?(女性社員がちゃんといる会社ですが、当時の女性はまだ補助的な業務しかさせてもらえていなかった模様)のエミリー(七彩はづき)がトーマスに恋しつつもヘレン(二葉ゆゆ)の存在に告白できず、失恋するけれど仕事は続ける展開だとか、あまりない要素にも思えたので、そういう点も好ましかったです。
 エミリーはルーシー(初音夢。丸メガネがソーキュート!)とオリヴィア(真澄ゆかり。このところ強い役が続いていたのに、今回はぐっと宝塚の娘役らしいお役で、これも新鮮でした)とで常に3人娘みたいな感じで出てくるのですが(女性社員のナンバーも可愛くてよかった! 本役はトーマス母だけどここで社員バイトもやる糸ちゃんがやっぱり可愛くて、娘役もキャリアだな、と思います)、ピンク、イエロー、ブルーで衣装を変えても(上着を着ても)そのメンカラ(笑)を貫いていて、わかりやすくて良きでした。かつ、台詞で名前を呼び合うので誰が誰だかわかりやすい! 『にぎたつ~』に欠けていた点です。男性社員チームでも同様で、みんなキャラもそれなりに立っていましたし、とてもよかったです。海叶くんとか、もうお髭が似合う学年になったの!?と刮目しちゃいましたよ…
 ところでルーシーとモーリスのデートは結局上手くいかなかったのかしらん…ここが宙ぶらりんなのはちょっともったいない気がしました。ラストに、オリヴィアと抱き合うジョージ、なんてのがあってもよかっただろうし…
 あとは装置のセンスがとても良くて(装置/國包洋子)、アンサンブルというかコロスというか…を使うナンバーのセンスも良くて、そういうところがすごくザッツ・ミュージカル!でした。一幕がやや長く、二幕はあっさりしていてフィナーレの尺たっぷりなんだけれど、これは題材的には仕方なかったかなと思うし、若い座組でカッコいい黒燕尾がバリバリ踊れたり主演スターを囲んで華やかに舞えたりするのは下級生には嬉しいだろうし、いい経験だろうから良き、と思いました。誰がどの役の生徒だったか、ひとりひとりの顔が見えるパレードも秀逸だったと思います。
 プログラムでは学年順でしたが、イズメイ(夏希真斗)の夏希くんががっつり2番手ポジで出てきたのもとても良きでした。でも群舞ではちゃんと愛乃くん、真瑠くんピックアップもあったしね…愛乃くんなんて本公演の何かの歌ですごく早くにピックアップされた記憶がありますが、あとは全然なので、今回の活躍は嬉しかったです。あとは鏡くんやみくるんにもポテンシャルがあると思うので、もうちょっとしどころがあると嬉しかったかもしれません。これからの本公演にぜひ期待したいです。真瑠くんはいつでもなんでも本当に上手くて、今回も歌はダンチでピカイチだったと思います。ゆゆちゃんが怪しい以外はみんなまずまず歌えていましたが、本当に声色が良くて歌声に艶があり、聞かせたのは断然ジョージでした。
 プログラムでは「処女航海」となっていてがっかりしましたが、舞台の台詞では「初めての航海」となっていて、いいぞいいぞと思いました。そういうアップデート(若い世代にはあたりまえのことなのかもしれませんが)があり、おそらく出演者全員に台詞があってちゃんとした役があって、おそらく半分くらいはソロを歌えているのも良き配慮だと思いました。てらいのない、まっすぐな、バウ作品として過不足ないものに仕上がっていたと思います。早くも次回作が楽しみですD先生! 産休明けの女性演出家も何人か戻ってくるようですし、未来に期待しかありません。

