駒子の備忘録

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宝塚歌劇星組『眩耀の谷/Ray』

2020年08月27日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚大劇場、2020年2月7日15時(初日)、2月25日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、8月26日13時半(Bパターン)。

 先年の昔。諸国を追われた流浪の民・汶族は美しく豊かな地・亜里に小国・汶を築く。だが紀元前八百年頃、周王朝の宣王(華形ひかる)は当時の汶族の王・麻蘭と交戦し、汶を攻略。亜里は周の統治下に置かれるが、汶族の神・瑠璃瑠の聖地である秘境・眩耀の谷には、密かに抵抗を続ける者たちが身を潜めていた。そこへ、周の都から遣わされたひとりの若者・丹礼真(礼真琴)がやってくる。亜里の砦で指揮を執る勇将・管武将軍(愛月ひかる)は礼真に、谷を見つけ出し、宣王に対し未だ敵意を燃やす者たちを服従させるよう命じるが…
 作・演出・振付/謝珠栄、作曲・編曲/玉麻尚一、小澤時史、振付/平澤智。星組新トップコンビの本公演お披露目作品。

 初日の感想はこちら
 その後、8月上旬のお取り次ぎも確定していたのですが中止になってしまい、東京での観劇は友会SS4列目どセンターの1回のみとなってしまいました。半年ぶりに東京宝塚劇場の客席に足を踏み入れたときには、さすがに来るものがありましたね…! そしてオケがおらず、客席の私語も少ないので、ロビーの五分前スミレがくっきり聞こえてきて新鮮でした。ただでさえ視界がいいのに席が市松模様なのでそりゃもう快適でオペラグラスいらず、久々に入れたコンタクトレンズのピントもバッチリで、役者の顔がよく見える観劇となりました。
 しかし集中して観ただけに、脚本の粗をより感じてしまったかな…なんか、「この台詞に対してこの台詞で受けるの、脈絡が捻れてておかしくない?」とか、「ここはこういうことを言いたいんだよね、ならこの言い回しだとわかりにくくない?」みたいなことがけっこう、多々、ありました。贔屓公演ならル・サンクを真っ赤にして語るヤツです。全体としてとてもいいことをやろうとしているとてもいいお話、作品だと思っているだけに、いちいち引っかかって残念でした。
 東京では下級生が2チームに分かれての出演になっているので、確かにモブが減っている印象はありましたが、寂しいとかスカスカだとかって感じはそれほどなかったかと思います。
 初見では個人的には、まこっちゃんはそもそも見るからに正統な王子で王なんだから貴種流離譚は無理があるのでは…という印象が強かったのですが、東京公演ではいい感じに力みが減って、キラキラした純朴な田舎の小僧感を出してきていて、素直に物語と礼真像に入っていけました。多分管武将軍はこの程度の若者にならあちこちに声をかけていて、子飼いをたくさん持っているんだろうな、その中のひとりにすぎないんだろうな、という感じがより強く出ていた気がしました。けれどみっきーまいけるに仕えられるお坊ちゃんでもある、みたいなバランスがちょうどよかった。なので、母親が実は汶族の王の末裔で…とかはたまたまで、ぶっちゃけどうでもよくて、むしろ戦乱の中で開花した礼真自身の勇気とか思慮とかリーターシップとかの方が大きくて大事で大切で、汶族も彼が新しい王だからというよりは彼が親身になって一緒に戦ってくれた若者だから、彼の言うことに従って彼とともにこの地を捨てて逃げる決心をした、というふうに見えて、とても自然でよかったです。結局血筋かい、みたいな感じが薄れて見えたので。武闘派のクリチェ(天華えま)やイムイ(極美慎)が私が以前観たときは最後までやや不服そうな顔をしているように見えて不安だったのが、今回は最後の最後には納得して、率先して動いているように見えたので、それも感動しました。
 管武将軍の変節とかはやっぱりもうちょっとちゃんと描くべきだったと思うし、瞳花(舞空瞳)と家宝に対しての心情吐露とかもっとあってもよかったとと思うし、ラストに空っぽの谷と偽物の黄金を手にして呆然、みたいな場面も欲しかったと思うので、そういう意味ではやっぱり宝塚歌劇にありがちな、あと一歩二歩のレベルの出来の作品…ということになってしまうのかもしれませんが、それでも私はわりと好きです。生徒の使い方とかは座付きの仕事がちゃんとできているし、描こうとしているテーマ、世界観、スタイルが好きです。今まで演出、振付しかしてこなかった謝先生ですが、脚本もまたトライしてみてほしいなあ。そしてどなたかが言及していましたが、大劇場がなーこたんで東宝が謝先生で梅芸がくーみんでドラマシティーがカッシーという、たまたまなんですが女性作家揃い踏みの時代が来たというのはなかなかにエポック・メイキングなことだろうとは思うのでした。クリエイティビティは本来は性差より個人差、個性の世界ではありますが、より広く大きく羽ばたいていって、がんばっていってほしいと思っています。

 ショー・スターズは作・演出/中村一徳。
 こちらは万年中村B作品でした。
 Bだとすぐわかるプロローグはともかくとして(てかマスク越しでもはっきりわかるくらいいい匂いした! すごい!!)、金星の場面って何がどう金星で何を踊っているの…? イヤ振付やフォーメーションは素敵だったんですけれど…(せおっちにあまり興味がないのでマメちゃんと水乃ゆりちゃんばっか見てましたすみません)その次のみっきーはるこから始まる白いお衣装の場面も何を踊っているのかよくわからず…次がニューヨークでスーツで愛ちゃんがかっけー、ってのはまあわかる(ぴーに興味ないはずなのにあかちゃんよりダンスが素敵に見えたな…何故…そしてくらっちが最高…でも実はかなえちゃんもめっちゃよかった)。そしてみつるから始まる中詰めも、このお衣装の意味とこの場面のコンセプトの意味がわからない…霊鳥って何…? そしてオリンピアはせめて東京では変更できなかったの…? そして最近のBのフィナーレまんまのフィナーレ…ううーむ…
 ただ、まこっちゃんがどの場面も元気に歌い踊っているのがいいし、ひっとんはいつでも可愛いし、愛ちゃんは光っててまこっちゃんとのバランスもいいし、せおっちも仕上がってきて見えるし、新トップコンビのデュエダンの息の合いっぷりや鍛えられた体幹による無重力感、浮遊感、そしてピカピカの幸福感が素晴らしいので、楽しかったです。でも疲れた、目がチカチカした(笑)。拍手筋や手拍子筋はキープできていましたが、ショーを享受するハートの強さの衰えを感じました。鍛え直したい…! 

 あと、そもそも、同じレイならこれはカレーちゃんのネタだよね、だって光と書いてレイと読むのはあっちなんだよ…?と思ってしまうのを止められません。これはまったくまこっちゃんのせいではなくて、明らかに劇団のミスですが、残念です。
 ともあれ、このままなんとか完走して、無事にみつるに卒業していただきたいし、次は本当はなんだっけシラノだっけ? そして本公演ロミジュリまで発表されていたんでしたっけ、なんとか順次上演されることを祈っています。
 くれぐれも健康に気をつけて、がんばっていただきたいです!



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