 さて、らいと、初主演おめでとう! 良き作品に恵まれて嬉しいです。真面目な好青年の役を素直にまっすぐひたむきにやっていて、とてもよかったです。こういうお役をてらいなく気取りなくやるのって意外に難しいと思いますが、ちゃんとしていました。何より明るいオーラを放つ真ん中力があって、スターの資格を見せつけられていてとてもよかったと思いました。『花男』大抜擢くらいから私は顔とスタイルが好きでずっと注目してきましたし、お茶飲み会時代に何度か行きましたが、当人は性格的にわりとネガティブというか、自己肯定感が低いタイプのように見えて、もったいないな…と歯がゆかったりもしたのです。前回の本公演の扱いとか、ホントひどかったしさ…でもここにかりんさんが来て3番手というかダブル2番手の下席みたいになるとして、その下の4番手スターはもうらいとなんですよ。そう振りきっていかないと劇団! いやハナコやだいやを大事にするのは大事だよ、でも番手ってそういうことじゃないから…頼むよ!
 歌はやや力任せで、まだまだ改良の余地はあると思いましたが、まあこういうのも場数かな。あとは、スターとしては長身すぎるので、ウドの大木っぽく見えないようもう少し絞って、シャープでカッコいいスーツ姿を見せられるようになると、良き花男として育っていくと思います。がんばれー、応援してるぞー! 好き!!
 新公ヒロインもやっていないのに初バウヒロインのゆゆちゃんは、ぶっちゃけ組替えの餞なんだろうし、そりゃ103期の娘役が今の宙組に行かされるんだからそれくらいしてもらわないとね、ってのはありますが、まずまずそつがなかったです。歌はやや怪しかったけど場数を踏んでいないんで仕方ないと思うし、そもそもダンスの人ですよね? デュエダンのリフトのあとの脚技、素晴らしかったです!(もちろんリフトともども、らいとの体格あってのものだと思うけれど)プロローグの、以前ねねちゃんやわかばが着ていた記憶のあるドレスといい、どのお衣装もお似合いでした。ただ喉でも傷めているのか、花粉症か? マチソワともわりと肝心の場面で変な咳払いをすることがあって、病弱演技か? そんな設定だったか?? とか思ってしまいました。新公の一回ではない、大きなお役を長丁場続けることは大変なことですよね…がんばっていただきたいです。
 こういう事情がなければヒロインははづきちゃんだったんだろうけど、似た系統のお顔で要するに真ん中感がないというか…ではあるし、バウヒロインを二度させるほどでは…ってのもあったんだろうな、と邪推しています。なら初音夢ヒロインの方がメロかったろう、とは思いますけれどね…
 夏希くんはここ数回の新公で本当に目を惹く存在になっていたので、大きなお役が回ってきてくれて嬉しいです。しかもすごくよかった! フィナーレも素晴らしかった! これは組ファンでも新公までは観ない、みたいなそうにも存在感を知らしめたのではないかと思います。
 ゆかちゃんは任せて安心、涼葉まれくんもいつでも手堅い、休演開けのみょんちゃんがバリバリ歌って踊って大活躍で嬉しい! 客室乗務員役だった稀奈ゆいちゃん、花売りの少女役だった常和紅葉ちゃん、カゲソロも務めた幼少期のヘレン役の花海凜ちゃん、新聞売りの少年に扮した翠笙芹南ちゃん、みんな爪痕を残したと思います。ゆかりんやゆうゆはタイタニックの乗客の子供役もやっていて、これもラブリーでした。
 幼少期のトーマス役の希蘭るねくんも、何かの新公でバタ臭い美貌が目立って印象的だったんですよね…子役も上手い! ウィリアムの風美はる帆もおいしいお役でしたよね、ちゃんとしていました。
 もちろん専科のおふたりの支えも素晴らしく…カテコはらいとのややナゾの挨拶なんですが、みんなニコニコして聞いていて、ナウオンもわちゃわちゃ元気だったし、楽しく和気藹々と公演できているのかな、と窺えました。良き経験になりますよう、そして次の本公演に生かしていけるよう、願っています。
 あ、最後に…デュエダンのお衣装はそれこそ青とかがよかったと思うよ…少なくとも前の場面との差別化のために、色を付けるべきでした。白黒じゃつまんないって…! そこだけはしょんぼりしました。





 
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朗読劇『忠臣蔵』

2025年03月23日 | 観劇記/タイトルた行
 よみうり大手町ホール、2025年3月22日12時。

 オリジナル脚本/柴田侑宏、上演台本・演出/荻田浩一、音楽/吉田優子、編曲/長野ユースケ、美術/角田知穂。1992年に旧宝塚大劇場の最終公演として雪組で上演された作品を、33年ぶりに朗読劇として当時のメンバープラスアルファで再演。全1幕。

 私の雪組はトンちゃんこと紫ともさんの退団公演からなので、かりんちょさん、旧大劇場、『忠臣蔵』に間に合っていません。スカステで以前見たことはあるかと思いますが、あまり記憶なし。主題歌と有名なラストの台詞くらいしか知りませんが、今歌舞伎座で通しで上演中の『仮名手本忠臣蔵』を観ていることもあり(まだ夜の部しか観ていなくて、来週昼の部を観るのですが…)、お友達に誘われたのを幸いに出かけてきました。
 開演前ギリギリの会場着となってしまい、プログラムを終演後に買うことになったため、誰が出ているんだっけ…状態で観ましたが、はやせ翔馬以外は全員わかって(彩海早矢かな、とか思ってた…)懐かしすぎてエモエモのエモで、泣くわ笑うわ大変な観劇となってしまいました。イヤでもホントよくできていたと思うのマジで!
 ミュージシャンは優子先生始め4名とシンプル、演者は全員着物っぽいデザインの金の模様の入った黒のパンツスーツ。セットは斜めに高い台というかステージがあるだけ、ときどき襖や板壁に見えるスクリーンが降りて、当時の舞台写真や歌舞伎題材の浮世絵、江戸の古地図なんかが映し出されます。演者は台本を手にしたり、見台に置いて腰掛けて語ったりしますが、移動も出ハケも多いし、何より歌があり、朗読劇というよりはダンスがないだけのコンサート・バージョンのような見応えがありました。でもフルメンバーじゃないし主要場面だけやっていることもあって、休憩なし100分の舞台に仕上がっていましたが、ちょうどいい塩梅かと思いました。
 というわけで本役同様に大石内蔵助(杜けあき)はかりんちょさん、気合いが違いますよね…! 凜々しい、大きい、素晴らしい。そして阿久里とお蘭(紫とも)の二役のトンちゃん、これまた本役ですが変わらず美しい、色っぽい…確かOGのライブに私が初めて行ったのはトンちゃんのものだった記憶で、背中がバックリ開いたドレス姿に娘役とは違う年相応の色っぽさを見てめっちゃ感動したのを覚えているのですが、最近は歌はやっていないのか、ちょっと弱かったかな? それはやや残念でした。
 イチロさんがやっていた浅野内匠頭(香寿たつき)はたぁたん、これまた凜々しい、素晴らしい…! 新公主演だったんですねえ。後半の岡野金右衛門もよかった! 相手役のおきく(渚あき)があきちゃんで、星組トップコンビ!となったし、そもそも雪組時代も組んでたもんね…!と胸アツでした。ここも新公でやっていたお役なんですね。
 さらにお久しぶりの立ともみ、りく(小乙女幸)のりんごちゃん! みちる姐さんの歌! 最下がすっしぃ! 懐かしさに震えるしかありませんでした…当時は雪組にいなかったおっちょんとまだ予科生だったというユミコも上手くで何役もできて頼もしい! もうもう、どこ見ても楽しかったです…!
 そして改めて、歌舞伎と同じような改変やオリジナルのキャラクター、エピソードの立て方など、上手くできた作品だなーと感じ入りました。歌舞伎にもある「由良さんこちら」など、内蔵助が放蕩者の振りをするくだりに上杉方の女スパイを絡めていくとか、浪人となって町人の振りをした志士たちにも恋模様を作って娘役の出番を作るとか、ホント柴田先生ってすごい…!と感心しきりでした。悪役の作り方も本当に上手い。シビれます…!
 でもこれも討ち入り後の引き上げで終わるんですね…バレエの「ザ・カブキ」は全員の切腹までやって終わるのにな。志士たちは吉良の首を取って主君の仇討ちをしたあとは、すぐにも追い腹を切るつもりだったのでしょうが、一応は幕府の沙汰を待つことにして、お詣りだけしておとなしく引き下がったんですよね。そこから幕府は処置に悩みに悩んで、江戸の町民たちは赤穂贔屓だしそもそも喧嘩両成敗のところを片手落ちの判断をした引け目があるしで揉めに揉めて引っ張って、結局は解放でもなく打ち首でもなく切腹を許したわけです。その時点では内匠頭の弟によるお家再興は許可が出ていなくて、志士たちはそりゃそれぞれは思うところもいろいろあったでしょうが、まあある種納得して殉死していったのでしょう。この時代の生死観を今の尺度では測れないし、それはそれとしてやはりあまりに特殊で野蛮だろうとも思うのですが、これは復讐とか仇討ちとかだけで捉えるとちょっと違うのではないか、とも私は思ったりするのでした。内匠頭には即日切腹を申しつけておいて吉良にはなんのお咎めもなし、そもそも何故殿中での刃傷沙汰となったのかの取り調べもなし、では幕府の判断がおかしい、と糾弾されるのは当然のことで、でもそれがまったく覆らなかったので、抗議としてのデモンストレーション…みたいな面も強かったのでは、と思うのです。国会の前で焼身自殺をしてみせるような、アレです。もちろん野蛮だし、暴力は他人に振るうのも自分に振るうのも論外なのですが、最後の手段として…というのは、認めてもいいのではないか、と…それで世論が動いた、それでないと世論も動かず幕府も折れなかった(志士の切腹ののちにお家再興の決定がされたので)、というのはあるので…
 なので、どう描くか、という点を上手く扱えれば、現代でも上演される意義はあると思う題材だと思いますけどね…歌舞伎だと「伝統芸能だから」みたいなある種のファンタジーとして捉えられやすいのかもしれませんが、宝塚歌劇でも今一度取り上げてみたらいいのに、と思います。女性キャラクター視点がきちんと入っている点は大きいと思いますしね。
 プログラムやポスターが秀逸で、このビジュアルがきちんと残っていて使用できるのは大きいなと思いました。梅芸のOG企画はいろいろありますが、これは良き企画だったと思います。偉そうですみませんが、これからもいろいろと練っていってほしいものです。










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『マスタークラス』

2025年03月22日 | 観劇記/タイトルま行
 世田谷パブリックシアター、2025年3月20日19時。

 世界中のオペラファンを虜にした、二十世紀最大の歌姫マリア・カラス(望海風斗)。引退後のカラスは、ニューヨークの名門音楽学校ジュリアード音楽院で若きオペラ歌手たちに公開授業を行う。授業では、ユーモアを交えつつ的確だが辛辣な言葉で、芸術に向き合う術を惜しみなく伝えていくカラス。生徒の歌声に、過去の輝かしい舞台や思い出が蘇り…
 作/テレンス・マクナリー、翻訳/黒田絵美子、演出/森新太郎。1995年フィラデルフィア初演、96年日本初演(主演/黒柳徹子)。全2幕。

 当初はだいもんのひとり芝居のようなイメージを持っていたのですが、ちゃんと生徒役その他役者はいました。ストプレですが、歌わないこともなかったです。だいもんはだいぶ以前からオペラ歌手についてイタリア語とオペラ歌唱のお稽古をしていたそうで、それが見事に発揮されていた舞台かと思いました。というか素晴らしい当たり役では!? 向こう20年くらい、何かにつけて再演してもいいのでは!? この作品を、このお役をやるためにこれまでのキャリアがあったのでは!? 戯曲として、舞台として、作品として好み、というのもありますが、もう本当にだいもんが絶品でした。上手い人だと知ってはいたつもりですが、感服しました。どうしてもファンが観に来る舞台になっちゃっていたかもしれませんが(とはいえ私はマクナリーの名前にまず惹かれましたが)、こんな素晴らしい俳優がいることをもっと一般の演劇フアンに知らしめたい!と思いましたよ…当初チケットがあまり売れていないようなことも聞いていたし、「トラムじゃなくて世田パブ? デカすぎでは??」とか私も思っていましたが、なんのなんの尻上がりにチケットが売れたようでよかったです。デカいハコでもマイクなしの生声で普通に演じられるだいもん、強い、強いよ…! セット(美術/伊藤雅子)もホントよかったし、えー松本とか観に行っちゃいたいぐらいです!
 客席を公開授業の観覧者に見立てて、客席が明るいうちからカラスがつかつか出てきて、まず「拍手は要らない、授業なんだから」みたいなことを言う。上手いですよねー、引き込みますよねー。マクナリーは実際にカラスのファンで、ジュリアードでのマスタークラスも聴講したことがあるし、自分でも劇作を教えたことがあって、その難しさやなんやかやがこの作品に結実したそうです。そのアイディアが素晴らしいですよね…!
 名選手必ずしも名監督ならず、みたいなことはどんな分野にも言えて、カラスが決していい教師ではなかろうことは何も知らなくても想像できます。わがまま、とか横暴、というのとはちょっと違うのかもしれないけれど、慇懃無礼で神経質そうでこだわりが強そうで…というクセ強の、老齢にさしかかった中年女性芸術家…みたいなのを演じるだいもんがホントに見事! 膨大な台詞の量、バンバン出るイタリア語、あたりまえだけれどほぼ出ずっぱり、でも移動も多い。俳優としてやること多過ぎ、でもカラスなら自然にやっちゃうわけで、そんなカラスに見えるんですよだいもんが! もうもう、シビれました。
 生徒役は劇団四季女優や実際のオペラ歌手で、これもまたよかったです。ホントこんな生徒いそう、と思える。そして彼らがわかりやすいアドバイスや評価を求めるのに対して、カラスはもっと根源的な精神性みたいなものを語ろうとする。そして誘われる回想、本物のカラスのアリアの録音が流れて…この演出がいい。そして現役男役ばりの声でオナシスもカラスの最初の夫バッティスタ・メネギーニも演じちゃうだいもんがまたたまらん。上手いんだコレがまた…!
 伴奏者マニー(谷本喜基。音楽監督も)が退場したあとの、カラスの語りが真のテーマ、メッセージかなと思いました。もちろん彼女はオペラ、歌、芸術について語っているのだけれど、すべての物事に通じることのように思えたので。
「この世から『椿姫』がなくなっても、お日様はちゃんと昇ります。オペラ歌手なんかいなくても、世界はまわっていきます。でも、わたしたちがいると、その世界が少し、豊かに、そして賢くなるんじゃないかって。芸術なんか全くない世界に比べて。歳を取るにつれて、わからないことが多くなってきます。でも、これだけははっきりしてきました。わたしたちがしていることは、とても大事なことだって」
「肝心なのは、あなたが学んだことを、どう生かすかっていうことです。言葉をどう表現するか、どうしたらはっきり伝わるか、自分の中にある魂をどう震わせるか。どうか正しく、そして素直な気持ちで歌を歌ってください」
 私たちは歌手じゃないし芸術家ではないかもしれない、でも日々の営みを生きている。すべてのことにこの精神は必要なんだと思うのです。より良い世界のために。世界は、人の世は、愛するに足るものだから…毀誉褒貶のあったカラスは決して幸せな人ではなかった、という見方もできるのかもしれないけれど、こういう考え方をして、それを若い人に教えようとしていたということは(というかカラスをそう描いたマクナリーは、かもしれませんが)、彼女は確かに愛情にあふれた幸福な、そして間違いなく偉大な人間だったということなのではないか…と思ったり、しました。そこに、ものすごく感動しました。大事なことを教えられた、良き公開授業でした。
 実際に歌う生徒役さんたちも大変な労力だろうと思うと、ソプラノふたりにテナー、道具係にまでカバーがいるのは素晴らしいな、と思いました。プロンプターも配されていて、万全ですね。ものすごくシンプルなようで無限に深い、良き演劇に触れました。大満足でした!!!








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『やなぎにツバメは』

2025年03月21日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 紀伊國屋ホール、2025年3月19日18時。

 美栄子(大竹しのぶ)、洋輝(段田安則)、佑美(木野花)の3人は、20年ほど前、美栄子の母ツバメが経営する「カラオケスナックつばめ」で知り合った。若いころは家具メーカーの正社員として働いていた美栄子だが、夜は母親の店を手伝うため、日中の仕事をパートにするしかなかった。そんな美栄子にとって、店の常連で歳が近い洋輝と佑美はかけがえのない友人であり、3人にとって店は特別な場所だった。ツバメの葬儀の夜、洋輝の息子・修斗(林遣都)、美栄子の娘・花恋(松岡茉優)も集い…
 作/横山拓也、演出/寺十吾。全1幕。

 キャストは他に、美栄子の別れた夫で花恋の父親の賢吾/浅野和之。こんな6人の男女の、みっともない人たちのみっともなさをてらいなく表現した、おかしくてせつなくて泣けてくる100分のお芝居でした。
 実は加藤拓也と混同してチケットを取ったのですが(笑)、まあこのキャストなら行きますよね…さすがの演技でした。
 大竹しのぶは、私は大女優役みたいなのをやられると鼻白んじゃうんですけど、こういうどこか少女性を残したような、わりと普通のおばさん、みたいな役だと本当にチャーミングだしナチュラルだしで、安心して観ていられました。松岡茉優はテレビドラマではよく見てきましたが、舞台では初めて観たかな? でも舞台もいいんですね、すごくよかったです。あとはみんな手練れのメンツで、安心感しかなかったです。林遣都のポンコツキャラもホント今どきの青年っぽい…!
 私は大人組の年にはまだ5年ほど年季が足りないかなと思うのですが、いずれにせよシルバーでないシニアなんて全然枯れてないし老け込んでないし達観もできてなくて…ってのがすごくわかるし、愛おしかったです。私は観ていて、本当になんとなく、洋輝は佑美が好きなのでは…と感じたので、そう展開する後半はホントおかしいやら悲しいやらでした。声出して笑ったし、隣と前の席がたまたま空いていたこともあって、舞台の美栄子に向かってつっこむように「それはナイ」みたいに手を振っちゃいましたもんね…! 
 梅に鶯、柳に燕。絵になるもの、似合いのものの喩えですが、むしろ破れ鍋に綴じ蓋というか、禍福はあざなえる縄のごとしというか…母親を見送り、娘を嫁に出し、しかし恋には破れたヒロイン、というお話になりますが、別れた夫に抱いていた長年のわだかまりは解けたかもしれないので、やっと普通の友達程度にはなれるのかもしれないし、親友ふたりが夫婦になっても友情は変わらないだろうから、まだまだこの先も楽しいし、あるいはいろいろあって大変だったりもするかもしれないけど、それが人生だよ、というようなあたたかさがある、優しい舞台になっていたかなと思いました。
 しかしホント浅野和之と段田安則の舞台に外れはないよ…! 楽しく観ました。







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